第2話
翌朝
「んん・・・・ああ、異世界なんだっけ」
昨日周辺を歩いてみたが、特に何も変わったことは無い普通の平原だった。異世界って言われなきゃわからんぐらいに違和感は無い。夕方に飯食って、そのあとはもう帰れないことと異世界での生活に対する不安で悲しくなったり落ち込んだりだったので、無理やり酒飲んで寝た。魔物は現れなかったみたい。いるかどうかわからんけど。
「おっと、確認しておかないと」
神様にお願いしておいたうちの一つ、消費した物が元に戻るってのを確認してみる。
「よっしゃ!酒も米も元に戻ってる!」
飲んだ缶ビールや炊いた米、晩飯のおかずの肉じゃがに使った肉も野菜も元通りだ。
これならどこか良い場所探して一人で暮らすのもアリだな。だが街があるのだから、こっちの住人にも会ってみたい。どんな国があって、どんな種族がいるのだろう?
朝食はトースト。パンは厚めの食パン3枚入りしか持ってきていない。こうなると別なのも持ってくればよかったな。食パン以外は下手すりゃ二度と食えないかもしれない。こっちにも美味いパンがあればいいのだが。
焼いた食パンにマーガリンを塗って食す。コーヒーは入れるの面倒だったから缶コーヒーだ。
食後の一服の後出発。まずはナビの画面からおそらく道と思われる線を目指す。町までは遠いが、こっちなら7~8kmくらい。
のんびりと走っているうちに街道?が見えてきた。そして第一異世界人発見!少し背の低い髭面のおっさん。見た目はドワーフって感じだな。革の鎧?半袖のシャツから出ている腕の太さは俺の太ももくらいある。そして彼は車を見て斧を構えた。そりゃ車を知らなければ魔物の類と思うわな。とりあえず敵意が無いとこを見せようと、窓から身を乗り出して手を振る。
「まってくれ!こちらに敵意は無い!」
言ってはみたが、言葉通じるか?
「面妖な奴、何者だ?」
言葉通じる!俺は少し離れた場所に車を止めておりる。
「怪しい者ではありません!説明させてください」
「・・・話は聞くが、怪しいところがあれば容赦はせんぞ?」
「わかりました。まずは聞いていただけますか?」
何をどう話す?ここは神様が言っていた、少しの間悪人には出会わないってのを信じてみる。駄目だったら車で逃げよう。
「俺は異世界から来ました」
俺は正直にそのまま話すことにした。
「異世界じゃと?」
「信じられないかもしれませんが本当なんです。何が起きたのか順にお話ししますのでとりあえず聞いて下さい」
俺は今までの出来事を話し始める。
・・・・・
「異世界人か。稀にそのような話が無いでもない。前に現れてからはもう100年以上経っておるがの」
どうやって信じてもらおうって思った異世界人ってことだが、割とすぐ信じてくれたみたいだ。あの神様、今まで何人こっちに送ったのやら。
「しかし一晩この平原で過ごしたのか?」
「もしかして危険な生き物とか出るんですか?」
「ここは狼や猪が多いかの。どちらかと言えば魔物化していない方が多いが、魔物もそれなりにおる」
やっぱり魔物いるんかい。
「えーと、まだこちらの世界のことを知らないのですが、魔物は普通の動物が変化したものって認識でいいですか?」
「それだけとは限らん。特に強い魔物には普通の動物では考えられぬ見た目をしたものが多いのう」
「そうなんですね。でもこの車、あーっと正式には自動車と言いますが、神様に絶対壊れないようにってお願いしてあるので、中にいれば大丈夫だったと思いますよ」
「絶対に壊れぬ・・・試してみてもよいか?」
「もちろん!」
「どれ・・・・・うおりゃ!」
ドワーフさん(仮名)の一撃!斧はそのまま跳ね返った!
