第4話 ♡+30で生まれたJealousy
城ケ崎先輩とキスをした。
しかも、たくさん。
「ふ、へへ……」
初めてキスをした翌日。
今日は土曜日、学校は休みです。
「先輩、もう起きてるかな?」
身支度を整え、部屋を出る。
……あれ? いない。
耳を澄ませると、キーボードを打つ音が聞こえる。
なんだ、仕事かぁ。
「やることないし、暇だなぁ……あ、そうだ」
時計を見ると、朝の九時。
先輩、さすがに朝ごはんは食べたよね?
なら、お昼は何か作ってあげようーっと!
【お昼ご飯の材料を買ってきます。何が出来るか、楽しみに待っててくださいね】
書きおきを残し、余計な音を立てないようこっそり部屋を後にする。
カードキーある、スマホある、財布ある!
昨日の失敗を繰り返さないぞ。
今日の私は完璧だ!
スマホの地図アプリを頼りにしながら、駅の近くにあるスーパーを目指す。歩いて五分。徒歩圏内でどこでも行けるって、最高だぁ。
「お、着いた着いた。さーて、何を買おうかなぁ……ん?」
スーパーに着くと、異様な光景が目に入る。
それは……
「今からタイムセールだよー! お肉のまとめ売りがお買い得!」
「数の制限なし⁉」
「あら、お得じゃな~い」
「急いで行かなくちゃ!!」
タイムセールに群がる、マダムたちの姿。だけど忘れちゃぁならないのが、今こそお金持ちの私も、昔は一般家庭の子だったって事。お母さんに連れられ、こういった戦場に「即戦力」として何度か来たことがある。
だから――
「待ってて、お肉ー!」
昔を思い出して、なんだかやる気が湧いてきた!屈強なマダムたちに負けじと、お肉があるワゴンを目指す。
「ってかお肉の種類はなんだろ? 鶏かな?」
その時。戦利品を手に、安堵の息をはくご婦人とすれ違った。カゴの中には「大容量!」のシールが貼られた牛肉パック。
まとめ売りって牛肉なんだ……、食べたい!
なんとしてでも手に入れないと!
「にしても皆さまお強いことで、ぐぬぬ……!ま、負けるもんか~!」
ワゴンの牛肉が一つ、また一つと消えていく。
あぁ、そんな!
まだ一つも手に入れてないよ!
すると急に視界が開け、いきなりワゴンの前に躍り出る。残っているお肉を見ると――なんと一つだけ。
「も、もらったぁあああ!」
パシッ
すごい勢いで手を伸ばした私。
その結果は……
「あれ、丸西じゃねーか?」
「……え?」
なんとクラスの男子と引き分けになったのでした。
𑁍𓏸𓈒
「にしても、すごい偶然だなぁ。同じ実行委員の丸西と会うなんてさー」
「って、その実行委員に勧誘したのは誰よー。笹岡ぁ」
「はは、悪いわるい」
と、微塵も申し訳なさそうな素振りを見せないのが、同じクラスの笹岡 大志(ささおか たいし)。
爽やかな笑顔が特徴で、髪の毛は黒色。少し〝抜けてる〟って噂だけど、それ以上に「お人よし」で有名。つまり、かわいいイケメンって事だ。って、かわいいと言っても背は高い。先輩と同じくらいだから、百八十センチはありそう。
「笹岡、今日は部活休み?」
「そー。その代わり明日、一日練」
野球部に所属している笹岡は、同じ「外の運動部」同士、テニス部の芹ちゃんと仲が良い。だけど私は挨拶をする程度で、そんなに親しくない。呼び捨てにしてるけどさ、「なんて呼べばいい?」って聞いた時に「名字呼び捨てでー」って言われたからそう呼んでるだし。
……ん?
笹岡は……たいして仲良くない私と、どうして実行委員をやりたがったのかな?
「なぁ丸西」
「ん? なに?」
「どうして俺ら、体育祭の実行員になったんだ?」
「ブーッ!」
笹岡がそれ言う!?
自分でも分からないまま実行委員になったの!?
「ゲホ、ゲホッ!」
スーパーを出た近くの公園で、さっき買ったジュースを飲んでいた私たち。私の炭酸レモンジュースは、吹き出した事により、たった今なくなった。
「なに吐いてんだよ丸西!」
「ご、ごめ! でも笹岡が変なことを言うから、ゲホ、ゲホ!」
炭酸が変な所に入って、思わずむせる。あぅ、喉がヒリヒリする~……っ!
