最終話 本物
さっきまで談笑していた場で、血飛沫が舞い、人っぽい存在が崩れ落ちる。元は転生者なだけあって一応人間の範疇なんだな。最後の言葉は「な」だった。たぶん「何で」と言おうとしたんだろう。その言葉を言い切る前にテンコとイチコがキッチリ肉体を欠片も残さず消滅させた。再生させる暇も与えない。あとなんか蘇生も封じていた。最後のダンジョンマスター対策にレベルアップしまくっていたのが生きた形だ。
自分の動きにすぐに合わせられたの凄いなと思うけど、召喚されたモンスターはダンジョンマスターと似たような存在になるし、そのテンコと自分の子供であるイチコもまた自分と似たような存在なのだろう。
「な、何で殺したんですか⁉︎」
「行けそうだった、から?
うっわ滅茶苦茶レベルアップした。流石は神。あとなんか色々と要らない物も引き継いだな」
たぶんあの上位存在は、未来までは視えてなかった。未来視えてたらわざわざシミュレーターみたいなことをする必要もないし、自分を歓待するようなこともしなかっただろう。
警戒はしていたはず。ただ恐らく、心を読める存在だったから油断したのだろう。「油断させておいて凶刃にて討ち滅ぼす」みたいな考えが微塵もなかったから、酒まで飲んだのだろう。
……記憶も戻り、今までの自身の気まぐれさというかどちらかと言うとサイコパス的な部分には辟易する。ついさっきまでニコニコ談笑していた存在を『行けそう』だからで殺すのは流石にパス。記憶戻ったから言えるけど、今までの自分をそういう自分にしていたのは元を辿れば自分だったし。周回後の性格を先天的スキルで怠惰になるよう捻じ曲げてたのか。
事の顛末を聞いた最後の勇者は『そうなるかもとは思った』とのコメント。仲良くしていた存在でも『喰える』と思ったら即殺するような存在になったと思っていたということか。そしてそれは、正解だった。
前々周以前の情報も入り、あの上位存在が繰り返し世界をコネコネしつつ眺めているという事実に許せないというか不快な気持ちと、性格改変された結果として自分も同じようなことしたいという気持ちが同居する。まあ許せなかった最大の理由は3周目が出来なかったからだな。そのせいで身内に最終勝利者を取らせるしかなかったんだけど最終的に最後の勇者に自分殺しを頼んでいるわけだし、子も失わせることを把握して頼んでいるのはこっちもパス。ただまあ目的達成はしているから、全部OKって感じがする。ああでもしないとアレは殺せない存在でしょ。
冷静に考えるとイチコ剣回収したのはイチコを護衛にするためじゃなくて一撃で斬り伏せるための武器だったんだろうなとか、最後の勇者も気絶させるのではなく眠らせたのは強化を途切れさせないようにするためだろうなとか、無意識化で正解を引き続けているのが怖すぎる。結果から過程が組み上がっているのには恐怖しか感じないけど全部直感のお陰か。
……とりあえず、時間を撒き戻せる機能は廃止しようか。とか考えたらこのダンジョンの入り口にあった固まっている球体が元々の世界ということがわかる。ということは他の球体はその他の世界で、今あるこの世界はやっぱりシミュレーター?せっかくラスボスを倒したのに、なんかSAN値が凄い勢いで減ってるんだけどなにこれ。
自分のステータスは凄まじいことになっているけど、さっきの神様が一撃で死んだように高倍率×高倍率×高倍率で簡単にHPは削れそう。無敵とかそういうのは無いんだ。あったら倒せてなかったけど。
……元転生者の神様、ループの中で数億年は生きてたっぽいし、直近は寝て起きてダンジョンマスターや勇者をぶち込んだ世界がどうなったかのチェックを繰り返すというサイクルで生活していたみたいだから結構可哀そうな感じもする。それにしても本当に日本は2200年まで国を保ったルートがねえな。あとたった175年すら国を維持出来ないのか。保てそうな周回に限って他国に支配されてるし、ダンジョンマスターをぶち込んでからはダンジョンマスターの完全な支配下になったり、逆に即座に全滅したりしている。
今の日本はほぼ独裁だけど、一応渋谷のやべー奴の政策が全部通っているわけでもないし、一応議会は生きていることを考えると完全な支配下ではないな。他のダンジョンマスターも多く生存しているし、恐らくまだ渋谷のやべー奴が単独で適わないダンジョンマスターが4人はいる朝鮮勢も健在。
……多くの力は手に入れたけど、それを十全に活かした時、出来上がるのは神様の言うことを全部盲目的に聞き入れる国家で、前の神様はそんな国を作って惨めな思いをした周回すら存在しているからダンジョンマスターというプチ神様をぶち込む暴挙に出たんだろうな。
そして勇者はダンジョンマスターのブレーキ役と。適度な戦争であれば、戦争状態が一番技術も経済も上向くとかそんな事実受け入れたくない。
まあ、今は日本は放置だな。せっかく過去周回と比較しても上手く行っている方の日本、出来ればこのまま拡張を続けて欲しいしそれを眺めてゆっくりしたい。
※次話エピローグ
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