第2話 占い部


 「じゃあ今から占い部会議を行います」

 

 部長の橋川さんがこの場を仕切る。

 昨日あんなに暗かった部屋がただの部室化とし、彼女達は制服姿である。

 今日は占い部でもない俺も含めた会議。

 

 「お題はこの人、木野光圀の占いについてです」

 

 「はい!私はこんな人に一目惚れもしてませんし、好きでもありません!むしろ嫌いな方」

 

 まず、正直に発言するのは__斉木夢奈。


 どんな人か詳しく説明していなかったので俺から見た彼女の印象を今からしよう。


 彼女はひまわりのような金髪にぴょんっとアホ毛が飛び出ている。小学生みたいな身長で可愛らしいがそれとは逆に強気な印象。

 とても申し訳ないが……まな板だ。

 

 「それは私もです……」

 

 次にボソッと言ったのは__星山鈴美。


 こちらは黒髪ロングと平均な身長で、これといった特徴はないが普通に可愛い。夢奈とは別タイプで、静かで真面目な印象だ。

 多分、清楚系だろう。

 

 「そんなこと言っても、占いでは確かにハッキリと私達が出ました」

 

 「夜月!それはなにかの間違えじゃない?」


 「それはないと思う……だって私達三人とも同じ結果だったから……」

 

 今日も皆、頭を悩ませている。

 それもそうだ。昨日初めて会った人が運命の人なんて言われたら、信じれないし、三人全員が写し出されたら混乱するのは当たり前。


 無言の時間が何十分たったのだろうか?

 なのにこんなに考えた結論はというと......


 「とにかく占いの結果が絶対当たるとは限らないし、考えても分からないよ」

 

 「そうだね……占いに関することは考えても仕方ないね」


 結果は分からない。

 俺も初心者ながら必死で考えたのだが、何も思い浮かばなかった。


 「でも私の運命の人が光圀君だったら色々としないといけないことが!だからこの占いのことをもっと……」

 

 なぜだろう。橋川さんは少し嬉しいそうにも見える。

 この感じからしてさっき言っていた色々はなんとなく想像できる自分が嫌い。勘違いしていたらもっと嫌いになる。

 

 「とにかくこの会議はもう終わりにしません」

 

 このままではキリがないと思い、終わりの提案をした。

 俺を含めた三人は納得の表情を浮かべていたが、橋川さんただ一人だけが気に食わぬ顔をしている。

 

 「やっぱり私この結果気になるから師匠の所言って来る!光圀君も来て!」

 

 「えっ!あっ!分かりました……」

 

 帰りたい気持ちがあったが、橋川さんの圧に負けてついつい返事をしてしまった。

 けど一度言ったことは男として取り消したくない。

 よくわからないプライドが働き俺達は、二人で占いの師匠という方に会いに行くことに。



 ☆★☆★



 「着いたここだよ」

 

 案内された場所は気味が悪く、禍々しい雰囲気が漂っている。

 普段なら絶対に近づかないな。

 橋川さんも恐る恐る扉を開ける。

 

 「お邪魔します。師匠いますか?」


 「だれじゃ?」


 辺りは見たこともないもので埋め尽くしており、随分と歳を取っていると思われる、おじいちゃんがゆっくりゆっくりと階段を降りてくる。

 

 「あーー夜月ちゃんかどうした?それにそこにいる男は彼氏か?」


 「えっえっ!ち違うよ!」


 照れてる姿は可愛い。

 話は切り替わって、俺達はこれまでの経緯を話す。

 

 「うーんたしかに不思議じゃな。人物までハッキリと出るとは聞いたことないの」


 「師匠でも分からないのですか」


 占いのベテランでも分からない。

 これは永遠の謎行きか、そう思ったのだが……


 「もしかすると、その坊やの生命力が強いからかもな」


 「どういうこと?」


 ベテランが思いついた。

 しかも俺が何かのキーマンらしい。

 漫画の主人公みたいなシチュエーションなので、目を輝かせながら詳しく聞いてみると......


 「まず私たち先祖の占いは占い師の生命力によって信憑性や具体性が高くなる。そこにいる夜月も高いぞ。ここからは私の憶測だが、もしかすると坊やの生命力が高すぎるがあまり、夜月の占いに影響を与えた可能性があるのじゃ」


 まじか!

 なんと運動も勉強もろくにできないのに生命力は高いのかもしれない可能性に、驚きを隠しきれず瞬きを何回も繰り返す。


 「じゃあもし師匠の考えが正しければ、私達のだれかは絶対結婚するということなの!」

 

 「そういうことじゃな」


 とりあえず今回の占い結果で、占い部の誰かと結婚することがほぼほぼ確定した。

 果たしてそれは誰なのか、ハッキリと分からないが、少なくともこれからの生活に華を添なわった。

 

 「えぇー」

 

 夜月は両手を頬にあて、真っ赤になる。

 

 「じゃあとりあえず、明日から占い部に入ってね。私達三人の中からベストパートナーを見つけてもらいます。みんな実は彼氏ができずに焦っているのでもしかしたらね!」

 

 今思ったのだが、夜月はほかの二人と違ってなぜかノリノリ。

 彼氏でも欲しいのだろうか?


 とりあえず約17年生きてきた中で、人生で最高のモテ期が来た。

 明日からの占い部が楽しみ。

 

 

 

 

 

 

 


 


 


 

 

 

 

 

 

 

 

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