ソラの彼方

さのてん

第1話 ちきゅう

20XX年、地球は太陽を失った。


NASAがSNS上で公開した1枚の画像は瞬く間に世界中で拡散され、多くの人間に衝撃を与えることとなった。

そこに映っていたのは、雲に全体を覆われ、色を失った惑星ほし───地球。かつてその星を覆っていた、生命の青は、今では見る影も無くなっている。


たった10MBほどのは、その小ささに反して莫大な情報と影響力を孕んでいた。各テレビメディアは連日、その道の専門家や政治家を招き、この事態について無駄としか言いようのない討論を行い、それに影響されるように、SNSのトレンド情報もずっと前から変わらぬままであった。


地球が雲に覆われる、という事態には大きなメリットとデメリットがあった。

メリットだが、それまでの人類の大きな課題として挙げられていた地球温暖化、これが完全と言っても遜色ない程に解決した。日光を得ないことにより地球全体の表面温度が上がりづらくなったためである。

日光を得なくなったことによって全体の20パーセントほどを占めていた太陽光発電がほぼ完全に停止、同様に風力発電も発電量を大きく損なったが、これまで停止させていた火力、原子力発電を再起動させることにより問題は解決した。それによるデモが日本各地で行われていたのはこの前までの話である。


太陽を失ってから約3ヶ月───人々は想像していたよりも変わり映えのない生活に慣れ始め、何の面白味も無くなってしまったその話題を誰も口に出さなくなった。


───1人の、まだ幼い少年を除いて。

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2024年11月17日 18:00

ソラの彼方 さのてん @sanoteeem

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