第10話
続いて第三試合、東京の九重学園だ。
一新木
遊佐野
三安達
右佐々木
捕八木ケ谷
二馬田
投菅野
中向井
左田上
第三試合のスタメン。
佐野先輩から聞いたのだが、二年前から花里高校は第三試合で毎回負けているらしい。菅野先輩はカーブの精度がその日によって変わるらしく、そこを打たれて峰岸先輩に交代しても抑えきれずに負けるというのがセオリーらしい。
だからこそ、部の先輩は俺にかなり期待を寄せてくれているようだ。
めっちゃプレッシャーだけど。
3回裏、一死一塁で相手の四番がレフトへのタイムリーエラー。田上が焦って捕球をミスしてしまった。
これで0ー1かつ一死三塁の相手のチャンス。
相手の五番打者、菅野先輩の四球目、甘く入ったカーブをセンター返し。
これは不味いとベンチが頭を抱えた瞬間、向井先輩が前にダッシュしてキャッチすると、タッチアップした相手の三塁走者もビックリの突き刺すようなレーザービーム。これによりチェンジ。
「向井先輩すごいです!」
「やるじゃん!向井!」
「前までの弱肩はどうした!」
ベンチでは向井先輩の一件で大盛り上がりだ。
「おぉい!お前ら、試合に集中しろー!」
監督の言葉に全員が慌ただしく散る。
「先輩凄かったです。」
「そう?」
というわけで俺達出番ない組が話す、
「マジすげぇっす!」
田辺も興奮したように叫ぶ。
確かにホームベースよりやや左に寄った、走者をアウトにすることに適した場所への返球はキャッチャー目線では俺よりも興奮するようだ。
「俺あんなん無理っすね。レギュラー取れるかなぁ。」
そう呟くのは外野を担当する雲井。
「俺より打撃うまいじゃん。」
「向井先輩はそもそも打つ気がないじゃないですか!」
向井先輩のフォローはミスったようだ。
「それにしてもあの返しは見事でした。投げれば140は出るのでは?」
長谷川のセリフを俺の脳は理解できなかった。
「ん?まぁ、調子良ければ150出るよ。」
「「「えぇぇぇ!?!?」」」
「やっぱり………なんで投手をしないんですか?」
俺達の驚きを無視して長谷川が尋ねる。
「だって、守備が一番楽しいじゃん。」
「向井ー!準備ー!」
「はい!それじゃ。」
「「がんばってください!」」
向井先輩はめっちゃカッコいい。その後の二死二三塁で堂々の見逃し三振さえなければ……………
菅野先輩の疲労があったのか、一失点をして5回で峰岸先輩に交代した。
峰岸先輩の投げる6回裏。
相手の二番打者をショートゴロ。三番四番をサードライナーで抑える。
「伊那、準備だ。」
「あ、はい!」
7回表に安達先輩がソロホームラン。点数は1ー2となり、勢いづいたかと思ったが、二死二塁で馬田先輩がライトファウルフライでチェンジ。
7回裏、峰岸先輩は無死一塁で六番打者からセンター方向のツーベースヒット。五番打者はさっきの向井先輩の鮮やかな返球を警戒して三塁で止まった。
無死二三塁。ここで監督のコールによりピッチャーが俺に変わった。
相手の七番打者。今のところヒットはないが、小技が得意なタイプの人だ。ここは安達先輩がかなり前に出る。
一球目ストレートを見逃してストライク。
二球目スライダーをバントの姿勢で見逃してストライク。
三球目チェンジアップがバットに当たるも、八木ケ谷先輩のダイビングキャッチからの三塁送球。さらに安達先輩が驚異の身体能力で捕球してタッチ。
二死二塁無失点とかなりピンチを脱した。
次は八番打者。ここで相手はピンチヒッターを送る。
一球目チェンジアップを空振り。
二球目もチェンジアップで空振り。
三球目はスライダーに釣られて空振り三振。
なんとかピンチは脱した。
「伊那!何してる!打席に立て!」
「え………」
うわ、マジやん………
結果?見て分かるだろピッチャーゴロでアウトだよコンチクショー!
相手も継投して一年のピッチャーだったが、打てる気がしない。
その後は向井先輩が珍しく粘ってフォアボール。
田上の打席中に向井先輩が圧巻の二盗、三盗。からの田上が犠牲フライで一点を返して2ー2。
さらに新木先輩と佐野先輩の連続ヒット。そしてなんと安達先輩の二打席連続ホームラン。
点差は一気に広がり、5ー2となった。
8回裏、相手の二番打者にヒットを打たれたものの、問題なく処理してチェンジ。
大事なのは慌てないことだ。
9回表、佐々木先輩が出塁するも、八木ケ谷先輩がゲッツー。馬田先輩が出塁するも自動アウト製造機である俺によって無得点に終わった。
9回裏、正直キツいかも。
四番打者に投げたスライダーがうまく決まらず、ソロホームランを打たれた。
5ー3
弱気になるなよ、俺!
なんとか持ち直して、五番打者を三球三振に打ち取った。
続いて六番打者。
一球目のボールゾーンに投げたストレートを振り抜いた。
俺は八木ケ谷先輩と頷きあう。
二球目にカット。相手は絶好球と勘違いして思い切り振り抜くも、ボールは芯を外れてファーストゴロ。
相手の七番打者。ここでまたもピンチヒッター。
一球目ストレート。これは見逃し。
二球目チェンジアップ。これはボール判定。
1ー1でスライダー。相手のバットに当たると弱い速度でマウンドを転がる。
俺が自分の捕球技術に不安で捕ろうか迷っていると、佐野先輩の鮮やかなフォロースルーでファーストミットにボールが吸い込まれた。
スリーアウトでゲームセット。
花里高校は念願の第三試合勝利を手にした。
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