次はあの子

1本の大振りのナタを携えた少年は誰も居ない夜の町を歩く。


「ここか……」

そう言って足を止め、視線を向けたのは平凡な一軒家。


「よし」

短くそう呟くと家の玄関まで近づき、インターフォンを鳴らす。


「はーい、どちら様ですか?」

すぐに母親らしき女性が応える。


「あ、遙君と夏樹君の友達なんですけど……今居ますか?」


「はーい、すぐに呼んでくるからちょっと待っててね」

女性がそう言って少しした後玄関が開き、2人の少年が顔を覗かせる。


「……誰かと思ったらお前かよきめぇな」


「ほんとそれな、みてるだけで吐き気がするんだけど。……で、俺らになんか用?」

2人は三月の顔を見るなり攻撃的な視線をむけ吐き捨てるように問いかける。

彼はそんな少年たちの言葉など気にも留めず言葉を紡ぐ。


「この前さ、君たち僕に言ったじゃん?『お前も人殺しなんだろ』って」


「は?だったら何──」


「だからさ、僕、殺人鬼になったんだよ」


2人の少年は言葉の意味が理解できずに動きを止める。


「だからさ、僕に殺されてよ?ね?いいでしょ?僕を心の底から楽しませて死んでいくんだ、これ以上の幸福はないと思うんだ」


「は?おまえ何言って」


少年の言葉はそこで途切れる、次の瞬間絶叫が響き渡り"ゴトッ"と重い音を立てて少年の腕が落ちる。

痛みに悶え苦しむがそれも長くは続かなかった。


「じゃあね、"僕"を造ってくれてありがと」

という三月の呟きとともにナタを薙ぎ少年の首が宙を舞う。

彼の頭からは血飛沫が吹き出し"パン"と破裂したような音と共に胴体だった物が地面に倒れる。

そしてすぐに呆然と立ち尽くすもう1人の少年の心臓を貫く。


「え……?」

少年は何が起こったのかわからないままに自身を貫いたナタに視線を向ける。

たちまち少年の顔は恐怖で染まり劈くような悲鳴をあげる。

三月はそれを聞いて満足げに顔を歪め、刺さったままのナタを振り下ろす。




少しした後玄関に通じる扉が開き奥から少年たちの両親であろう男女が出てくる。


「遙、夏樹、大丈夫か──」

2人もまた肉塊となった2人を見て時間が止まったかのように動きを止める。

そんな2人に切断したばかりの少年の新鮮な生首を蹴りつける。


「ねぇ、この2人と同じところに行きたい?」

三月は心の底から愉快そうに問いかけ、ナタを握る手に力を込める。


「は……?」

男が恐怖を孕んだ目で三月を見つめる。女の方は膝から崩れ落ち大きな声で泣き始める


「で、どうなの?死ぬの?死なないの?……早く答えろよ」

短いやり取りだけで面倒臭くなったのか乱暴に問いかける。


「君一体何を言って……」


「もういいよ、本当は死にたいんでしょ?僕には分かるから」

そう言うとゆっくりと2人に近づき───





──────────


「良かったね、家族全員同じ所に旅立てて」

そう呟いた三月の視線の先には2人の少年の死体と身体中の関節がありえない方向に折れ曲がった男と身体中に数十本もの刃物が突き刺さった女の死体。


少し考えるようなそぶりを見せた後に「次はあの子にしよう」と小さく呟くと手に持ったマッチに火を灯し大量の油が撒かれた床に投げ落とす。



2(+4)

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