第5話 アインズ
モモンガは、只今、目をかっぴらいていた。
その原因はあり過ぎて上げきれないが、突然、異世界に放り出された(?)と思いきや、NPCたちが動いていて、何も分からないという現状だけが分かって、こんなところからスタートなんてクソ運営のユグドラシルよりもさらに酷い。その上、なぜか異世界(?)に来てから、最初にかけられたのがペロロンチーノさんを彷彿とさせる意味不明な言葉。
はっきりと言う。正直な感想、マジで理解不可能、無理ゲー過ぎるだろう以外、反応が思いつかない。
まあ、現実逃避はひとまず置いといて、とりあえず、目の前の問題を片付けようとモモンガは自分に抱きつくサキュバスの名を呼ぶ。
「……えっと、アルベド」
「はい。いかがされましましたか、モモンガ様」
モモンガが声を掛けるとアルベドはすぐに手を放し、真面目な顔で向き合う。
モモンガはその変わりように驚きを通り越して恐怖を感じるのだが、もうどうにでもなれ精神で解決しようとした目の前の問題を未来の自分へ丸投げした。
その後は、スムーズに事が進んだ。領域守護者たちの忠誠心が高いことと、魔法が使えることを確認し、一段落した。アインズは「ふうっ」と息を吐くと、今度は「あっ」と声をあげる。
「そういうことか。そういえば、アルベドの設定、変えちゃったんだったな。」
「……って、どうしよう。……ダプラさん、ほんとにすみません」
アインズはつい先ほどのことを思い出し、顔を青ざめさせる。
────うーん。どうしようかな。
────そういえば、たっち・みーさんに前、娘が大きくなると、「父親が娘に嫌わ
れやすい」とか言ってたっけ?
────じゃあ、「モモンガが大好き!」……とか?
────なんか、さっき思い出したペロロンチーノさんに凄い引っ張られてる気がす
るけど……。まあ、こんなもんかな?
しかし、ここでも精神抑制の効果である程度、気持ちが落ち着き、NPCの名前の一覧を見て、何かユグドラシルと変わっていることがないか確認していく。
アインズはふと、パンドラズ・アクターの名のところで手を止め、そういえば、あいつのところには行って確認していないが、まあ、あいつのことだから、放っておいても、上手くやっているだろうと勝手にこじつけ、後回しにする。
まあ、当然だ。わざわざ自分から、自分の黒歴史を見たがる人はいないだろう。黒歴史、人をも殺すということだ。いや、今はアンデットだから、人じゃなくてアンデットだし、もう死んでるんだが……。……そんなことはどうでもいい。
しばらくして、アインズがつまらなそうに見ていた遠隔視の鏡<ミラー・オブ・リモート・ビューイング>に映ったものを見て不快感を抱き、そこに転移したのだった。
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「こんにちは」
ルーナはそう言って、目つきが悪い、まあオブラートに包むと味のある顔をした少女に声をかける。
「こんにちは」
その少女は声から推測するに、微笑んだつもりなのだろうが、反対に顔はもっと味が出てしまっていた。
「すみません。私はルーナと言います。遠くの地から来た者でここらへんには疎いのです。なので、あなたにこの地についてお尋ねしたいのですが、よろしいですか?」
「いいですよ。でも、そんなにかしこまらないでください。私とせっかく同年代くらいなんですし……。しかし、それにしても私と同じくらいの年なのに、1人で旅ですか? 大変ですね。」
ルーナも、この年で遠くから1人で旅というのは少し、怪しまれるかと覚悟していたが、一番最初にそれを言われ、その少女に対する警戒心を相手にバレないように一段階引き上げる。
「まあ、確かに大変でないといったら嘘になりますが、旅はいいですよ。あなたももう少しすれば、私のように1人でも旅くらいならできるようになりますよ。」
「……えっと、ここで話すのも、あれなので私の家に移動しましょうか。」
ルーナはやはりと思う。この少女は鋭いと。少女は私の強さにある程度気づいているのかもしれない。私を心の中では警戒しながらも、そんな感じを見せずに自然に父親のいる家に移動し、万が一に備えている。
「はい。お願いできますか?」
「もちろんです」
その家は当然ながら、昨日情報収集した時に見たときとほとんど変わっておらず、良くも悪くも質素という言葉が似合う家だった。まあ、その少女の父親がおそらく高い社会的身分にいるからなのだろう。明らかに他の家よりもしっかりとしていて、中も若干広かった。ただ、そこに置かれているものは他の家ともそんなに大差ないというくらいで。
「お父さん、ただいま。」
「お邪魔します」
「おかえり」
「……おや?」
「この人はルーナさん。ここらへんのことについて聞きたいらしいの。」
「初めまして、ルーナです。私は遠い地から来た旅人でして、さきほど、そこの井戸であなたの娘さんとは会ったばかりなのです。よろしくお願いいたします。」
「ああ、初めまして、この子の父のパベル・バラハだ。よろしくお願いする。」
「私も聞きたいことはいろいろあるのだけれど、まずは何を聞きたいんだ?」
「そうですね。とりあえず、この国の中心地までの距離と簡単な道のりをお教えいただけますでしょうか。」
「ああ」
そう短く、返事をするとパぺルはネイアの用意した少し荒っぽい紙に書いていく。
「他にはあるかい。これは質問ではないのですが…あなたと模擬戦をさせていただけませんか?」
「えっ、ルーナさん⁉」
やはり、ネイアは私の実力を知っているんだな、気をつけないと。……でも、この子の事は意外と嫌いじゃないかもしれない。頭の回りも観察眼もいい線を行っているし。
こんな感じでネイアの知らないところで、ネイアの評価がごぼう抜きで高くなっているのだった。
「ふむ……。」
パぺルはルーナを見定めように観察し、OKを出す。
「お父さん⁉」
パぺルは最近、父親離れし始めつつあるネイアの非難するような声に思わず、泣きそうになるが、ルーナがこの若さで1人で旅をしていると聞いた時から、その実力には興味があったため、踏みとどまったのだ。決して、ネイアの前で、カッコイイ姿を見せようと思ったのではない。そう、決して。……そう、決してだ。
「ただし、危険だと思ったら、すぐに止める。それだけは守ってもらおう。」
「分かりました。では、よろしくお願いいたします。」
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アルベド、まさかのあの黒歴史につぎ、アインズ様のお世継ぎになるかも⁉
ネイアは作者も好きで、登場させたかったんですよね。ネイアのパパさんも頑張れ!
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