カキネ村編 巨悪の檻
まず俺たちは、あの女が寝静まるまで待っ た。そう時間はかからなかった。「よし、寝 たな」静かに二人に確認する。「ええ、みた いですね」「そうね」と返ってくる。「まずは どうする?意能力を確認しないか?」 そう 伝えると、「そうね、私は多分、影の中に潜 るような能力だと思う。まだ使ったことがな いから感覚的にしかわからないけど」 「すご いですね。僕は、思ったところに道を示す ナビゲーション的な能力みたいです」「すごいじゃない。ホムラ君は?」 とヨルが聞く。 「俺は火を出せる能力だと思う」「すごいじ ゃないですか! それでロープを燃やすことは できないですか?」 「試してみるか。でも、 あいつが目を覚まさないか?」 「確かにそうですね。どうしましょう」
その時、トントンと肩を突かれて、ビクッと してしまう。「悪い、ビビらせるつもりはな かったんだ。俺の意能力が使えるかもしれな いと思って」ハイネが俺たちに話しかける。
「協力してくれるのか?」 そう聞くと、「あ あ。俺がお前らを縛ったんだ、解くのを手伝わせてほしい」と自罰的な目で話す。「なら頼んでもいいかな」 ヨルがそう話す。「あぁ、任せてくれ。俺は一部の空間を透明に する力だと思う」「その力でホムラ 君の火とロープを 透明にしている間に燃やす ということですね」「アンセムが言う。「なるほどな、ならやってみるか。頼む、ハイネ」
そう伝えると、ハイネが力を込めて集中し、 ロープのつなぎ目あたりが透明になる。すげぇ!そう見ていると「早くしてくれ、ホムラ。これ以上は持ちそうにない」 「わりぃ」 そう言って意識を集中させる。ロープに火を... 燃えろ燃えろと 念じると、小さな火が灯った。しかし、燃えない。「なんでだ!」 思わず声が少し大きくなり、慌てて抑える。「頑張れホムラ君、絶対にできる」その言葉に勇気づけられ、 より強く念じる。火なら燃やせるはずだ。いけぇー! するとロープの先端が燃えて、消える。「すごい」「やったな」「信じてた」と返 してくれる言葉に嬉しくなる。「よし、この 調子でみんなの分もやろう」その後、スム ーズに全員のロープを燃やすことに成功する。この火は不思議で、人は燃えず、ただ 暖かく感じるだけだった。もしかしたら、燃やしたいものだけを燃やせる火を出せる 能力なのかもしれない。そう思い、木片を燃やそうしたが燃えることは無かった。
「これで攻撃は無理そうですが、敵は知りません。この能力で脅すことはできませんか?」とアンセムが聞く。「いや、無理だろう。あいつの能力を思い出せ。あいつが言葉 を放つだけで俺たちの自由は奪われた、だからそれじゃ意味はない」ハイネ。「多分、 あいつは言ったことを強制できる能力なんじゃないかな?」 とヨルが言う。「確かにその可能性が高そうですね」「うーん」と唸る3人に、俺は、「なら、喋る前に倒せばいいだろ? 例えば、 寝てる間に口にロープをくくって、その間に 椅子を頭にぶつけて気絶させればいいんじ ゃないか? それにハイネの能力で俺たちを 透明にすれば成功率も上がるだろ?」と言うと、「透明にするのは、さっきの小さな範 囲が限界だと思う。すまねぇ」「うーん」
「なら、倒さずにいっそのこと逃げるのは どうでしょうか?」 とアンセムが提案する。
「それじゃ意味ないわ。ドアが開かないじゃない。たぶんあいつの力で閉じ込められ ているのよ」ヨルが返し、「確かに」とハイネも同意する。
「いっそ、あえて起こすのはどうだ?」と俺 が提案する。「なんでよ?」とヨルが返す。
「下手に動いて失敗するより、あいつの意識 を利用して倒すんだ」 「そんなことできる の?」とアンセムが不安そうに言う。「わかんねぇけど、やれる気がするんだ」と強い 意志で答える。「どんな作戦だ?」と聞くハイネ。「まず俺が大きな声で挑発する。そうするとあいつが『黙れ!』と言わせるよ うに、俺は縛られたままのフリをする。すると、あいつの意識がこっちに集中するから、 その隙にヨルが影に潜ってあいつの影に潜入 する。ヨルが驚かせて飛び出した瞬間、あいつの動きが一瞬止まる。その隙に俺が火 を顔に向かって放つんだ。これはただ驚かせ て目眩ましするだけで、その瞬間にアンセム とハイネが椅子を頭に叩き込んで気絶させ る。どうだ?」と言うと、「やってみる価値 はあるな」「僕たちならできる」「ホムラ君、 任せて!」と皆が応じてくれる。
「その前に、アンセム。どこに待機すればいいか、ナビゲーションの能力でわからない か?」「やってみます」 そう言って各々の待 機場所を確認する。「じゃあ、みんな音をあ まり立てずに各自移動しよう」その言葉と 共に移動を開始する。そして全員が持ち場 に着くと、俺は手で合図を送り、皆が頷く。 心臓の音が聞こえるほど鼓動が速く感じ る。失敗するわけにはいかない。やるんだ と心に決めて、俺は声を上げた。
「くそが!ふざけるな! 俺たちを出せ!」 と、縛られたふりをしながら叫ぶと、女が目を覚ます。
「叫んだガキはどいつだ! 殺すぞ! 私は寝ると言ったし、静かにしてくれと お願いしたのに... ふざけやがって」と怒りを あらわにしながら起き上がる。「うるせぇのはそっちだ!俺たちにも自由があるんだ、 ふざけるな!」そう言うと、女が「黙ってろ」と殺意のこもった目で俺を睨む。一瞬その目に圧倒されかけたが、その瞬間パ ン! とあいつの後ろから音がする。ヨルが 影から出て手を叩いた音だ。「な...」とあいつが言葉に詰まり、後ろを振り向く。と同時にヨルを蹴り飛ばす。俺はそれを見て無我夢中で、「ヨルを傷つけるな!」と叫んで、顔に向かって 火を放つ。あいつは、咄嗟に手で顔を守るように構える。
「熱くない? 暖かいだけ?は! クソ雑魚意 能力が、私をビビらせると...」 と言い切る前 に、二人が後ろから椅子で頭を叩いた。無 防備で火が弱いと油断した瞬間だった。子供の力とはいえ、その威力であいつは意識 を失った。その瞬間、俺は無我夢中でヨル のもとに駆け寄る。「ヨル大丈夫か!?」「大丈夫だよ、少し痛かった けど。それよりほらやったね!」と笑顔を 見せる。彼女のその姿に安心しと、やったんだという 実感が湧いてくる。「みんな、俺たちだけで、俺たちの力でやったんだ!」 「やりましたね! なんだか夢みたいです」「やったな!」と2人も自信に溢れた顔で返す。そして、皆でハイタッチを交わした。
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