「わしの斧の一撃で傷ひとつ付かんとはの!異世界人か、信じよう。こんなものこの世界の者には造れぬわ」
実は壊れないかビビッてたけどね。だって車の見た目も触った感触も全然変わってねえんだもんよ。
「そういや自己紹介がまだでしたね。俺は新藤祐樹、55歳です」
「わしはカムジ、ドワーフ族じゃ。おぬし見た感じ普人族と思ったが、異世界人じゃし違うのかのう?20代半ばくらいかと思っておったわ」
「え?ちょ、ちょっと待っててください!」
車のミラーで自分の顔を見てみた。
そこには当然俺が映っているのだが、違和感があった。
「若返ってる!!」
大体25,6歳くらいだろうか?
「ほう?まあ神に会い世界を越えたのだ。そのようなこともあろう」
「えー・・・・」
なんか目の調子がいいって感じてたんだよなあ、俺老眼だったからさ。まあ若返るなんて悪いことじゃないから良しとしよう。
「若返ったのだしそのように扱うぞ。それと堅苦しいから敬語はやめい」
「わかった、よろしくなカムジ。ちなみにカムジはいくつなんだ?」
「わしは27になる」
40過ぎのおっさんかと思ったが意外と若かった。そしてやっぱりドワーフだったか。獣人やエルフもいるのかな?
「カムジはどんな仕事を?どこへ向かってたんだ?」
「おう、わしは冒険者じゃ!冒険者というのは町中のどぶさらいから他の町への買い物、いろいろな物を作るための素材集めに薬草採取、魔物討伐やダンジョン探索など、誰かの頼み事を自分の力量と報酬次第でなんでもする仕事よ。今は素材集めの依頼の帰りじゃ」
俺のことを思ってか何も言わずともわざわざ説明してくれるあたり、カムジはいい奴っぽい。しかし冒険者もいるとかほんとにラノベの異世界だな。
「素材ってのはそのリュックの中か?」
カムジの背負っているリュックを見ながら聞いてみる。
「そうじゃ。見てみるか?」
言いながら引っ張り出したものはこんなリュックには入りそうもない3mほどのトカゲ?のような生き物。首に傷がある。死んでいるようだ。。
「見た目のわりに容量大きいんだな、そのリュック」
「ぬしの世界には無いか?これは正式には拡大収納鞄と言っての、見た目より多くのものを入れられるのじゃが、実際のところは皆鞄やリュックとしか呼んでおらぬ。この世界の鞄は多少機能の差はあれど、ほとんどは拡張されておるからの。そうでなければ沼トカゲ10匹狩る依頼など一人では受けられぬわ」
そう言いながらカムジは笑うが、これに10匹も入ってんのかよ!
「すげえな!魔法かなにかか?」
「そうじゃ。この乗り物も魔法で動くのか?」
「いや、俺の世界には魔法は無かった」
「なんと!魔法が無ければいろいろと不便ではなかったか?」
「魔法のかわりに科学ってのがあるんだ。そのリュックみたいな物は科学じゃ作れないから、これに関しちゃ魔法の方が便利そうだな。けど、科学の方が便利なこともあると思うぜ。この車なんかそうだろ?何かに引かせなくても走れるんだぜ?」
「なるほどのう・・・」
魔法があるんだな。俺も使えるだろうか?だが今はそれよりもこの世界のことが知りたかった。そのためカムジとはもっと話していたい。
「そういやどこまで行くんだ?よかったら乗せてくぞ?」
「ほんとうか?そりゃ助かるわい!わしの住んでる街はズヴェルダーツという街で、この国、ヴェルズ王国の首都じゃ。大体2日くらいかかるかのう。それほどキツい距離ではないが、楽できるならそれに越したことはない」
多分2日で100kmは俺にはキツいんじゃねーかな?そんな距離歩いたことねえわ。
「それじゃ少し狭いかもしれんが、まあ乗ってくれ」
俺は助手席のドアを開けた。
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