第八話
「ッ!? ッッッ!? なんっ……貴方は誰!?」
「誰って、今言いましたよ? ボクは白狐のシロコさん。ご主人様の召喚獣です」
表情をころころと変化させていく目の前の男にアンリ―ナは動揺が隠せない。男、シロコはアンリ―ナの問いかけに答えてから部屋を見渡し「先に掃除しません? 埃は健康に悪いんですよ」と心配そうに眉をへの字にした。
アンリ―ナはそんな事よりも目の前の存在を見極めなければいけないと、いつでもシロコに反撃が出来るように魔法を発動出来るように体制を整える。
「しょう、かん、じゅう……。い、いいえそんな話信じられませんわ! 貴方が召喚獣だと言う証拠がないじゃないですか!!」
「ご主人様
そう口にしシロコは獣の耳と尻尾をぴょこんと体から生やした。それはアンリ―ナが召喚したあの獣と同じ耳と尻尾。
そこでアンリ―ナはこの部屋に来てから己の召喚獣の姿を見ていない事に気づいた。姿が見えなくなったあの獣と同じ時に姿を見せたシロコが同一人物……同一召喚獣なのはほぼ確定だったが、アンリ―ナが信用するにはあと一歩足りなかった。まだ自分を召喚獣だと錯覚している精神異常者の可能性はないとは言いきれなかった。
——どうする? どうする。安全を取るべきか、危険を承知に突っ込むべきか。アンリ―ナなら、アンリ―ナなら……信用、するか。少なくともそういう善人として振る舞ってきたし。
「えぇ、そうね、それは確かに人にはないわね」
「狐さんなので」
「その、狐? 白狐って何なの?」
「狐は狐です。コーンコン! ですが、普通の狐ではなくボクは神の使いの神聖マシマシ白狐さんなのです」
手を合わせ
アンリ―ナはシロコの言葉にじとっとした目で見る。そして困ったような演技をして疑問を口にした。
「その普通の狐と神の使いの狐と何が違うのかしら。そもそも私は普通の狐というものを知らないの」
「野生と神に選ばれた特別な存在みたいなものです」
「はぁ、そう、なの」
——神に選ばれた
シロコの言葉に内心で当てはまる事を思い出す。それと共にシロコの神とやらが自分が知っているクソ女かもしれないと思い至る。
「クソ女って、そんな言い方をしてはいけませんよ。可愛い顔をして心が真っ黒なんてよくある事ですが黒さ具合が闇ですね」
「……え?」
——は、まて、まて、今言葉に出してなかったはずだ。アンリ―ナとしてもその言葉を言うはずがねェ!!!
「狐さんなので。化け狐ってある所では言われてたりします。つまり心が読めます。ですがご安心を! ボクはご主人様が召喚したシロコさん! リダー様から『あの無礼不謹慎人間に授けたくないけど規約は規約だから貴方を送りますっ!!! いやですよ! いやですよ! 魔法翻訳機能渡したのですからもういいと思ったんです! でもパイセンが、パイセンから暴走した責任を取りなさいと言われたんですその無礼人のせいで』と言われ来ました」
心が読める発言より、その後に発された発言にアンリ―ナの意識は怒りに満ちた。善人でも少女らしくない歪んだ顔付をしてアンリ―ナは演技をやめ怒りを顕わにした。
「……は? それはお前が俺の話を聞かねぇせいだろうがやっぱてめェは駄目神だなァ!!!」
「ボクに言われても困ります」
シロコはやれやれと言った様子で正論を口にした。
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