第二十八話 幕間
――リーナの反応が段々よくなってきている。
逃げるように去っていったアンリーナの反応を思い返し、アルノエルは目を細める。歓喜で笑ってしまいそうな口を手で押さえるが、完全に抑えきれず、口から「ふふ」と笑い声が漏れていく。彼女を早く手にしたいという「独占欲」が段々と増していくのをアルノエルは感じ取った。もう抑えることが出来ない欲求。
入学式で自身に恐れることなく対等に会話をしてくれたアンリーナにアルノエルの心は一瞬にして奪われた。一目惚れである。
今の今まで誰かを好きになるという経験がなかった中で突如浮かび上がった欲望にアルノエルは混乱した。アンリーナとの会話中動悸が激しいことに気づきアルノエルは最初、心の病気かと疑いながらもアンリーナに気づかせるわけにはいかないと必死に平然とした自身を偽った。そしてアンリーナと別れ、召喚獣と出会った後アルノエルは医務室に向かいアンリーナの名を伏せ己の中の異常を教員に話した。
『それはいつからなり始めたものですか?』
『……ある女性に出会った時から、かな?』
『なるほど……それは恐らく一目惚れですね』
『――え?』
『恋です』
知らされた欲望の正体にアルノエルの心は衝撃を受け同時に納得していた。対等をずっと求めていたアルノエルにとって、初めて対等の存在で話してくれたアンリーナ。惚れてしまうのは必然だろう。アルノエルは寮に戻り思考を巡らせる。どうすれば彼女を傷つけることなく、手に入れることが出来るか。アルノエルの中には独占欲が芽生えていた。そして彼は、惚れた相手には独占欲を抱くものと思い込んでしまった。――恋愛をしたことがない、知らない故に起きてしまった勘違いである。
思考を巡らせ続け特に名案を思い付くことが出来なかったアルノエルは様子を見てから考えをまた改めよう。と決めた。それからアルノエルは今の今までアンリーナを見守っていた。――あの毒殺未遂が起きるまでは。
段々と呼吸が小さくなっていくアンリーナ。真っ青を通り越して真っ白になっていく顔色。医務室に連れていきベッドで寝かせ様子を見るが顔色、呼吸は元に戻らず逆に悪くなっていく。明らかに異常な出来事に、アルノエルはアンリーナに関わっていた女子生徒達へ問い詰める。「爪に毒魔法をかけた」――倫理観のない返答が来た。
今までは様子見を続けていたが、このまま何もしなければアンリーナは殺されてしまう。そう思い立ってしまえばやることは一つ。彼女の害になるであろう人物を排除し、彼女を己の身近に置くように距離を詰め、好きにさせる。その行いが暴走気味になっていることにアルノエルは気づかない。誰も指摘する人がいないので気づくことが出来ないのである。
【改稿中】前世悪役キャラは女神の怒りを買いTS転生されました~召喚獣&魔力で人生が決まる世界で彼女は人生を謳歌しようとしたが、どうやらここはゲーム?の世界らしい~ 蒼本栗谷 @aomoto_kuriya
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