カキネ村編 巨悪

「はいはい、ちゅ〜もーく」




その声が響くと、全員の視線が一点に集中したそこには、いつの間にか現れた一人の女性が立っていた。くすんだローブを身に まとい狂気的な笑みを浮かべたその姿 は明らかにまともな人物には見えない。




「皆さんら今から私の奴隷になってもらいま す」




その言葉が耳に入った瞬間、一瞬だけ自分 が彼女の持ち物になったような気がした が、すぐに我に返り、自分を取り戻す。周り を見ると、何人かは意志を失ったかのように 虚ろな顔で彼女を見つめている。その中に、最初に呼ばれたハイネの姿があった。




「チッ、流石にガキでも抵抗できる奴がいるか」彼女は忌々しそうな顔で動ける者たちを睨む。




「では代表してハイネ君。最初に呼ばれてたみたいだから、私も最初にあなたを指名します」




「ありがとうございす」と感情のない声で答えるハイネ。


「はい、お利口さんですね。では、皆さん をこのロープで縛っていってください」




その言葉を聞くと、ハイネは1人1人を縛り 始めた。中には抵抗する者もいたが、「動くな!」と女が一喝すると動ける者は誰もい なくなった。




「では、私の仕事は終わりましたので、私は眠らせていただきますね。私、自分のしたいことを妨げられるのは大嫌いですからうるさくしないでね、ではお休みなさい」




そう言い、眠りに就こうとしたその時――




「賊が入った!至急、自警団は装備を固めいつもの場所に集まれ! 戦えない者は 戸を閉め家に籠城せよ!」




村長の拡声能力が響き渡った。その言葉が 届いた瞬間、さっきまで意志を奪われたような表情をしていた子供たちにも意志が戻り、俺もヨルもアンセムも、希望を取り戻し た顔になる村の人たちがこの異常事態に 気づいている助けに来てくれるかもしれな い――そう思うと不思議と冷静さが戻ってきた。


「くそがぁ! 私の眠りを妨げやがって!くそ!くそ! 殺してやる!」女が狂気的な目で叫ぶしかし次の瞬間、静かに俺たちを 見回しながら、不気味な笑みを浮かべて言 う。




「おい、ガキ共。何、安心した顔してんだぁ? 助けてもらえるとでも思ってるの?」




そしてさらにニヤリと笑って言い放つ。




「一ついいことを教えてあげる。この場所以 外に私の仲間が6人いるのよ。あなたたち以 外を皆殺しにするためにね。皆の親の死に 顔、見せてあげるからね? うふふ! なんて優 しいの、私。あ、隣村の奴らもこの後、殺 すからね。安心して」




は?何を言ったこいつ。親を、家族を殺す?... させない!




「ふざけーー」




俺が言葉を発しようとした瞬間、「黙れ!」 と女が叫んだ。その一言で、また何も言えな くなり、動くこともできなくなる。無力な自分が悔しい。その時、隣にいたヨルがそっ と手を握ってくる


大丈夫、みんなは負けない。死なない。それに、私たちはもう無力じゃないでしょ」




力強い目で静かに語りかけてくれるヨルに、




「悪い、ヨル。もう大丈夫だ」と、俺は冷静さを取り戻す。アンセムもまた、強い意志を感じさせる目で俺を見ている。




「やろう、俺たちの意能力で、倒そう」




静かに、決意を込めて言葉を伝えた。

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