第5話 死神さんは癒やされたい!
出勤の無い日は、朝から掃除だ、何もしなくても、いや、何もしないから、家は汚れるばっかりだ。一度、掃除を始めてしまうと、何処で終わりにすれば良いか、分からなくなってしまう。独りになってしまった後は、翌日、仕事があるのに、汗塗れ!埃まみれで一日中掃除していた。薫と一緒に暮らす様になって、普段から彼の娘が色々してくれているので、俺が特段に、しなけりゃならない事も減ってしまった。時間が、結構、纏まって取れる様になった。山歩きに行きたい。ちょっと、時間をかけて、出来れば四国、九州迄、足を伸ばしてみたい。薫と一緒に行ければ良いが、何しろヒールのある靴で、山道を歩いて足を挫く様な女だ。誘う事も相談する事も憚られた。何より、一緒に居るだけで楽しい!暮らし始めのドキドキは、無くなったが、その分安心感が増して、言葉にしないで通じ合えた時の嬉しさは、変え難いものがあった。会社からの帰り、コンビニに立ち寄り、何やら、チョコの生菓子?ゴンザレス?ゴンチャガ?たら言う物を、頼まれもしないのに買って帰る。薫は「お帰り!欲しい?」聞くから答える「うん!」聞くから!答える、答えないと、怒るから!薫が俺の唇に触れる感じのキッスを呉れる。もっと欲しいが、ニヤニヤしながら俺を見る目が、好きじゃ無い!
「もっと欲しいんでしょう」
「もっと欲しいんでしょう」
そう言っている目だ。実に悔しい!声に出されたら、思わず頷いてしまうだろう。声も、出すかも知れない「ハイッ!」って、良いお返事をしそうで悔しい。
この歳になって、初めて気付いた。悔しいが重なって、嬉しいになる事があると。
帰宅後直ぐに、俺は風呂に入る。準備してあるのだから入る。断じて、入らせられる訳ではない。自分の意思で入る。沸かし直しが勿体無いから、薫と一緒に入ろうと提案したが、夕食の準備をすると、断られた。
「温かい物は、温かく食べて欲しいのよ!助平さん!」
冗談じゃない!一緒に入るのは、経済的意味しかないぞ!爺いは
「ゴディバのチョコムース!美味しいわよね〜」
ふん、スペインじゃ無くって、フランスか?何れにしてもラテン系だな。
「やっぱ、チョコはベルギーよね!」「フランスかと、思ったんじゃ無い?」
んっ、思った、でも此処は無口な父さんで凌ぐ。
「思ったよね〜?」
「これ、モカ?苦味がチョコに合うよね」
「ブラジル、コーヒー豆の味も、分からないんだ〜!」
「コーヒー豆は、焙煎の具合いで大分、味が変わるらしいぜ」
「そうかもね、美味しければ良いか!何でも!」
「ハイッ、ハイッ、その通り!」
「で!ベルギー、分かってた?」
「......」
薫が、風呂に入っている間、TVでニュースを見ていた。ボンヤリと最近のことを振り返ると、此処のところ俺は、よく昔の夢を見ていることに気付いた。主に、中学生の頃の夢だ。以前も見ないことはなかったが、これ程、頻繁に見ることは無かった気がする。何時でも夢の中には、一人の女の子が出て来る。彼女が、春風の中で振り向くと、俺の目の前で、風に吹き上げられて彼女の濃紺のプリーツスカートが舞い上がる!真っ白な太腿と尻を覆う布地、眩しいばかりの濃紺と白のコントラスト!あの頃、俺達が通った中学校は海岸沿いの高台にあった。芋畑が海の様に広がる西側からは、春先に強い風が吹き、埃りを巻き上げながら、極々、偶に俺達に細やかなラッキースケベをプレゼントしてくれた。また、俺達の中学の制服は、女子はセイラー服で、夏場のそれは純白だった。朝の登校で、小雨が降って、上着を濡らした彼女が俺の前の席に座った時、濡れた制服の上から透けるブラの紐から目が離せなかった。夢の中では、何度も彼女の恥ずかしがる顔や、はにかむ笑顔も、ハッキリ思い出しているのに。目覚めて起きると、彼女の名前さえ思い出せない。そんな時は、何時も薫が嬉しげに微笑みながら、俺を見下ろしている。
「
「お、覚えちゃいないよ、夢の話だろ、勘弁してよ、ほんと!思い出せないって」
「あんなに、名前呼んでたのに?寝言で!」
「どんな名前、俺、知りたいな!」
「えぇ、自分で名前、呼んでて覚えてないの?失礼な爺いだな〜!」
「だから、教えてくれって、思い出すかも知れない」
「ふっふん!教えてあ〜げ無い!」「自分で、思い出しなよ、ボケ防止、ボケ防止!」
「あぁ、良いよ、別に大したことじゃ無い!」
「何よ!その言い草、可愛く無いな」
「爺いが、可愛くても気味悪いだけだぜ!」
と或る夜、時雨君のベッドサイド、深い眠りの中の時雨君に話しかける薫さん。
「ねぇねぇ、時雨君?私の、貴方達の委員長の1番の思い出って何?」
薫は、時雨君の尊厳に優しく触れながら声をかける、時雨君が思い出すのは、あの、風の強い日の委員長の太腿とパンツ!眩しい程の濃紺と純白のコントラスト!
「あぁ、あんな綺麗で、清らかな人の...見てはいけない.....目がつ、...つ潰れるような...う...うっ...美しい、御御足、ふっ、ふとももそ、そう!御パンツ!真っ白な、薄い布地」
「時雨君?触りたい?」
「うっ、うん!触りたい、出来るなら?でも、出来ない、立てない...勃っちゃってる...は、恥ずかしい」
「大丈夫、誰も見てないよ」
「こっに、おいでよ...ほら、手を貸して」
「うん!」
「どぉ、かな?」
「うっ、すべすべして、暖かい、しっとりして...」
「委員長の事、好きなの?」
「うん、大好き...愛してる....誰よりも綺麗で...触りたい」
「キス、したい?」
「ふぇっ!...あぁ.....」
「パンツ、汚しちゃったの?」
「ご、御免なさい!委員長!...か、薫ちゃん...御免なさい....ぼ...僕、我慢できなくて!」「君を、汚してしまって、御免なさい」
「あらあら、泣かなくて良いのよ、時雨君」「そんなに、私、薫が好きなの?」
「うん、大好き....大好き...愛してるんだ」
「世界中の誰よりも?」
「うん、世界中の誰よりも、愛してる...死ぬまで、思い続ける」
「うふふ....うふっ、時雨君....良いわ、もぉ寝ましょ、パンツ替えてあげる」
「う....うん...ふっふぅ〜っ」
「そんなに好きなんだ、ふふっ...私のこと」
薫さんは、嬉しそうに、時雨君のパンツを下げると、まだ、元気のいい時雨君の尊厳を指で弾いた。
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