前のエピソード――第25話　記憶の重さに耐える

過去の記憶に囚われながらも、現在を生きようとする日々の中で、私はしばしば「記憶と現在のギャップ」に戸惑いを感じます。過去の出来事やその時の感情があまりに鮮烈であるため、現在の自分との間に生まれる違和感が、心の中で深い混乱を引き起こすのです。過去と現在の間にあるこのギャップをどう受け止めればいいのか、それは私にとって大きな課題でした。

記憶は、まるで生きているかのように鮮明で、時に現在を覆い尽くすほどの力を持っています。例えば、就職活動での厳しい言葉や、学校でのいじめの光景は、まるで昨日の出来事のように私の心に蘇ります。それが今の自分に直接関係がないことは頭では理解していても、その記憶に付随する感情が、現在の行動や気持ちを縛ってしまうことが少なくありません。

一方で、現在の私は、過去の自分とは少しずつ変わってきています。支援施設での新しい環境や、少しずつ築き始めた人間関係が、私にとって心の安らぎや前向きな変化をもたらしてくれました。しかし、過去の記憶が「お前にはどうせ無理だ」「また失敗する」と囁き続けるため、その変化を素直に受け入れることができない自分がいるのです。

特に苦しいのは、過去の記憶が現在の自分の価値観や行動に影響を及ぼしていると感じる瞬間です。新しい挑戦をしようと思っても、過去の失敗が頭をよぎり、また同じことが起こるのではないかという不安が襲ってきます。その結果、一歩を踏み出すのが怖くなり、結局立ち止まってしまうこともあります。現在の自分が本当は前に進みたいと思っているのに、記憶がそれを引き止めるような感覚があるのです。

この「記憶と現在のギャップ」を埋めるために、私はまず「過去の自分を否定しない」ことを心がけるようにしました。過去の出来事を思い出したとき、それに対して「もう終わったことだから」と切り捨てるのではなく、「あの時の自分はあの状況で精一杯だった」と認めるようにしたのです。その過程で、少しずつ過去と現在を繋ぐ糸が見えてきたように思います。

また、過去の記憶が頭をよぎったとき、それを「今の自分には関係のないもの」と切り離して考える練習も始めました。「あの時はそうだったけれど、今の私は違う」という言葉を自分に投げかけることで、少しずつ過去の記憶と現在の自分を切り離す感覚が持てるようになってきました。それでも完全に分離することは難しいですが、記憶が私を支配する時間が少しずつ短くなっているのを感じます。

記憶と現在のギャップは、まだ完全に埋まったわけではありません。それでも、このギャップを埋めようと努力することが、私にとって過去から解放され、現在を生きるための重要な一歩だと思っています。過去の記憶と共にありながらも、それに縛られずに現在を生きる力をつけていくこと。それが、私が目指す未来への道なのかもしれません。