すると苦しんでいる私をみかねた笹岡が「これを飲め!」と自分のジュースを寄こした。
「俺のも炭酸だけど、きっと大丈夫だ!」
「ま、まって、……うっ!?」
ペットボトルの口を強引に口に入れられ、仕方なく飲むはめに。炭酸で困ってる人の口へ炭酸を入れるのは禁止だよ!? 笹岡‼
すると、案の定「ぶへッ」と。笹岡のくれたジュースも吐き出してしまう。
「おい丸西、大丈夫かよ! 顔ビショビショだぞ!?」
「ごめっ、だいじょぶ、だから」
頼むから安静にさせて!と思っていると、笹岡がポケットからハンカチを出した。
え、意外にマメ。
絶対もたない派だと思ってた(失礼だけど)。
「激甘イチゴ味だから、乾いたらベタベタするかもな」
「え、イチゴ味の炭酸ジュース……?プッ。笹岡、変な趣味してるね!」
思わず吹き出しちゃった。
だって、男子がイチゴ味って意外すぎ。
「先輩なら、絶対に選ばないだろうなぁ」
「……なぁ丸西、目ぇつむって」
「ん?」
「顔、早く拭かせろって」
あぁ、そっか!ベンチに座る私の前に立ち、背中をちょいと丸めて、笹岡が顔を拭いてくれる。あ、いい匂いがする。柔軟剤のにおいかな?
「笹岡~、まだ?」
「もうちょい……、つーかさ。なんか丸西って、お嬢様っぽくないよな」
「え、いきなり何?」
「だってタイムセールに突っ込むお嬢様なんて、見た事ねーよ」
「あ~、そりゃ確かにね」
ハハハー、と乾いた笑いが出る。
「確かにお嬢様っぽくないよね。私って根っからのお金持ちじゃないからさ」
「あ~、最近金持ちになったっていう、」
「そう。成金だよ成金」
あはは~と笑うと、笹岡くんがポツリと呟く。
「じゃあ、城ケ崎と婚約させられて災難だったな」
「え?」
ビックリして真顔になった私を、眉を下げた笹岡が真剣に見ていた。
「根っからのお坊ちゃまと婚約させられてさ。合わない事も多いだろ」
「まぁ……、そうだけど」
確かに、私と先輩は合わない事が多い。心から婚約者になりたい私と、形だけの婚約で充分な先輩。うん。私たちって、根本からして見事にバラバラ。婚約したってのに、毎日が不安の連続。
でも――
「安心してよ笹岡。婚約したこと、私は後悔してないからさ」
「なんで?」
「なんでって……私が城ケ崎先輩のこと好きだから」
「っていう暗示だよな?」
「違うよ、本当のほんと」
偶然でもさ、好きな人と婚約できたら嬉しくない?好きな人と一緒に住めるって、幸せのかたまりだよ。
「それに昨日だってさ、」
「あー、わかった分かった。無理に強がらなくていいから」
「だから、本当だってっ」
「へいへい」
笑いながら笹岡は「いいから、つむれ」と。自分の目を指さした。あぁ、顔を拭いてもらってるんだった。途中からガンガン目を開けてたよ。
スッ、と。私の視界が再び暗くなる。すると笹岡は屈強な体に似合わない優しい力加減で、私の顔をポンポンと拭いていった。
「なぁ丸西。もし俺が〝何か理由があって〟お前を同じ実行員に推薦したとしたら――」
「ん? 何かいった?」
「……いや」
なんでもねーよ、の声が聞こえて、私の顔からハンカチが離れる。だけど――
「……」
「……笹岡?」
私たちが汗ばむくらい強い日差しが降り注ぐ、良き晴れの日。そんな中。笹岡の顔に浮かぶのは、曇天。
「笹岡、どうしたの?」
「……んー、いや? なんでもねぇ」
一度ゆっくり目を伏せた後。笹岡の顔には、いつも教室で見る爽やかな笑顔が浮かんでいた。
「よしOK! さすがに服まで乾かしてやれねーから、さっさとお家に帰れよ」
「え、服?」
視線を下げると、白のワンピースに広がるイチゴの色。血かと思って、一瞬ギョッとしちゃった。
「これは……、警察に職質される前に帰らなきゃね」
「……」
ジュースがかかった服が、ひんやりして気持ちいい。六月と言っても、外にいると汗が流れるくらい暑い。朝の九時でも、もうお昼並みの気温だ。その暑さにやられてか、なんなのか。次に笹岡が言ったことは……
「ウチ……来る?」
「へ?」
黒い前髪の隙間から、真剣な瞳と目が合う。私たちの間に蜃気楼が生まれたのかと錯覚するほど、笹岡の瞳がゆらりと揺れた。
「ぅあっ、」
「おっと」
たくましい笹岡の腕が、よろけた体を支えてくれる。私の腰に回った笹岡の腕。グイッと引っ張られると、二人の距離が急に近くなった。
「大丈夫かよ?」
「だい、じょうぶ。なんかクラッとして」
「こりゃ、やっぱ俺の家に行くしか、」
「もう。冗談聞いてる暇ないから、帰るね」
べりっと笹岡を離して、家に戻るため回れ右をする。すると「丸西」と。掛け声と共に、何かが飛んできた。
ポスンッ
振り向いた私の腕に飛び込んだのは、笹岡が買ったイチゴ味の炭酸ジュース。え、笹岡の飲みかけをもらっても……。それに、コレ飲んだら間接キスになるじゃん。むせた時に強引に飲まされて、もう口つけちゃったけどさ!
