第13話 NOと言えなかった過去

振り返ってみると、私はずっと「NO」と言えない性格でした。自分の意思を伝えることが怖く、他人の期待や要求に応えることばかりを優先していました。小学校の頃から始まった「変わり者」というレッテルも、周りに合わせようとして言いたいことを飲み込んでいた結果、ますます自分を抑え込むことになりました。


中学や高校、そして専門学校でも、嫌なことがあっても「NO」と言えずに受け入れてしまうことが多く、無理に自分を周りに合わせようとして、心が疲れ果てていきました。人からの頼みや要求を断れないことで、自分の負担が増し、心がすり減っていくのを感じながらも、それをやめる勇気が持てなかったのです。自分の意見や気持ちを伝えることで、他人に嫌われたり、周囲から浮いたりすることを恐れていたのかもしれません。


就職活動やその後のパワハラも、私が「NO」と言えない性格であることが影響していたように思います。厳しい言葉や理不尽な要求にも耐えるしかないと感じ、「こんな自分が悪いのだから仕方ない」と、自分を責め続けていました。どんなに苦しくても、自分を守るために「NO」と言うことができず、ただ状況に流されるしかなかったのです。


この「NOと言えなかった過去」は、私の自己否定をさらに深め、心に大きな影を落としました。自分の気持ちを押し殺して他人に合わせることで、自分が誰なのかさえも分からなくなっていきました。いつの間にか、私は「自分のために生きる」ことを忘れ、他人の期待に応えるためだけに存在しているような気がしていたのです。


もしあの頃、「NO」と言える自分がいたら、状況は変わっていたかもしれません。しかし、その一言を言うことが私にとっては何よりも難しく、そして恐ろしいものでした。自分の意見を表明することがこんなにも怖いと感じていたのは、きっと「自分には価値がない」という思い込みが強かったからでしょう。自分の意見を言う価値がない、存在する価値がない、そう思い込んでいた私は、結局、どこにも居場所を見つけられず、絶望の中で孤独に生きていました。


この経験から、私は「NOと言うことが自分を守るために必要な行為だ」ということを少しずつ理解し始めましたが、それに気づくまでには長い時間がかかりました。「NO」と言うことで自分を守る力を身につけ、少しずつ自分を取り戻すことが、後の私にとって大きな挑戦と成長の一歩となります。しかし、その道のりは決して簡単なものではなく、この「NOと言えなかった過去」が、私の心に深く根を張り続けているのです。

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