第9話

 春季大会。九つの地区でそれぞれ行われる公式戦で、上位校には夏の大会でシード権が与えられる。

 我々花里高校野球部は関東地区に参加し、開催地である神奈川県に向かった。


 その第一試合、群馬の芦崎高校だ。


 一新木

 遊佐野

 投筑波

 三安達

 捕八木ケ谷

 左黒崎

 右佐々木

 二馬田

 中向井


 これが第一試合のスタメン。一年生は全員ベンチだ。

「今日の相手って強いんかなぁ?」

「さぁ?」

 俺の問いに田辺が曖昧に返事する。

「そこまで話は聞かないかもね。」

 長谷川が補足するように喋る。

「じゃあ、筑波先輩だし、余裕で勝てるかもな。」

 田上が楽観的に呟く。



 その言葉通り、4ー0で俺たちの勝ちとなった。特筆すべきところは、黒崎先輩の守備が相当不安なのか、向井先輩がレフトに寄っていたことだろうか。






 第二試合、富山の鴇ケ谷高校。


 一新木

 遊佐野

 投筑波

 三安達

 右佐々木

 二馬田

 捕田辺

 左田上

 中向井


 八木ケ谷先輩と黒崎先輩が抜けて、田んぼブラザーズがスタメンになった。二人を呼ぶ時はこの呼び方が野球部で流行っている。




 5回表、三者凡退に抑えた筑波先輩はここでマウンドを降りた。

 得点は5ー0

 


 5回裏、佐々木先輩、馬田先輩が立て続けにヒットを打つも、田んぼブラザーズのゲッツーとフライでチェンジ。

 未だに田んぼブラザーズは出塁すら出来ていない。焦ってミスしなければ良いけど。



 6回表、投手が菅野先輩に変わる。菅野先輩はストレートとグンと落ちるカーブが特徴だ。

 二死、三球目のカーブでライトへのツーベースヒットを打たれたが、その後の選手のセンター返しを向井先輩のダイビングキャッチでチェンジ。

 向井先輩は完全に守備の人って感じだ。



 6回裏、向井先輩はフォアボールで出塁。さっきのダイビングキャッチを見て相手がビビったのだろうか。

 次の新木先輩への初球に向井先輩が盗塁、さらに新木先輩の進塁打により一気に一死三塁のチャンスだ。

 ここで佐野先輩、六球目を流し打ちしてタイムリーヒット。

 6ー0

 その後、菅野先輩がゴロを打たされゲッツー。



 7回表、相手の六番、七番に打たれ、無死23塁。

 八番、九番を三振に討ち取ったものの、一番打者にライトスタンドに突き刺さる大ホームラン。

「伊那、八と九任せる。」

「はい!」

 監督の言葉に気合いを入れ、肩を作りに向かう。

 6ー3となったが、菅野先輩は後続をピシャリと抑えて致命傷にはならなかった。



 7回裏、投げていたため見られなかったが、得点は入っていなかった。



 8回表、遂に公式戦初登板。気合いを入れる。

 相手の三番、一球目のカットを打ち損じてファーストフライ。

 相手の四番、一球目のストレートを見逃してストライク。二球目のストレートも見逃し。

 三球目の地面スレスレのストレートを空振り三振。

 相手の五番、初球チェンジアップがすっぽぬけてしまったが、ファウル。球速が遅くなったことに驚いて振ってしまった相手に感謝だ。

 二球目はカット。これは外れてボール。

 三球目、外角上のストレートを引っかけてショートゴロ。

 これでチェンジだ。



 8回裏、田上からの打順だ。

 四球目を打ち上げてしまいサードファウルフライ。

 向井先輩は一度も動かず見逃し三振。

 新木先輩は二球目をサードの頭を越えるヒット。

 佐野先輩で俺はネクストバッターズサークルに立つ。出来れば打席に入りたくないから佐野先輩凡退してくれ!

 その気持ちが伝わったのか、佐野先輩の打球はセカンドライナーでチェンジ。

 しかし、チェンジの間のバタバタがきつい。急がないといけないからだ。



 9回表、ここで抑えれば勝ちだ。

 相手の六番、二連続カットに手が出てしまい、サードゴロ。

 相手の七番にはかなり粘られて、八球目でフォアボール。

 相手の八番は渾身のスライダーを引っかけてセカンドゴロで二死二塁。ここで俺がとっていたらゲッツーだったかもしれないが、まだ捕球に不安があったため、無理にとるのは止めておいた。

 相手は九番でピンチヒッターを送り出してきた。

 そうすると、さっきまで迷いなくリードを出していた田辺に迷いが見れた。

 初球スライダー。しかし、田辺がとりきれずパスボール。二死三塁となった。

 二球目、ストレートを相手が空振り。

 田辺が三球目にストレートを要求したが、何か嫌な感じがして、首を振る。今度はチェンジアップ。

 これなら良いと思い、投球モーションに入る。

 相手は、空振り。

 花里高校は第三試合に勝ち進んだ。

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