「もし誰かに何か聞かれたら〝コレ零しました〟って証拠になるだろ。持っとけよ」
「あ、そっか。ありがとう笹岡」
「それと、俺の電話番号をラベルにメモったから登録よろしく。実行委員同士、これから連絡とる機会ふえそうだし」
見ると、本当にラベルに連絡先が書いてあった。笹岡スゴイ、いつの間に!
「分かった! じゃあ登録したらメール送るね」
「おう、待ってる!」
そして私たちは手を振り合い、その場で分かれた。私は来た時と同じ、五分の時間をかけ部屋に戻る。出かけた前と後ろで違うのは……白のワンピースが、白と赤色のまだらになったこと。そして笹岡が譲ってくれた、タイムセールでゲットしたお肉を持っていること。
「これで何を作ろうかな~」
上手にできたら先輩が「美味しいじゃん」って言ってくれるかな?
「それで、またキスなんて……キャー!」
エレベーターのボタンを押しながら、甘い妄想が膨らむ。
「どうか先輩が、昨日みたいに狂った先輩でありますように。ツンデレの〝デレ〟を発動してくれますように!」
だけど、私は知らなかった。
「……ふぅん」
グシャ
パソコンから目を離し、私が書き置きしたメモを握り潰す城ケ崎先輩。その目には「デレ」なんて一切なく。むしろ、いつもの冷徹さに磨きさえかかっている。
……そう。
私は知らなかった。
先輩の仕事部屋から、一望が眺められる事を。その景色の一つに、私と笹岡も含まれていた事を。
そして――
「間接キスに熱いハグ、ねぇ」
さっきの私たちの一部始終を先輩に見られていたなんて。そんな事実、知る由もなかったのでした。
𑁍𓏸𓈒
ガチャ
「ただいまかえり……あっ、シーだった」
先輩は仕事中なんだから、邪魔しちゃダメダメ。そーっとしないと。静かに靴を脱ぎ、静かにカバンを降ろし、静かに牛肉をキッチン台へおろす。物音一つ。ホコリ一つ飛ばない静かな動き。完璧!
「牛肉、どうすんの?」
「わぁ⁉」
姿が見えないのに、いきなり声が聞こえてビックリ!見ると先輩は、部屋の真ん中にある円柱の向こう側にいたみたい。円柱の周りにソファがグルリとあるから、そこに座ってるのかな?
「い、いたんですね。っというか、その位置から牛肉がよく見えましたね」
「俺〝目が良いから〟」
「へぇ、先輩の新情報ゲットできました!」
ニッと笑った時、やっと先輩が柱の影から出て来た。その顔には、ニッコリスマイル。え……、スマイル⁉
「先輩、何かいい事があったんですか?」
「なんで」
「だって表情が豊かだから」
「別に、何も」
じゃあ、まさか……昨日のキスの余韻で? キスした仲だから、私に笑顔を見せてくれるの?ってことは、ついに先輩が、私に心を開いたの⁉
「先輩、今なら私、天に召されても悔いはありません!」
「……」
「……あれ?」
こういった類の事を言うと、いつも「はぁ」とか「うざ」とか「変な奴」とか言われるのに。まさかの無言?もしかして先輩、調子が悪い?じゃないと私にニコニコするって、おかしいよね? 小言の一つも言わないし。
「お肉料理やめます! すぐにおかゆを作りますねッ」
「……」
バタバタ忙しくなく動く私を、尚も笑顔で見続ける先輩。あぁ、今まで私を三秒以上続けて見たこと無かったのに。先輩、よほど調子が優れないんですね。
待っててください!
必ず楽にしてあげますから――!
と、お米を入れようと鍋の蓋を開けた、その時だった。
シュッ
まるでボールのように飛んできて、カランと鍋の中に収まる「なにか」。よく見るとそれは、笹岡からもらったペットボトルだった。
「……んん?」
なんでペットボトルが鍋にゴールイン?
っていうか、ペットボトルの中身は?
いつの間にか空になってるんですけど?
私が何も知らないとなれば、可能性があるのは、この場にいるもう一人。なんだか寒気がして、顔の横をたらりと汗が流れる。
「先輩、今これ投げました?」
控えめに先輩を見る。
すると――
「いらないから捨てた。それが?」
先輩の顔に笑顔はなく、いつもの冷徹な表情。
ヒィッ! こ、こわ!!
先輩、シャレにならないくらい怖いから!
