第10章 残された言葉

「さて、俺が喋っていたら時間がなくなってしまった。最後にいちばん重要なことを話すぞ。闇騎士は全部で200人だ。これだけは頭に叩き込め。わかったな。」


「はい。」


「よし!これからは君の頭脳に頼ることになる、君の活躍に期待しているぞ。では、終わりだ!」


そう言うとサベルト総長は総会議場に大声を発し、闇騎士全員を集めた。


「これより、闇騎士総会議を閉会する。皆の者、ご苦労であった。これより、宴を始める。」


「宴!?」


「お前には少し刺激が強いからな。寝とけ。」


そう言うケトラーは最っ高のニヤケ顔をしていた。


「嘘ですよね。」


「ふん、そうだな。宴は楽しいぞ。今までそう会議に真剣にやってくれた証として総長が皆に宴を振る舞う、というのが大元だが、サベルトはそれを一番の楽しみにしてやがる。呆れたやつだぜ。」


「いつから始まるんですか?」


「日が完全に暮れたタイミングでスタートする。さあ、まもなくだ。」


「始め!」


サベルト総長が潔く言うと、闇騎士たちは騒ぎ出した。


「おい新入り!いっぱい飲んでいけよ。」


というような感じで俺のグラスにお酒を入れてくる。


「あの僕未成年なんですが…」


「関係ねーよボイドじゃ!ボイドは酒のんでも気分が上がるだけで酔わないようになってるんだ。いつ攻め込まれてもわからない状況だったからな。昔の闇騎士団とか言うバカどもは!さあ飲め飲め!」


俺はそう言われて納得し、お酒を飲み始めた。するとケトラーは言った。


「その一言で納得するとは、お前も闇騎士になったもんだな」


「まあ、まだまだですけどね。」


「青二才だもんな。」


そう言うとケトラーは腹を抱えて笑い転げた。そこにはいつものケトラーのような厳しい面影はなかった。その後もひたすらに騒ぎまくった。そして疲れた俺達はその場で寝た。



 朝になった。ケトラーはいつもの落ち着いた調子で言った。


「そろそろ現実世界に帰るか。」


「はい。」


「ただ、一度闇騎士としてボイドに来てしまったら、現実世界では相当の捜索を行っているだろう。これを着ていけ。」


そう言うと、ケトラーと同じ、黒いフードと、黒いズボンをくれた。


「ありがとうございます。」


「よし、戻ろう。戻るときもボイドに来たときと同じだ。」


僕は、あの裏路地を思い浮かべて、言った。


『黒い世界の白き掟に忠誠を誓う』


現実世界に足がついた。その時は朝、晴れていた

「久しぶりに見る太陽はきれいだな。」


「ふん、そうだな。」


「これからどうするんですか?」


「俺は俺の家に帰る。」


「じゃあ俺もそうします。というか、家は警察の捜索はされていないのですか?この前、ボイドに来たら現実世界では行方不明状態になっていると言っていましたが。」


「大丈夫だ。人が来たら殺せばいい。お前は人を殺すだけの技術を身に着けている。」


自分の手で人を殺すのは嫌だったが、闇騎士になると自分で決めた時の覚悟の上だ。


「分かりました。一旦さようなら。」


「ああ。ちょっと待て。」


ケトラーは俺を引き止めた。


「なんですか?」


「総会議お疲れ様。1週間後の夜またここで会おう。ゆっくり休め。」


「はい。」


そう言うとケトラーはひっそりとどこかへ姿を消した。



 家についた。ふと携帯を開くと、琉からメッセージが大量に届いていた。


「大丈夫か?行方不明だってニュースに流れてたぞ。いつも心配させてたけど、今回ばかりは早く出てきてくれよ。俺が安心できねぇ、どこ行っちまったんだよ。」


という文から始まり、どんどんと絶望感の強いメッセージになっていく。とうとう諦めたように、


「快斗、今までありがとう。悲しいけど受け入れられない現実ってこういうことだよな。でもお前とメッセージができないの悲しいから、自分の話だけでもさせてくれや。ということで、このラインはこれから、僕の事後報告に使います。」


その文のあとは、いくつかの事後報告があった。闇騎士捜査班の班長になったよとか、未解決事件を解決したんだ(闇騎士じゃないけど)とか。


時々俺に問いかけてくる文章もある。闇騎士って本当にいると思う?とか。思わず答えを返そうとしたが、俺は今行方不明という訂になっている。


ここから何を言おうと世間を騒がせるだけだからやめておこう。俺は琉のメッセージの入った携帯を静かにしまった。


ただ、少し奇妙な感覚を覚えた。というのも、俺は闇騎士の『戦ヲ司ル者』、琉は闇騎士捜査班班長、俺の頭を変な妄想がよぎった。


馬鹿げたことを考えるのはやめようと思い、俺は久しぶりにふかふかのベットで寝た。心地よかった。しかし、夢で見たのは、俺と琉がそれぞれを率いる戦争の姿だった。

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