第8話 自己否定の始まり

挫折感に押しつぶされそうになった私の心には、次第に「自分は価値のない存在なのではないか」という自己否定が根を張り始めました。努力が報われず、何をしても周りから疎外される日々が続く中で、私の中には「自分にはどうせ無理だ」「自分は誰にも必要とされていない」という思いが芽生えていったのです。この自己否定の感情は、小さな不安から始まったものでしたが、次第に私の心を支配するほど強くなっていきました。


私が何かに挑戦しようとすると、頭の中で「どうせ失敗する」という声が響き、自分の行動を止めてしまうことが増えました。自分の価値を見出せなくなり、「自分なんて何をやってもダメなんだ」という思いが、毎日の中で私の行動を抑え込んでいきました。自分を信じることができず、自分の能力や存在自体に疑問を持つようになり、日常生活さえも苦痛に感じることが多くなっていきました。


特に他人と自分を比べると、自己否定の気持ちはますます強まります。他の人たちが自然にできることが、なぜ自分にはできないのか。なぜ自分だけがこんなにも不器用で、なぜ自分だけが苦しんでいるのかという思いが、絶えず心の中で渦巻いていました。誰かに認めてもらいたい、誰かに受け入れてほしいという気持ちはありましたが、その思いを打ち明けることもできず、ただ一人で苦しみを抱え込むしかありませんでした。


自己否定が強くなると、自分の存在を否定することが「普通」になり、いつの間にか、それが自分の一部のように感じるようになっていました。自分を否定し続けることで、他人からの期待や失敗に対する恐怖を和らげようとしていたのかもしれません。期待しなければ、失敗しても傷つかない。それが私なりの防御策だったのでしょう。


しかし、この自己否定は私の心をますます暗くし、孤独感を深めていきました。自分を信じられなくなったことで、周りの人たちと関わることも避けるようになり、ますます孤独な世界に閉じこもっていったのです。この時期の自己否定の感情は、今後の人生においても私に重くのしかかるものであり、後にそれを克服するまでには長い時間がかかることになります。この自己否定の始まりが、私の心に深い影を落とし、私の人生の大きなテーマとなったのです。

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