「捨てたって……な、中身はどうしたんですか? まだ半分くらい残ってたのに」
「あぁ、それなら」
と、先輩は私から視線を外す。次に、いつの間にかボールに入ってる牛肉を見た。一緒に入ってるのは……見たことある赤いジュース。
ま、まさか、これって……!
私の顔が青くなったと同時に、「知ってる?」と先輩。
「肉は果物につけると柔らかくなるんだ」
「へ……?」
「そのペットボトルから〝臭いくらい〟イチゴの匂いがしたから、さぞ柔らかくなるだろうね」
「っ!」
やっぱり! お肉と一緒に入ってるのって、笹岡のくれたジュース!先輩が中身の全部をボールに入れたから、空になってたんだ!
「せ、先輩、料理の知識まであるんですか、さすがですね。けど物を投げるのは禁止です……! 私に当たったらどうするんですかッ」
「当たらないよ。俺はそんなミスしない」
「ま、万が一ということもあります! いくら軽い物でも、当たりどころ悪かったら死んじゃいますからね!?」
「さっき〝天に召されてもいい〟って言ってたじゃん」
うぇ……!?
そんなの、言葉のあやに決まってるじゃん!
「先輩だって私がいなくなったら寂しいですよね? だから投げるのバツです!」
「別に寂しくないけど?」
「そこはウソでも〝そうだね〟って言ってくださいぃ!」
悲しい……。さすがクズ男は、どんな時もクズだ。
だけど、いつも以上によく回る口、イライラした態度。もしかして先輩って体の調子が悪いんじゃなく、機嫌が悪い?
「先輩、どうかしましたか?」
「……なにが?」
「いや、なんかいつもと違うから」
「……」
すると先輩は「そうだね」と。ポツリと呟いて、私に近づいた。わぁ、黒いパンツに白いシャツの私服姿もステキ――なんて思っていると、パシッと手を掴まれる。
ん?
手を掴まれる?
城ケ崎先輩が私に触った!?
「しかもけっこうな強い力っ。いたたた!」
先輩は私を連れ立ち、グングンと廊下を進む。やってきたのはバスルーム。
ガシャンッ
荒っぽくバスルームの扉を閉めた先輩は、正面から私と向き合った。いつもより磨きがかかっている冷徹な顔。やっぱり先輩、機嫌が悪そう。いったい何に怒ってるの?
「さっきのセリフ、俺の方だから」
「え?」
「このシミ――〝どうかしましたか〟?」
「!」
先輩の長い指が、私の脇腹あたりのワンピースをなぞる。あぁ、そう言えばジュースを零して服が汚れたんだった。スッカリ忘れてたよ……。
「ん?」
なんか、お腹のあたりがモゾモゾする。不思議に思って見ると、先輩の指。あれ? さっきまで違うところにあったよね?スタートはオヘソあたり。そこから上に、ツツツと移動している。
「な、んか……くすぐったい、ですっ」
「アンタは質問に答えるだけでいい。それ以外の発言は禁止」
「ええ……っ」
カメより遅く。だけどカタツムリよりも早い動きで、先輩の指が私の体を移動する。体の内側からジワジワ来る何かに反応して、変な汗が出てきた。
「ちょ……待って、先輩!」
ピタッ
「ここで止まっていいの?」
「え、」
「いいの?」
「……っ」
私が「ストップ」と言った場所。それは、ちょうど下着のワイヤー部分。
「アンタが指示すれば、ここから右でも左でも行くけど?」
「な、……っ」
ようするに右のバストと左のバストどっちにする?、って事⁉
「へ、変態ですよ、先輩! 一体どうしちゃったんですか!」
胸の前で、両手をクロスする。完璧なガード!だけど先輩の指は逃げることなく、私の腕に挟まれ、なおかつワイヤーに引っかかっていた。それにより、さっきよりももっと指の存在を認識しちゃって……カッと顔が赤くなる。
「早く質問に答える。このシミは?」
「こ、れは……ジュースを、零しちゃって」
ツツ……と、先輩の指が右斜め上に向かって動いた。ビクンと、思わず体が反応してしまう。
「やぁ……っ、な、に?」
「もっと詳しく話して。誰からもらったジュースを零したの?」
「そ、れは……」
喋りたい。喋りたいのに、先輩の指に意識が集中しちゃって口が動かない。頭が真っ白になる。
「頬もワンピースも赤く染めちゃってさ。下着もスケスケ。――あぁ、そっか。俺にこうされたくて、わざとジュースを被ったとか?」
「ち、が……っ」
やっぱり先輩がおかしい。さっきまではツンケンしすぎて怖かったけど、今は――
「昨日は〝キスして〟なんて言ったくせに、今日は俺を〝変態〟呼ばわりなんて。本当、アンタって勝手だよね」
「……っ!」
蔑まれた目で見られて、ひどい言葉を浴びせられて……だけど、そんな先輩から目が離せない。人の話を聞かない先輩の「強引な行為」に、どうしようもなく胸が高鳴る。あぁ、やっぱり先輩って怖い。
クズすぎるくらいクズなのに離れられない。むしろ、どんどん惹かれてしまう。沼にハマって抜け出せない。
そうか。
先輩は底なし沼なんだ。
だから私は、先輩が怖いんだ。
このキケンな沼から、もう抜け出せないと知っているから――
「ねぇ凪緒。またキスしてほしい?」
「そ、れは……っ」
そんなの、答えは決まってる。先輩だって私が何を言うか分かってるくせに、
「ふっ。それは?」
こんな意地悪な顔して笑うんだ。
「キス……、してっ」
プライドも何もかも捨てて、ただキスをねだる私。だけど、顔を赤くした私に先輩が言う事は……。
「じゃあ〝ごめんなさい〟って言えたらね」
「ふ、ぇ……?」
ん?
