第4話



「他には何か無いのかの?」


「そうだな・・・俺の元居た世界の景色とか見る?」


「ほう!それは興味あるの!」


「俺の住んでいた街にしよう」


動画サイトで音声検索。


「仙台、景色」


「この道具って言葉がわかるの?」


「これは言葉を文字にする機能だね。その文字を検索する」


「検索って?」


「そうだな・・・図書館ってあるか?図書館でなくても本がたくさんある場所とか」


「ギルドにあるのう。魔法関連、魔物関連、歴史書などの本がある」


「で、そこと同じようにこのスマホに動画がたくさん入っていると思ってくれ。その中から俺の街の景色に関連するものを探し出してくるように命令したわけ」


「なるほど、図書担当のギルド員みたいなことをするわけね。聞けばそれに関する本を持ってきてくれるの」


「そーゆーこと。じゃああっちの景色な!再生っと」


俺の住んでいた仙台の景色が映し出される。


「ユウキ、このデカい物はなんじゃ?」


「ビルディング、建物だぞ」


「ユウキの世界ってこんなに高い建物があるのね」


「人多いからね。でもここはそこそこ大きいが地方都市だ。首都なんかもっとすげーぞ」


地上から撮っていた動画が空撮に変わる。


「・・・・ねぇユウキ、これって空から見た景色じゃない?」


「そうだな。地面から見るより街の感じがわかりやすいだろ?」


「じゃなくてえ!あなたのいた世界って空飛べるの?」


「空を飛ぶ乗り物ならあったぞ。遠くの街や他の国まで飛んだりとか」


「なんじゃと?ユウキ、それはこの世界で造ることは出来ぬか?この世界には空を飛ぶ乗り物は無いのじゃ」


「同じのは無理だ。そうだな・・・・気球って乗り物ならば多分造れると思うけど」


「本当にそれが造れるのならば海の調査も進むやもしれぬ!」


「海なら船でやればいいんじゃねえの?」


「海はある程度の深さがあるところからは巨大な魔物がいるでの、危険なのでその先に船で進むことが出来ぬのじゃ」


「だからわたしたちが知っているのはこの大陸と陸から近い島だけなの。他にも大陸や島があるのか?人は住んでいるのか?全くわかっていないのよ」


「それ、昨日こっち来た時にナビで見たぞ」


「なんじゃと?」


もう一度マップをひらく。


「今ここにいるだろ?」


縮小、縮小・・・・・


「これでこの大陸全部だろ?もっと広く表示させると・・・」


縮小、縮小・・・・・


「ほれ、この大陸の他に3つの大陸がある」


カムジとファウは固まってしまった。


「おーい、大丈夫かー?」


「はっ!だ、大丈夫。これもしかして他の大陸を拡大して見れたりする?」


「昨日はやらなかったけど多分出来るハズ。やってみよう」


一つの大陸を選んで拡大、拡大・・・


「あっちにも何か住んでるみたいだな、街がある。フーマクラだってよ」


何が住んでるのかね?人じゃなかったりして。


「おぬし規格外すぎじゃの」


「俺が?俺の車や持っている道具がじゃねえのか?」


「両方よユウキ。この自動車だけでも凄いのに、スマホで他の大陸のことわかっちゃうし、本人は空を飛ぶ乗り物の知識がある」


調子に乗っていろいろ見せすぎたかなぁ?


「そう言われてもなあ。あっちじゃ普通のおっさんだったんだが」


「おっさん?」


「ファウには言ってなかったね。こっち来て何故か若返ったんだが、俺55歳なんだ」


「そうなの?でもわたしからしたら20代も50代も変わらないよ」


「まあエルフからしたらそうかもだが・・・」


その後もカレー食いながら元の世界のことを聞かれたり、この世界のことを聞いたり。


「そろそろ行こうか。そういや車は二人しか乗れないぞ」


「ファウを乗せてやってくれ。わしは走って行こう」


「いやお前だけ走らせるのは悪いだろ。ちょっと待ってろ」


俺は積んであった自転車を出す。マウンテンバイクだ。


「カムジ、これ乗ってみないか?」


「車より小さい乗り物というやつか?わしに乗れるかの?」


「そんなに難しくねーよ。見てろ」


初めに俺が乗ってみせる。


「なるほど、この鐙のような部分を足で回すと進むわけじゃな?」


「そうだ。ハンドルの前のレバー、これを引くと車輪の回転スピードが落ちる。力加減に注意するように。右が前輪、左が後輪だ。椅子の高さは一番低くしてある。ここのレバーで調整できるから、乗ってみて好みに合わせるといい」


