第3話 初めての仕事

 「新凪光圀君は占い部の一員になりました!皆これから仲良くするように」

 

 夜月の透き通った声が部室中を響かせる。

 そう。今ご紹介して頂いた通り俺は占い部に入部することになった。

 中高と部活経験がなかった俺からしたら、心が躍る出来事。


 しかし新入部員だというのに夜月以外の二人は歓迎ムードが全くない。

 むしろふてくされた態度を取っている。

 

 「なんでこんな取り柄もなさそうな奴を入れたのさ?」

 

 「確かに占い部にはいらないよね……」

 

 「ちょっと、新入部員の俺に言いすぎじゃない!」


 二人とも異常なほど当たりが強い。

 もちろんこの夜月を含めた三人とは前の占いが初対面なので、因縁を生むようなきっかけはないと思う。

 

 「ちょっと光圀君にそんな態度取ったらだめだよ!」

 

 「そうだそうだ」

 

 今度は相槌を打っただけなのに、すごい目で睨まれる。


 これはもう相性問題なのではと考える。

 知っている人も多いと思うが、この世はどれだけ人気者でも全員に好かれることはできない。これと同じ原理で俺がどんなに良いことをしても、こいつら二人に好かれることが不可能かもしれないということ。


 占い結果とは真逆なんですけど……

 

 「私は断固としてこの男の入部を認めません!」

 

 「私も嫌かな……」

 

 二人ともそう言って出ていってしまう。

 いきなり対立関係とはついてない。

 

 「ごめんね。二人ともいつもはあんな人じゃないから。本当にごめん」

 

 夜月は申し訳なさそうに謝る。

 

 「いいよ。そりゃ彼女達にも何か事情があるかもしれないし、占いのこともあったから大丈夫だよ」

 

 こんな美女から謝られたら許すしかないし、そもそもそんなに怒っていない。

 

 「光圀君は優しいね!いい旦那さんになるかもね!」

 

 窓から差し込む光が満面の笑みの彼女を照らす。

 急激な攻撃に、俺はついつい顔を隠してしまった。

 

 「あら、照れてるの?君には可愛いさもあるんだね。」

 

 彼女は髪を耳にかけて俺の耳元で囁く。

 この言動に俺は人生最大の暑さを感じた。

 

 「やめてくれ!」

 

 「そうだね。からかいはこれだけにしといて、次に部活の活動内容教えるね」

 

 彼女の切り替えは早い。

 すぐにきりっとした顔つきに変わり、説明しだす。

 

 「私達占い部は月に2回、一度に30名ほど占っています。これを聞いて少ないと思うかもしれませんが、私達の生命力の問題なのでしかたありません。そして占い券を月の頭に一回ランダムで配布します。これが主な活動です。何か質問ありますか?」

 

 「じゃあ月に三回しか部活はないのに、あれは大丈夫なんですか?」

 

 これが一番気になった。


 俺が知っている部活は少なくとも週に二・三回は活動していた。

 こんなに活動日が少ないし、活動目的が占いだけんて廃部の危機じゃないかと考えてしまう。

 

 「そうですね。確かに活動日が少ないですし、占いだけでは活動できません。が私達は週に一度ボランティア活動をしています。だからこの部活は潰れる心配はない!」

 

 流石の一言。

 占いだけでは成り立たないと考え、ボランティア活動を入れることよって部活を存続させている。

 どうやら俺が心配することはなさそうだ。

 

 「じゃあ二人がいないから光圀に来月の占い券を配布してもらおうかな」

 

 「そうだな。任しとけ」

 

 配布の指定場所の指示を受ける。

 まさかこんな所で配布をしていたなんてと感銘を受けるが、仕事内容はそこに行って配布だけなので簡単。

 

 この日は説明を受けて解散した。

 

 明日人生で始めての部活動だと思い、ウキウキが止まらない。

 


 ☆★☆★

 


 次の日の放課後。

 俺はカバンから占い券が入った籠を出すと、何やら違和感を感じた。

 何者かにずっと見られているような。

 

 配布場所に移動し始めてもその違和感は消えず、流石におかしいと感じた時には……もう遅かった。

 

 俺の後ろには見たことない程の生徒がいて、ようやく状況を把握する。

 

 忘れていた。占い券は全校生徒が狙っているもので、いつも争いが起こっていたことを。


 「やばい!」

 

 急いで学校を走り回る。

 ここで俺対占い券を狙う生徒との鬼ごっこが始まった。

 

 なんとか逃げているが、相手も粘り強く追いかけてくる。

 しかもこういう時に限って、他の皆は息ぴったりで挟み撃ちまでも仕掛けてき、とても厄介。


 やばいやばい。

 学校中を走り回っているせいで色んな学年の人も食いついていき、鬼の数は増え続けるばかり。

 なのに俺の体力は一向に減っていくと最悪の事態。

 

 漫画みたいに誰か助けてくれ!

 心の中で叫んでみたが、現実はそう甘くない。

 

 この後も何とか振りきろうと頑張るも、スタミナ切れ。

 やがて俺は囲い込まれ、突撃。

 

 この状況を一言で表すなら、蟻地獄。

 とにかく俺の体は鬼によってメッタ打ちにされた。

 

 数分後、視界に映ったのは空の籠だけ。

 パンパンに入っていた占い券は一瞬にして無くなり、これと同時に生徒も誰一人いなくなった。

 

 疲労困憊でその場に倒れこんでいると、アホ毛を生やした生徒が近づいてきた。

 

 「ろくに占い券の配布もできない奴を部員にするなんて。もうやめたら」

 

 夢奈さんが煽ってくる。

 何か言い返したい気持ちでいっぱいだったが、彼女の言う通りだったのでここは我慢。

 

 「わざわざ煽りに来ただけですか?」

 

 「そうですが」

 

 見下すように微笑む。


 本当に煽りに来ただけだったらしく少し落胆。

 なぜなら、こういう場面だと煽りはおまけ程度で、てっきりアドバイスや手を差し伸べてくれると勝手に想像していたからだ。

 

 「俺は夢奈さん二人に何をしたんですか?初めからこんなに当たり強いのどうかと思いますが?」

 

 せっかくのチャンスだと思い、俺を嫌う理由を聞く。

 

 「そうだな、言わないと納得して退部もしてくれませんから話してやる。確かに占いのこともあるが、一番は私達のコミュニティを邪魔するかもしれないからだ」

 

 「どういうこと?」

 

 夢奈さんは整った顔を曇らせながら話し出す。

 

 「私達は可愛いだという共通点以外何もかも違う。性格や運動神経、学力、体つき、趣味、特技などと。そうなってしまうとクラスでの位置がみんな違い、それぞれ違ったコミュニティを持つ。しかしそんな全く違う三人でも占い部では仲良くできた。

 友達がほぼいない私からしたらその時間は尊く、一緒続いて欲しい……」


 次の瞬間、夢奈さんの口調は強くなる。


 「だからお前みたいな赤の他人が入ってくると、単純に邪魔だし、これからの関係がどうなるか分からない。実際夜月は、お前に興味津々なんだ!私から二人を取り上げたら友達いないんだ!さぁ退部しろ!」

 

 理由はよく分かった。

 夢奈さんの今までのコミュニティを守るために、俺は邪魔者。だからやめて欲しい。


 しかし俺も占いの結果について気になるし、彼女が欲しい。そんな機会を他人によって無くしたくない。また俺にもプライドはある。


 さぁどうしようか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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