なんで謝らないといけないの?
私、なにか悪い事した?
という気持ちが顔に出ていたのか、先輩の顔に影が落ちる。かと思えば、今までゆっくり動いてた指を、いきなり素早く上へと走らせた。
スッ
「ひゃうっ!」
その刺激は、私にとって息苦しいほどドキドキするもので……。体の熱がどんどん上がり、のぼせていく。
「こんな事でへばらないで。次は左だからね?」
「~っ!」
こんなの、もう限界――
ガクンッ
力が抜け、体がシャワー台にぶつかる。その瞬間レバーも動いてしまったようで、
キュ、シャアァァ
いきなりシャワーが出てくる。しかも、ヘッドは私の真上。
しまった、このままじゃ水が――!
冷水に備え、とっさに目をつむる。だけど、
「……あれ?」
覚悟していたのに、いっこうに濡れない私。不思議に思って見上げると……すぐ上に、先輩の顔。しかも、薄茶色の髪の毛からポタポタと水滴が垂れている。
「先輩……?」
腰に回った大きな手。濡れない私。なんと先輩は冷たいシャワーから守るように、私を抱きしめていた。
「どうして……、っ!」
ジワジワ先輩の服が湿っていく。背中に手を回すと、ビックリするくらい冷たかった。いくら六月と言えど、このままじゃ風邪ひいちゃうよ!
「先輩、服を脱いでください! そしてお風呂に入ってください! 体を温めないとッ」
「…………ふぅ」
「先輩?」
アンタのせいで濡れたんだけど?とか言われるかと思ったのに、先輩から漏れたのは吐息だけ。
「シャワー止めて」
「でも、これからお湯が、」
「いらない。これから俺も同席する会議があるから、このまま行く」
「えぇ⁉」
このままの状態で⁉
すると本当に先輩はびしょ濡れのまま、バスルームを後にした。濡れた手でスマホを触り、電話で「マンションに車つけて」と誰かと話している。
えぇ、先輩。
まさか本当に、そのままで行くの?
ピッ
「じゃあ先輩、車が来るまで、せめて髪だけでも乾かしましょ!」
おいでおいでと手招きするも、ふいと顔をそらされ、まさかのスルー。そしてバスタオルを手にして玄関へ。濡れた足もそのままに、靴を履き始めた。いくら何でも雑すぎますよ、先輩……。すると私に背中を向けたまま、先輩がポツリとこぼす。
「水をかぶって良かった。頭が冷えた」
「え……?」
「さっきの、忘れといて」
バタンッ
雨降りの日みたいに、ビシャビシャな玄関。それと同じく、ビシャビシャになっていく私の心。
「〝忘れといて〟って……。さっきのバスルームの事だよね」
顔が濡れてるのは、先輩の髪から落ちた水滴か、それとも私の涙か。……まぁ、ちょうどいいや。ジュース被った後から、ベタベタして気持ち悪かったし。濡れてるついでに、早めのお風呂に入っちゃえ。
キュ、シャアァァ
ほら、もう湯が出てる。先輩って、本当にせっかち。少しでも浴びて、温まって行けばいいのに。
「……一人だと、広すぎるお風呂だなぁ」
ついさっきまで、ここに先輩といたんだ。二人きりで。
――ここで止まっていいの?
――またキスしてほしい?
