カキネ村編 意能力の目覚め


勢いよく扉を開けると、神父さんと10人くらいの子供たちがいた。その中でも一番目を引いたのは、天井の絵だ。大きな星に小さな星が集まっていくような絵。




「すげぇな、あの絵。教会の中に初めて入ってみたけど、こんな感じなんだ」 「そうだね、なんだか言葉で表せないような迫力を感じる」 「そうですね、すごい迫力です。多分ソルベの星の絵でしょう」 「何だっけそれ?」




すると二人とも「嘘だろ!?」って顔で、




「ソルベの星っていったら、私たちの命の始まり、神さまの話でしょ、ホムラ君」 「そうですよ、すべてはソルベに帰り、ソルベの導きによって生まれる、あのソルベです!」 「ん~聞いたことあるような?」




珍しくヨルが本当に呆れた顔をしている。




「ふん!忘れてただけだよ!」と強がりを言うと、神父さんが声をかける。




「まぁまぁ、ホムラ君。今知らなくても、今日から知れば良いのです。さぁ、椅子に座りなさい」




透き通るような声で告げる神父さんの言葉に、「はい!」と3人で急いで座った。




「では、皆さん揃いましたようなので、今から生意祭を始めましょう」と神父さんが話す。「では皆さん、意能力の名前を告げる前に、まずは心構えについて話します。皆さん早く名を知りたいでしょうが、大切なことなので聞いてください」




その言葉に、不満そうな顔をする子、真面目に頷く子、納得したような顔の子がいる。そして、俺はものすごく不満な顔をしていた。




「ふふ、不満そうな子がいますね。では、短く大切なことだけ伝えます」と微笑みながら神父さんが言う。




「大切なことは3つです。1つ目は、意能力を得たからといって、その力で他者を傷つけてはいけません。2つ目は、意能力は自身の心、魂の力です。その力を否定してはいけない。他者の力を否定するのはその人をすべて否定することと同じです。また、自身の能力を否定することは自分の否定になります。3つ目は、よく学び、自分自身を知りなさい。自分がどうありたいか、どう生きたいか、自分の魂や心を知ることで成長します」




不思議と心に残る。なぜかこの言葉を忘れることがない気がした。




「では儀式を始めます。呼ばれた人から私の元に来てください」




その言葉でふと我に返り、ワクワク感が戻ってくる。




「おい二人とも、いよいよだな」 「そうね!」 「ええ、楽しみですね!」




2人ともワクワクした顔で返す。




「では、まずハイネさん」 「ファイ!」




緊張した声で返事をする少年。




「大丈夫、落ち着いてこちらへいらしてください」




そう言われ、最初の少年が神父と共に奥の部屋へ行く。それから数分すると、さっきの少年が誇らしげに帰ってきたのを見て、俺も早く呼ばれたくてうずうずする。




「次、ホムラ君」




きた!




「は、はい!!」




つい緊張して噛んでしまう。




「ふふ、本当にホムラ君、可愛いね!頑張って」




いつもなら言い返すところだが、緊張のせいで、




「お、おう」




と情けない返事になってしまう。




「ファイトです!」 「おう!行ってくるぜ!」




そうアンセムに返し、神父さんの元へ向かう。




「では、行こうか」




優しく奥の部屋へ手を引かれ、「じゃあ、そこに座って」と言われたので、神父さんが座る奥の椅子に対して、手前の椅子に座る。




「まずはリラックスの魔法!」その声と共に、俺の顔の前でパン!と手を叩かれる。




「何すんだよ!」




慌ててそう言うと、




「どう?リラックスできたかい?」




と聞いてくる。




「リラックスというか、ビックリしただけだよ!」




不満げに答える。




「それはごめんね。お詫びにこれを」




すると、さっきまで何もなかった神父さんの手に花が握られていた。




「すげぇ!これ、神父さんの意能力か?」 「そうだよ、許してくれるかい?」 「許す!」




「ありがとう。じゃあ儀式を行うね」 「はい!よろしくお願いします!」




すると神父さんが真剣な顔になる。




「ソルベの星より生まれ、ソルベの星に帰る者、ホムラよ。その心、魂の名を示せ」




その言葉と共に、勝手に口が動く。




「炎の冠【クラウン】」




その瞬間、自分が生まれた、自分が今ここに生きている、そんな感情が湧き上がってくる。魂の産声。思考ではなく、心が考える。そんな感覚に浸っていると、パン!




「うわぁ!ビックリした!またかよ!」




「よかった、帰ってこれたみたいだね」と神父が告げる。




「それで、自分の意能力、理解したかい?」 「わかんないけど、なんか感覚?はわかった気がする」




神父が「よしよし」と頷く。




「最初はそんなもんだよ。己を知ることで意能力は成長し、使い方を理解する。生意祭は、ただのきっかけなんだ」 「そうなんだな!ありがとう、神父さん!」 「いいんだよ。君にソルベの導きあらんことを」




「おう!ソルベの星のこともちゃんと勉強するから、今度教えてくれよ」




そう告げて、2人の元へ戻った。


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