1章 19話
「ダメも何も、妹だっての」
「……え?」
「美穂は、俺の妹。六つ歳が離れてる、血の繋がった妹だよ」
今年、十二才になる小学校六年生。母さんは忙しいから、俺が毎日迎えにきてる。
進級する度に学童を卒業しちゃうから、今では小学校六年生は美穂だけだ。だから他の皆のお世話もしてるような、しっかり者で自慢の妹。
「風間美穂です。いつもうちの凛空が、お友達としてお世話になってます」
「あ、え? あ、あの……。河村彩楓です。こちらこそ、いつもご迷惑をおかけしております」
本当にな。とんでもない勘違いをしてたし……。いや、迷惑のかけ方なら助けてもらった俺の方が上、か?
「……凛空。いつもご迷惑ってのは、具体的には?」
「怒るなよ。河村さんは、俺が性格悪い子にいじめられそうになってたのを助けてくれたんだから」
「え……。そうなんだ。それなら、まぁ……」
膨れっ面で、渋々ながら河村さんに頭を下げてる。
年下の子の面倒を見るし、言葉遣いも考え方も小学生離れしてるけど……。
母さんからの愛情と触れ合う時間が少なかった分、だいぶお兄ちゃんっ子だからな。
父親は、美穂が生まれたときには母さんと離婚していなかったし。
お互いにブラコン、シスコンだとは思う。
「美穂、朝に編んだ髪がほどけかけてるぞ。結んであげるから、後ろ向いて」
「……うん」
未だに呆然としてる様子の河村さんをよそに、バックからヘアクリップを取り出す。
背中を向けた美穂の髪を三つ編みや編み込みでハーフアップに整える。
よし、可愛くも上品になったな。
「あ、そのヘアクリップ……」
「そう。……美穂、写真撮るよ」
「え、なんで!?」
「ほら、見てみ?」
撮った写真を見せてやると、美穂は目を見開いた後、ヘアクリップを触った。
「……凛空、ありがとう」
うんうん。こうして幸せそうな笑みを見ると、頑張って引越バイトをしてよかったなってなる。
自分の進学費用にもなるし、家族が喜ぶことにも使える。
「美穂ちゃん。可愛い。似合ってるね!」
「ありがとうございます。私は凛空に毎日、髪を結んでもらってるんです。……あんまり上手くはないけど、下手でもないので」
「はは……。可もなく不可もなく、か。……妹にも言われると、メンタルにくるなぁ」
家事でもなんでもそうだ。何か、何か一つでもいい。
これなら誰にも負けないってものがあればなぁ……。
「それで河村さん? もう勘違いはしてない?」
「あ、うん。私、色々と恥ずかしいね」
照れたように、高い鼻を擦ってる。その恥ずかしそうな笑みには、もう陰りも曇りもない。
ちゃんと、心からの笑みだ。よかった、これが見たかったんだ。
「美穂ちゃん。お姉ちゃんは、ほしくない?」
「うん、ちょっと黙ろうか」
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