「あんな事いってたのに、先輩ったら……」
――さっきの、忘れといて
「本当にクズ男だ……っ」
日常では、私にツンケンした態度をとっておきながら。そういう行為の時だけ、甘い顔を見せ優しい声になる。だけど再び日常に戻ったら、一言「忘れて」と。幸せな時間をなかった事にされる。
「やっぱり先輩は、そういう行為が好きなだけで……私のことは何とも思ってないんだね」
本当はね、今お風呂に入りたくないよ。だって、さっき先輩がくれた感触をずっと覚えていたいから。お風呂に入ると、それが消えてしまいそうで。本当に、なかった事になりそうで……嫌なの。
「先輩の、バカ……っ」
一人で寂しく入るお風呂。もちろん、お風呂を終えても広い部屋に一人きり。さみしい。虚しいよ……。
「はぁ。……あれ?」
お風呂から出て、キッチン台にポツンとあるボールを見つける。次にボールの近くには、おかゆを作ろうと準備した鍋と、その中に入った(先輩がシュートした)ペットボトル。
そういえば笹岡が「連絡先をラベルに書いた」って言ってたっけ。ペットボトルをグルグル回し、らしき場所を探す。だけど、一向に見当たらない。よくよく見ると、一か所だけラベルが破れていた。きっと、ここに笹岡の連絡先が書いてあったんだろうな。なんで破れてるんだろ。
「つぎ笹岡に会ったら、謝っておこう……」
ボールへ目をやると、中には笹岡のジュースと牛肉が混ざっていて……思わずため息。先輩のためにお昼ご飯を作ろうと思っていたのに、まさか一人きりになるなんて。
「このお肉、食べられるよね? 一人で暇だし、お料理をしようかな」
髪をバスタオルで拭きながら、スマホでレシピを検索する。お風呂から上がってしばらく経つというのに、また所々、体が熱い。その原因が「先輩に触られたから」と分かるまで、時間なんていらなかった。
𑁍𓏸𓈒
「響希様、どうなさいました?」
「……なにが」
「今まで頬が女性の手の形に赤く腫れる等、そんな事はありましたが。まさか全身ずぶ濡れでいらしゃるとは。初めての事でビックリしております」
長さのある黒い車。その中で話す、長い髪を一つ括りにしている男性と城ケ崎先輩。
「新しいスーツ、良く似合っておいでですよ。お店の方が好意で髪を乾かしてくださって良かったですね」
「半ば強制でしょ、あんなの。商品が濡れたら大変だし、上客に良くしたら売り上げ倍増だし。善意だけで俺を思うヤツなんて誰もいないよ」
そりゃそうかもしれないけど――と。冷たい言い方をする先輩に、男性は乾いた笑みをこぼす。
「金持ちの子って、どうしてグレるんですかね」
「小さい頃から世界を見るからね。良い事よりも、悪い事を多く吸収しちゃうんだよ。だから金持ちで純粋なヤツなんて、この世にいな、い……」
その時、先輩がピタリと止まる。そして「ある物」へ目をやった。
「へぇ、おやおや」
「……なに」
「どうやら〝いる〟みたいですね。金持ちだけど純粋な子が」
家を出る時に持ってきた婚約指輪。それがはまっている左手を見る先輩を、男性はニヤニヤした目で見つめた。
「びしょ濡れの件が凪緒様と関係しているのかは知りませんが、ほどほどにしてくださいよ? 響希様は、怒ると鬼のように怖いですから」
「……うるさい」
先輩が怒りをこめて、手を強く握る。すると中から「グシャリ」と音がした。
「ん? 何か持たれてますか?」
「……何でもない。ただのゴミだよ」
そう言って、ポケットの中におさめる先輩。そんな先輩を、男性はニヤニヤしながらミラー越しに眺めるのだった。
𑁍𓏸𓈒
「よし、出来た! いいお肉になったよー」
お昼からずっと煮込んで、現在午後七時。煮込んだお肉が、舌で噛めるまで柔らかくなった。
「白だしで和風の味付けにしたけど、どうかなぁ」
もう何度も味見したけど、火を切った後に味が変わる事もあるから……。どうか、このまま美味しい牛肉でいてくれますように!
ピンポーン
「ん? こんな時間にお客さん?」
インターホンの液晶を見る。すると、
『凪緒様、こんばんは。お届け物がありまして……ちょっとよろしいですか?』
長い髪を一つにくくり、猫っぽい顔をした男性。この人って、確か……。
「城ケ崎先輩の秘書さん?」
『そうです、安井です』
「安井さん! 今あけますね」
しばらく待つと「安井です」と玄関先で声がする。何も思わず開けると……
「えぇ、城ケ崎先輩⁉」
安井さんの肩をかりている、脱力した先輩の姿。顔は下を向いて、足元はおぼつかない。
「まさかお酒……⁉」
「ではなく、どうやら風邪らしくて」
「え、」
風邪⁉
出て行く前は、あんなにピンピンだったのに!……いや。ピンピンっていうより、ビショビショか。
「安井さん、ここまでありがとうございました。先輩の自業自得なんです、あんな恰好で出て行ったから」
「……」
「安井さん?」
キョトンとした顔で私を見る安井さん。かと思えば「寝室まで運びますね」と提案してくれた。良かった、ありがたい!