さすがドワーフ、こーゆーのは好きみたいだ。どこをどう動かせばどうなるか、すぐに理解する。


「よし、わかった。すぐに乗りこなしてみせるわ!」


冒険者だから多分運動神経いいんだろうとは思ったが・・・・まさか一発で乗れるとはね。


「ガハハハハ!馬より簡単じゃわい!」


「カムジは乗馬得意だからねぇ」


いや乗馬とは大分違うと思うけどな。馬乗ったことねーけど。


「一つ忘れてた。走りながらここを動かすと・・・説明めんどくせーから実際やってみろ」


変速機なんだが、カムジなら見ればわかるだろ。


「ここがこう動くと・・・わかった。足の動きに対する後輪の回転するスピードが変わるのじゃな?」


さすがでございます。カムジならバイクもすぐ乗れそうだな。あとで教えてやろう。


「じゃあとっとと片付けて行くか」


「わしは先に行くぞ。その方がぬし達が着いた時の手続きも早く済むじゃろうからの。わしの依頼も終わらせておくわい」


「そうか?じゃあわりーが頼むわ」


「少しゆっくり来てもらった方がよいかの。ファウ、あとは頼む」


「任せて。この辺なら盗賊は大丈夫でしょうけどね」


「そうじゃが自動車は目立つ。変な奴が絡んでこないとも限らんからの。ユウキ、ズヴェルダーツで会おう」


「おう!じゃああとでな」


ゆっくりと言われたので車で少し時間をつぶすファウと俺。


「街はここからどのくらいなんだ?」


「すぐそこだよ。この先に林があるでしょ?」


石畳の道が少し登りながら林に続いている。


「その林を抜けたら見えるよ。なかなかの景色だから期待してね!」


これってナビ見てもなんか凄そうってのはわかる。


「楽しみだ。これ、あっちから持ってきたお菓子」


さっきシェルから出しておいたチョコレート、半分に折って渡す。


「お菓子・・・なの?これ」


「甘くておいしいよ」


そう言って食ってみせる。


「・・・・食べ物に見えないけど・・・・甘っ!おいしい!」


「ぜってー気に入ると思った(笑)」


「ねえこれまだあるの?またもらってもいい?」


「もちろん。何種類かあるから後で別なのもあげるよ」


「やったー!ユウキと会えて良かったぁ」


なんか動物の餌付けに成功した気分だ。

その後も少し話して、そろそろいいかと出発。


前方、林の上には頂上に雪を頂いた山が連なって見えていた。


「すげー高い山だな」


「そうだね。どの山もまだ頂上にたどり着いた人はいないんだよ」


「そんなにか?」


「魔物もいるし険しい山ばかりだし。でも戦争なんかで山の方から攻められることが無いから、その分街は守りやすいそうよ」


「なるほどねぇ」


車は林に入る。石畳の幅は大体元の世界で言えば三車線くらい、道の端から林の木まで5メートルくらいあるので暗いってことも無く走りやすい。


それほど大きくない林だった。少し走ると視界がひらける。


「おー!」


ファウの言ったように圧巻の景色だ。

遠くに連なる高い山脈、左に大きな湖があり、右は見渡す限りの畑。そして真ん中に高い外壁。


「なかなかの眺めでしょ?あの外壁の中がズヴェルダーツだよ」


「首都ってことは王様もいるんだよな?」


「街の北側にお城があるんだけど、この国の王様は代々みんなあまり派手なのが好きじゃないのね?無駄に大きいお城じゃないから、ここからの角度じゃ見えないね」


「ほう、好感持てそうな王様だね」


「ユウキ、多分後で会うことになるからね?」


「やっぱりかぁ」


「あまり気負わないで大丈夫だよ。気さくな王様だから」


「会ったことあるんだ?」


「名の売れた冒険者だと何かの行事に呼ばれることあるからね、その時に何度か」


「じゃあ俺が会うとき一緒にいてくれない?」


「ビビりすぎ(笑) でも会うときは多分わたしとカムジも一緒になるんじゃないかな?」


「そう?なら少しは気が楽だわ」


そんな話をしている間に街門が近くなってきた。


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