カキネ村編 檻の外
俺たちがあいつを倒した後、他の子たちが、あいつの能力の制限から解放されたらしく動き出した。「ありがとう」とか、「かっこよかった」とか、みんなが褒めてくれたり、「俺たちのロープも頼む」と言ってくる子もいる。「ああ、待っててくれ。みんなのロープもすぐに燃やすから」そう言ってみんなのロープを燃やしていく。
「この後どうする?」と俺が聞くと、外に出て逃げるべき派と、教会に捕まったふりをして籠城し、大人たちが敵を倒すまで隠れるべきだという派に分かれた。そこで俺は、「俺が外に行って状況を確認してくる。大人たちの助けになったり、俺だけ外に出られたって感じで行けば、教会にいる子たちは捕まったままだって思われるだろうし、色々と頑張ってみようと思うんだ。うまく行けば、安全に逃げられる道も分かるかもしれないし」と伝えると、アンセムが「危ないですよ!行くなら僕も行きます!」、ハイネが「俺も行くぜ」と言ってくる。
「ダメだ!それじゃ教会の子が逃げ出したことがバレる。それに、二人とも隣村の子だろ?土地勘がある俺一人で行くのが適任だ」と言うと、二人は何とか言い返そうとするが、言い返せず、こちらを見る。「安心しろって。やばくなったら俺が作った秘密基地に逃げる。そこは村の誰も知らない見つかりにくい場所だからさ。それに、教会の奴らを頼むぜ!」そう言うと、二人はしぶしぶうなずく。
「みんなもそれでいいか?」と聞くと、「すまないが頼む」、「さっき救ってくれたお前なら安心だ」と声が返ってくる。それに満足した俺は「行ってくるぜ」と言って行こうとすると、「私も行くね!」とヨルが言ってきた。その言葉に言い返そうとすると、ヨルが話す前に、「さっきの話に私は含まれないでしょ?土地勘もないし、教会の話も関係ない。私の意能力でホムラ君の影に入っていればいいじゃない!」と言う。「でも、危ないだろ!」と俺が返すと、「ホムラ君も同じじゃない。私はお姉さんなの。黙って守らせなさい」と言われ、ヨルの目を見て、ここに置いていくのは無理だと察した俺は、「わかった」と力なく答える。「うん、じゃあ潜るね」と言い俺の影に潜るヨル。
「じゃあ行ってくるぜ」ともう一度みんなに言い直し、ドアを開けた。すると、そこには地獄が広がっていた。いつもの村が赤黒く燃えている。みんなで耕した田んぼや家が燃えている。「なんだこれ……」と声が漏れるが、返事はない。俺は最初の目的を忘れ、走り出した。家族のみんなが無事かどうか、それだけしか考えられず、駆け出す。
すると、何かに躓いた。こんなところに躓くものなんてないはずだが、よく見ると、今日「おめでとうさん」と声をかけてくれたおっちゃんが倒れていた。「おい、大丈夫かよ!」と声をかけるが、返事はない。「おい!おい!おい!」何度声をかけても動かない。理由はわかっていても、頭が、心が、理解が、追いつかない。「くそ、なんでだよ?朝はあんなに元気だったのに……なんで……」もう、死んでいた。
俺は何も考えられず家族のもとに走った。「くそー!!」と叫びながら、いくつもの死体を目にしたが、それに反応する心はもう残っていなかった。そして、俺は見つけた。家族を。生きてる。良かった。安心感が戻ると同時に、俺は茂みに隠れる。三人の敵が家族や自警団と戦っているのが見えた。明らかに敵らしき奴が三人倒れており、恐らく死んでいる。でも、村の自警団は12人いるはずなのに、今見えるのは4人しかいない。あいつらにやられたのか。
自警団のみんなは、後ろの集会所を守るように戦っている。恐らく他の皆を避難させているのだろう。理性で考えている自分を少し怖く感じるが、今はそれでいいと落ち着く。「リーダー、こいつら面倒くせぇよ。早く殺してぇよ」と、敵の一人が言った。その言葉と共に、「リーダー」と呼ばれた奴が舌打ちをし、そいつの顔面を殴りつける。筋肉の塊のような一撃がさっきのガリガリの奴の顔を貫く。正気じゃない。わけがわからない。
リーダーが「なら、お前がやれ。俺に指図するな」と言うと、「へいへい、頑張りますよ」と、殴られ死んだと思われた奴の顔が元通りに戻っている。何だあれ?あれも意能力?こんなことができるのか、意能力ってやつは……そんなことを考えていると、とぉちゃんが「ふざけるのも大概にしろ!この村から消えろ!そして、子供たちを返せ!」と叫んだ。
するとリーダーが「すまねぇな。俺も本当はこんなことしたくねぇんだがよ。仕事なんだよ。あの子供たちを欲しがってるお偉いさんがいてな。それでなんでも言うこと聞くようにして送れって言われてるんだよ。面倒で仕方ねぇ。だからよぉ……早く死んでくれ」と言い、戦いはさらに激しくなった。
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