ドサッ
「会議中は何とか気張ったみたいですが、車に乗った瞬間に座席からズルズル落ちまして。見たら顔が真っ赤だし、額も熱いしで……珍しいですよ、響希様が風邪なんて」
「珍しい?」
「自分第一な人でしょう? 損する事は絶対にしないんですよ。頬を叩かれるならまだしも、水をかぶるなんて……。今までの響希様からは考えられません。一体どなたが、響希様を変えてくださったんでしょうね」
「!」
確かに先輩は、冷水から私を守ってくれた……。
で、でもでも!
先輩ったらヒドイ事を言ったんだよ?
複雑な顔をして俯く私に、安井さんはクスッと笑った。
「しかし、凪緒様が響希様の言いなりじゃないなら安心しました。どうかこの先も、振り回してやってくださいね。響希様にとって良い薬になるはずですから」
「薬?」
「ふふ」
すると安井さんは「さて」と立ち上がり、素早く玄関に戻った。
「風邪に効く食べ物を買ってきます。凪緒様、何かリクエストはありますか?」
「えと……」
一通りの薬はある。だけど果物とかあった方がいいよね。あ、でも……。
「安井さん、ありがとうございます。だけど、私が自分で行きます」
「え、」
「先輩のこと……、私が一人で頑張ってみたいんです」
「!」
安井さんは驚いた顔をした。だけど「なるほどね」と、寝室にいる先輩をチラリと見る。
「〝善意だけで俺を思うヤツなんて誰もいない〟なんて夢のない事をおっしゃっていましたが……ふふ」
「……安井さん?」
「いえ、何でも」
安井さん、上機嫌だ。安井さんって猫のような顔をしているから、今にもゴロゴロと、喉の鳴る音が聞こえてきそう。
「あ、長々とすみませんでした。それでは失礼しますね」
「ありがとうございました、安井さん」
「とんでもないです。何かお困りごとがあれば、この番号におかけくださいね。では」
バタンッ
スマートに私に名刺を渡した安井さんが帰り、家にいるのは弱った先輩と私のみ。お昼は先輩のクズさに心折れかけたけど……でも、苦しんでる先輩を放っておけない。早く元気になってほしいよ。
「……よし、やりますか」
先輩が寝ていることを確認し、ついさっき外したエプロンを再び装着。そして十五分後――寝てる先輩を起こさないよう、ノックをせずに中へ入る。見ると、顔を赤くした先輩はまだ寝ていた。
「はぁ、はぁ……」
わぁ、すごい汗。冷たい湿布を貼る前に、タオルで拭かなきゃ。その時、先輩の手がビクッと反応した。かと思えば、ゆっくりと目が開く。
「ここ、は……?」
「お家です。先輩と私の」
「……スマホ、あとタブレット」
ん? 会話成立してる?
しかも、なぜそんな物を要求するの?
あ、まさか先輩……!
「こんな状態で仕事しようとしてます?」
「どんな状態でも……しなきゃいけないのが、仕事なんだよ」
って高校二年生に言われても、まったく説得力がないよ!
タオルを取りに行く暇はないので、テイッシュで先輩のおでこを拭う。そして冷たい湿布をぺたりと貼った。
「剥がして、うっとうしいから……」
「ねぇ先輩。先輩は今、風邪なんです。風邪の時の最優先事項は〝治す〟ことです。それともアレですか? 先輩が持つ風邪菌を、社内に広めたいんですか?」
「そういう、わけじゃ……」
「なら寝る。先輩のやるべきことは、それだけです」
「…………はぁ」
観念したのか、ベッドについていた肘を伸ばし、再び横になる先輩。おぉ、私の言う事を聞いてくれた! 風邪の時、人は弱るというけど本当なんだ。
「先輩、薬を飲みましょう。だけど、その前に少し食べてください。おかゆ作りましたから」
「……いらない」
「早く仕事に戻りたいなら、薬は一番の近道ですよ?」
「……飲む」
おぉ! また素直!
なに、なんだか怖いんだけど……!
弱った体をのそりと動かし、私の作ったおかゆを素直に食べる先輩。なんか、いいなぁ。
「……ん。これって」
おかゆを食べていた先輩の手が止まる。スプーンの中にあったのは、茶色の食べ物。ふっふっふ。小さく刻んだのに気づくことは、さすが先輩。
「先輩がジュースを注いでくれたおかげで、随分と柔らかくなりました。きっと栄養になると思って入れさせていただきましたよ、牛肉」
「……ごちそうさま」
カチャンと、食器を置いた先輩。こらこら何してるんですか、まだ半分も残ってます。
「元気になりたいんですよね? 牛肉は元気になる食べ物の筆頭らしいですよ?」
「……じゃ、食べさせて」
眉間にシワを寄せて、さも「嫌そう」な顔をする先輩。え、「あーん」だったら食べてくれるの? やった、ラッキー!
