第223話 固有能力

アホみたいに硬い壁について、突破手段は幾つか検討していた。最初は迂回も考えたんだけど、ダンジョンが最大の時の体積で敷き詰められてそうな感じがしたし、そうなると下手すりゃ10キロも掘らないといけないんだけど、そんなことしたらマントルにまで到達しそうだし避けた。


そして次の手段として、勇者の固有能力を頼るというもの。固定ダメージを与えられたり、武具の効果を増幅させるような固有能力ならあの壁にもダメージも与えられるかもしれない。内側からとは違って、明らかに攻撃が無力化されてないし。


そんなわけでリーシャちゃん経由でめっちゃ硬い壁を破壊できる勇者がいないか勇者掲示板の方で聞いたら最後の勇者が釣れた。


「……えっ、そういう能力持ってるの?」

「待ってるわよ?」


……前々周でも固有能力について割れてなかった最後の勇者の固有能力はなんだろうと思ったら、剣への強化能力というシンプルかつ分かり辛い能力だった。この手のシンプルな能力の方が分かり辛くて強化率高いから強いんだよな。というか序盤からサクサク一刀両断していた理由はそれか。


一時は未来予知でもしているのかと思った体捌きとか剣筋の方は自前の能力という。まあ剣道の大会で優勝する奴が少なくとも前々周で数十年闘い続けていたんだからそっちは単純な技術か。


協力してくれるみたいだけど当然ながら今のままだと深海8000メートルで活動なんて出来ないので、念の為に対応するスキルとかは取得させる。環境適応スーツとかもあるけど、あれ水圧には耐えられないからな。宇宙空間なら行けるのに。


その後はテレポートで海底の施設内に送り込み、そのままダンジョンの外壁を斬らせると若干のダメージが入る。……ステータスの高いモンスターを剣にしたら行けると最後の勇者が言ってきたので、その場で1番ステータスの高かったイチコに剣になって貰うよう頼んだらあっさり斬れた。


「……モンスターが武器になれるとか初めて知ったんだけど何で教えてくれなかったの」

「武器に変化出来るモンスター自体は多くない上、ステータス的には剣になれるモンスターがモンスターのまま戦った方が強いから基本は死にスキルなのじゃ」

「それでも海底で見つかった魔剣よりかはステータス上なんだけど。

あと最後の勇者の固有スキルって強い剣ほど倍率高いみたいな話してたから、下手したらあの剣だけでうちのダンジョン攻略されそう」

「流石にここで離反することはないじゃろうし、そうなったらイチコが剣からの変化を解くのじゃ」


斬れた手応えがあった最後の勇者は海底に四角形の穴を開けて、中へと潜る。ついていった鵺カメラが捉えたのは、ほぼ拡張をしていない最後のダンジョンマスターとその側にいるイモータルゴーレムだった。


……いやこれ思いっきりバグってない?イモータルゴーレムさんは350レベを超えているけど、その他に敵がいないなら敵対してもそこまでやばい敵じゃなかったな。


恐らく、自分が時間を巻き戻した際に巻き込まれたのがあの勇者兼ダンジョンマスターのイモータルゴーレムなのだろう。何も食べなくても活動出来るようなスキルも取っているみたいだし、それこそそこらの山の洞窟奥深くで眠られていたら察知出来なくても仕方ない。


すぐさま最後のダンジョンマスターの持っている情報を吐かせると、大体はこちらの予想通りで記憶に関してはイモータルゴーレムが最後のダンジョンマスターの記憶を所有した状態でスタートから1時間が経過した頃に生えたらしい。


ちなみにイモータルゴーレムの記録によれば最後の勇者にクイーンゴーレムを孕ませて貰い、生まれたイモータルゴーレムを最後のダンジョンマスターが孕ませたクイーンゴーレムから産まれ直させたと。……若干おかしなところはあるけど、ここにも産まれ直しをさせてる人がいるなら産まれ直しさせるのって案外普通のことでは?


残念ながら、元凶とかその辺の情報は持ってない。考察に関しては考察スレを見てくれと言われたけど世界の監視者がいる理由について長々と書かれてもなあ。そもそも質問権の時点で監視者自体は居る。まあこの辺掘りまくったらいずれ正解を引くんじゃないかな。


そう思って残っている質問権2つの内1つを使い「海底のどこに居ますか?」と聞いたら「答えられません」との回答が。まあこの手の質問に関してはそんな感じの回答になると思った。


ただ、今回は海底に基地まで作って探知系の高ランク高レベルモンスターを並べている。自分の元へ来た回答の通信の出所は感知出来なかったそうだが、自分がした質問の方はどこへ向かったかある程度掴めたようだ。


「……また最後の勇者に突っ込ませるのかの?」

「いや、それすると最後の勇者が元凶に斬りかかるかもしれないし、穴を作らせた時点で眠らせてくれる?」

「過去の女を使い捨てとは酷い男じゃの」

「下手に突っ込まれて敵対された時が面倒過ぎるでしょ。そもそも敵対する気ないし」


……念の為、自分もステータスは盛ったしイチコ剣は装備するつもりだけど向こうの性格的にいきなり襲われることはないはず。それじゃあ元凶の御尊顔を見に行くか。

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