第三話
魔力量が膨大じゃなければ絶対に召喚出来ない聖獣を召喚した事で有名なディナルド家。彼らの価値は高く、凡人が話す事は出来ないと言われる程の家の出身であるアルノエル。彼から語られた「誰も対等で話してくれない」という言葉にアンリ―ナはそりゃそうだろうよ。と記憶から引っ張り出してきた情報に冷静に思った。
無価値な人間が価値ある人間と対等に話す――たったそれだけで処刑されても可笑しくない世の中。危険と分かっていながら行動する馬鹿はいない。
だがアンリ―ナはここぞとばかりに対等にアルノエルと話す。
——使えるもんは使わねェとなァ。情報こそ最大の武器……とか言うだろう? あるとないとじゃ全然ちげェ。
学園に入学し、召喚儀式が始まるまでは皆対等な人間となる。その規定をアンリ―ナは最大限利用する。
召喚後にある「召喚前に俺に不敬な事をした愚か者」と面倒な事になるのは流石にアンリ―ナ自身も避けたいが、アルノエルはそんな事はしないと会話で軽く分かったので遠慮なく話す。
「そうだ、リーナは沢山の事を知ってるいるけど。どうしてそこまで沢山の事を知っているんだい?」
「ひ・み・つ」
「秘密なのか……じゃあ聞かないでおくね」
「ふふっありがとうノエル」
「秘密は誰にだってあるからね。そういう私だって秘密があるからさ」
「ええ、誰にだって秘密はあるもの」
微笑ましく会話していると、周囲から数多の視線をアンリ―ナは感じた。いかにも高貴ですと言った美青年王子顔と二人きりで会話をしている状況は周囲の人からすればとても目につくらしい。
アンリ―ナは数多の視線に居心地の悪さを感じているというのに、アルノエルは全く気にする様子はなく嬉しそうに楽しそうに話しかける。
——ここで話せる状況じゃねェからな。禁止されている魔法を使って情報収集しているなんて。深堀されなくて助かる~~~こればっかりは善人のこいつに救われたわ~~~いや~~~しかし、こいつよく今まで利用されずに済んでたな??? こいつ多分というか確実に純粋だよな? 面剥がれてからすっげェ返事がふわふわしてんだけど。
内心で長文を呟くアンリ―ナ。初対面時の気を貼っているような真面目な雰囲気から、少し話しただけで現れたアルノエルの反応。アンリ―ナの言葉全てに利用されているかも……なんて微塵も思っていない素直な反応に、アンリ―ナが俺が逆に利用されている??? と不審に思う程にアルノエルは純粋だった。
「全員揃っているな!!!!! これより開会式を始める!」
「あ、始まったみたいだね」
「そうね」
突如耳に入り込んだ大声。視線を向けると入学が行われるホームの前方、高台に乗った男性が魔法を使ってホーム内全員に語り掛けていた。
——反響魔法か……アァ、やっぱりあれも俺の所と似た仕組みになってんな。じゃ、覚えなくてもいいな。
前世で暇だからという理由で一部を除く魔法以外を覚えた利点がここにきて芽が開くとは、アンリ―ナは産まれた当初全く思わなかった。
だが前世で覚えた魔法が使える事ができ、更にこの世界の魔法は前世と限りなく近い仕組みをしていた。
それに気づいたのは家族が魔法を使っていたのを目撃した日だった。洗濯物を乾かす、暖房や冷房、掃除等の主に日常で使われる魔法。それを見た瞬間その魔法の仕組みが理解出来た。
すぐに魔法の仕組みが理解出来た事にアンリ―ナは心当たりがあった。——女神に提示された選択肢の一つにあった転生特典。恐らくその特典のおかげで瞬時に理解出来たのだろうとアンリ―ナは納得した。
男性の使う魔法に目を凝らし、解析を終えたアンリ―ナは話を取りこぼさないように集中をした。
「この後12時から行われる召喚儀式、そこで貴様らの運命は確定する! 私は貴族だ、貴様らのような凡人じゃない?? なんて事が言えるのはここまでだ。大事なのは貴様自身の価値!!!! いくら親が貴族だろうが貴様が無価値であれば貴様はゴミだ」
——辛辣~~~~。そういえば、これは一部の人間からすれば下剋上なのか。ここで強い召喚獣を出せれば一躍人気者、貴族となる。逆に弱い召喚獣を出せば貴族だろうがそれは奴隷となりえる……意外と考えてんだなァ。
前方で声高く語る男性を見ながらアンリ―ナは感嘆の息を吐いた。
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