「にしても先輩が牛肉嫌いだったとは。驚きです」
「牛肉が嫌いなわけじゃない。嫌いなのは……」
「……」
「……何でもない。早く食べさせてよ」
ちっ。またオアズケか。先輩が本音を言おうとすると、頭の中のセンサーでも鳴るのかな? いつも直前で黙秘されちゃう。
「じゃあ、いきますよ。アーン」
「……ん」
ぱくっと、牛肉を食べる先輩。よしOK。おかゆを完食した後、薬をシートから出す。先輩にとって、念願の薬の時間だ。
「錠剤……」
「まさか〝嫌い〟なんて言いませんよね?」
「……粉よりマシってだけ」
それって「嫌い」って言ってますよね?高校生にもなって錠剤がのめないって……なんだか子供みたい。
「はぁ、起きとくのダルい……横になる」
「ちょ、肝心な物を飲んでもらわないと治るものも治りませんよ?」
「むり……」
どうやら、先輩の体力が切れたらしい。しかも満腹になったからか、瞬時に寝てしまった。えぇ、寝つきよすぎ……。病人が寝るのはいい事だけど、薬を飲んでくれないと。
「はぁ、はぁ……」
「……このまま放置しておけません。先輩、覚悟してくださいね」
息荒く呼吸する先輩の口に、決まった錠数の薬を入れる。水は……私が飲んだ。そして――
「んっ」
「……ごく、っくん、――っはぁ」
口移しなんて、先輩が知ったら怒りそうだけど……仕方ない。この方法しかなかったんだもん。だけど水を飲んでくれたから良かった。薬が効けば、少しは楽になるよね?
「お大事にしてくださいね、先輩」
お盆を持って、部屋を退室する。いや、しようとした。だけど――
パシッ
「!」
寝転んだままの先輩が、腕を伸ばして私を捕らえた。掴まれた手がとっても熱い。先輩の高熱により、どんどん熱さが伝染する。私の頬が、赤く染まるほど――
「ねぇ、先輩」
「……」
「呼び止めてくれて嬉しいです……だけど、今は離しますよ?」
「スー……」
先輩は、目を瞑ったまま。きっと寝ぼけてるんだね。そろりと先輩の手を離す。すると、先輩の口がパクパク動いてる事に気付いた。
ん? なにか喋ってるのかな?
耳を近づけると……
「ぎゅう、にく……」
「へ?」
息荒く、何を言うかと思えば。先輩が言ったのは「牛肉」。さっきムリヤリ食べさせたこと、根に持ってる……⁉
「忘れろって……言った、のに」
「え……」
牛肉を忘れろって……なに? あ、もしかして。ペットボトルを私に投げたことを申し訳ないと思ってるけど、素直に謝れないから、記憶から消してなかった事にしろって事?
「やり方が卑怯ですね先輩。私、忘れませんから。正々堂々と謝ってくれるまで待ってます。だから……早く元気になってくださいね」
「スー……」
「って、聞こえてるわけないか。お大事に」
パタン
「は~……」
なんか、色々あった部屋だった。色んな事が起こった時間だった。今日の事を、先輩は覚えてないだろうな。風邪が治ったら、いつも通りクズで冷徹な先輩に戻ってるだろうな。
さっきの素直な先輩は、しょせん甘い夢。
だけど私……、嬉しいの。
「先輩は熱のとき素直になる……か。新情報ゲットしちゃったっ」
へへへと、笑った後。寝室の前から離れる。
そうだ。今のあいだに、お買い物に行こうかな。うん、そうしよう!
――と、忙しくなく動く私。
だからこそ、気づかなかった。
「〝新情報ゲット〟か……。おめでたいやつ」
本当は起きていた先輩が、私が部屋の前から去った音を聞いて目を開ける。その時、車の中で安井さんと話した会話を思い出した。
――善意だけで俺を思うヤツなんて誰もいないよ
――金持ちで純粋なヤツなんて、この世にいない
スッ
天井に向かって左手を上げる。その時、きらりと光ったのは婚約指輪。
「……」
先輩はおもむろに、近くに掛けてあったスーツに手を伸ばす。目的はポケットの中。その中を探ると、スーツのボタンよりも小さい「何か」が出て来た。
ガサッ
先輩の手の中にあるもの。それは、ペットボトルのラベル。そこには、私が探していた笹岡の連絡先が書いてあった。そう。ないと思っていた探し物は、先輩が持っていたのだ。その理由は――
「ペットボトルも牛肉も……貰った奴のことなんか忘れたらいいのに」
すると、ちょうどその時。
ガチャ、パタン
買い物に行くため、私が玄関のドアを開閉した音に気付いた先輩。時計は、午後八時をさしている。
「……あのバカ」
そして数秒後、私のスマホが鳴る。電話の向こうで、先輩の「帰ってこい」という恐ろしい声に怯え、私はシッポを巻いて戻って来たのでした。
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