第224話 管理

転移して、最後の勇者が斬り崩した海底から中へ入るとそこはこじんまりとした部屋だった。そのまま最後の勇者を眠らせて、イチコ剣を没収して中に入る。……流石にレベル差酷かったから眠らせるのは容易だったな。


「……部屋、ですか?」

「何でリーシャちゃんついて来たの。いやまあ別に良いけど」


リーシャちゃんとテンコと剣状態のイチコと一緒に中に入ると、自分のダンジョンの地下21階にある監視ルームみたいに様々なモニターがあり、各地の動きを見れるようになっていた。力を持て余した存在って、大体観察というか傍観者みたいな存在に走る傾向あるの?


そして机の上には幾つかの丸い球がある。何かその内の1つは氷漬けのようになっているんだけど冷たくない。外観は明らかに氷なのに、触って冷たくないのは不思議だな。


「おや、思っていたより早かったね?

それはあまり触らない方が良いと思うよ」


部屋の中を物色していると、扉が開いて中に人……人?が入って来る。鑑定して、当然弾かれるので凄いレベル差がありそう。容姿は女性っぽいけど、無性系のモンスターに近いな。見た感じ胸も男性器もない。


「……殺さないのか?」

「何で?殺す理由がないよ」


恐らく、今自分が鑑定しようとしたことすらこの存在には筒抜けな気がする。手癖でやってやべってなったし、殺されるかと思ったけど思っていた以上に温厚。気にすらしていない辺りは相当人が良い神様というか上位存在というか。


「君の望みは把握している。この世界がどうなっているのか知りたいんだろう?

場所を移そう。ここは危ない物が多いからね」


場所を移そうと言った瞬間、テーブルと椅子が並べられてあるだけの部屋に移動する。他者を巻き込んでの転移はまあ、自分も使えるんだけど何の予兆もなかったのが怖い。あれ座標設定するのに多少は時間かかるんだけど。


しかしまあ、自分の望みが把握されてるってことは『上位存在とお茶会したい』みたいなことも把握されてるのかな。……上位存在の出す食べ物を食べた時点でSAN値チェックとか入りそう。


わりかし友好的な上位存在様は、その後の会話で異世界の神であることを教えてくれた。ゼーン神とアーク神についてはこの神様が設定してそれぞれ宗教を作り、異世界側に広めたと。まあ分かりやすく作られた宗教だったな。


……そしてここからが本来なのだが、この上位存在は元々地球からこの世界に召喚されてやって来た存在らしい。その時に色々と頑張った結果、この世界を観測している高次元の存在を感知してしまい、勧誘され流れで神様になったとか何とか。その際に何個か世界の管理を頼まれたみたいだけど、その内の1つが出身地だった地球と。


なんでこんなことをしたのかは、単純だった。どういう流れでも日本はこの先滅ぶ予定だったらしい。色んな試行錯誤をした末の結果が、勇者とダンジョンマスターをぶち込む流れなのは草生えるよ。


でも結果的に『日本』が『他国』よりも生き長らえるパターンはダンジョンマスターぶち込んだ時の方が多かったらしい。そりゃダンジョンマスターに日本人を大量採用していたらそうなるだろう。……日本優遇されていたのは上位存在が元々日本人だったから、か。用意されたパソコンの言語も全部日本語だったのはそういうことなのだろう。


……あのリセットに関しては、この上位存在が寝ている間に文明が崩壊して、無為な時間を過ごさないようにするためのプログラム。ちなみに時間を撒き戻して何回も繰り返させていたのは普通に赤字だったらしい、別世界の予算というかDPを注ぎ込んでまで地球を維持させていたのかよ。


まあなんだ、地球視点というか日本視点では善神そう。異世界と繋げたのはその方が管理リソースの節約になったからは流石に予想してなかった。……異世界側の神としての力を、地球でも振るえるように、ね。


色々と話を聞いた後は、お食事タイム。何だかんだ話を聞いている内に仲良くなったし、今後もそれなりの頻度で会いそうな存在だ。食事中、突っ込んで聞いたのだがバグ利用で時間が戻った件に関しては『勇者×ダンジョンマスターの存在を更に勇者から産まれ直させようとして、固有能力の方がバグった』らしい。


負のパラメーターが発生して世界がフリーズしたとか何とか。……この手の話を聞くと、単純にこの世界はシミュレーターみたいなものなのかな。何度もタイムリープさせて良い未来を手繰り寄せようとしている時点でシミュレーターみたいなものか。まあそこら辺に関しては何とも思わないな。自分視点で不自由しているわけでもないし。


食事中に、リーシャちゃんがお酒を頼むと上位存在はお酒を出してくれたのでそのまま酒盛りに移行。神様も普通に酔うんだな、と思ったところで何故か『行ける』という直感が走った。


そして直感が走ったと思った直後に身体は動き終わっており、男か女か分からない上位存在のその身体を、イチコ剣で真っ二つに切り裂いていた。

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