第7章 総会議

 総会議場に辿り着いてから2日後、全員が揃ったということで、サベルト総長が闇騎士を集結させた。


「これから、3日間かけて総会議をする。従って、この3日間で決まらないことがあれば、その後、臨時会議という形で行う。また、地位など気にせずに、話し合いに関わってほしい。」


あたりは静まり返ったままだった。


「ではこれから会議を始める。とその前に」


サベルト総長は僕を手で呼びよせた。


「63年ぶりに新たなメンバーが加入した。」


「快斗です。よろしくお願いします。」


「彼は今、ケトラー様の弟子として闇騎士の世界に慣れようとしている。闇騎士の常識など彼に教えたいことがあれば、どしどし言ってやってくれ。あと、これで闇騎士は200人が集まった。まあこの話は後でする。以上だ。」


俺は振り返った。ケトラー様とは?ケトラーよりもサベルト総長のほうが上な気がするのに。これも、闇騎士の常識なのだろうか。様をつけるのが一般的なのだろうか。


いや、ケトラーは第一ボイド派遣隊の隊長だ。この中で一番地位が高いのはケトラーなのかもしれない。ずっとそんなことを考えいると、いつの間にやら会議は始まっていた。


「さて、今回の議題についてだが、『アケステトラーの予言』についてだ。」


俺はなんのことかさっぱりわからなかったが、それを説明してくれると信じた。


「皆わかっていると思うが、一応説明しよう。『アケステトラー・フラニスタリス』というアケステトラー家の家宝に載っている予言だ。『最後の足掻きは偽りの世界を闇に閉ざすだろう。時は流れて、闇は赤く染まる。闇に埋もれし200の漢達と、己の闇を光とみる数多の漢達が、争うだろう』という内容だ。そして、ここからだ。なんとこの本には次作があったのだ、題名は同じだが。そいつはアケステトラー家の家の地下から発見された。そしてその文を、アケステテラー家の末裔であるケトラー様に読んでもらった。」


だから、ケトラー様と呼んだのか。俺は一つ謎が解けたことが、とてつもなく嬉しかった。


「もう様は付けなくていいよ。」


ケトラーは微笑を浮かべていった。サベルト総長はうなずいた。


「その結果、ケトラーが知っているところまで、今までの歴史が書いてあるということだった。そして、予言の全貌がついに見えてきたぞ!」


そこら中から歓声が上がったが、そこには不安の声もあった。


「『勝利を持つ者達が最後に集まる時、戦ヲ司ル者はいる』戦ヲ司ル者は長年その存在は確認されていたものの、それが何の役割を果たすのかが不明だった謎だ。ここへ来て人間と我々の間の関係が明らかになった。勝利をつかむものの中には、戦ヲ司ル者がいる。ただ、このように呼ばれるものが誰なのかがわかっていない。この文から皆で考察していきたいと思う。良いか。」


サベルト総長がみんなに聞くと、会場は叫び声で埋め尽くされた。


「ということで、闇騎士は快斗を加え200人が揃った。そろそろ全面戦争のときだ。今回はそれについて会議する。」


そして、会議が始まった。驚いたのは、サベルト総長がほとんど何も喋らないということだ。俺は総長がひたすらに喋るものだと思っていたが、会議の軌道修正とまとめくらいしかせず、それ以外何も言わなかった。


「快斗が200人目だ。200で全員が揃うのだから、最後に加わった快斗が戦ヲ司ル者で良いのでは?」


会議はその意見がほとんどで、その答えでもう決定のような雰囲気だった。その時だった。


「アセステトラー家の書物でこの話が出てきたのに、アケステトラー家のものが、戦ヲ司ル者でないのは、少し変じゃないか?」


その場にいた全員が静まり返った、特にケトラーは。


「なぜ俺がやることになるんだ。アケステトラー家はそこまで欲深い一家じゃない。少なくとも元人間の俺は。」


「そうですな。」


主張した人もその言葉に納得した。すると、サベルト総長は言った。


「よし、決まりだ。戦ヲ司ル者は、快斗にやってもらう。決まりだ。以上。全員自分の居場所に戻ってくれ。」


俺は唖然とケトラーを見つめていた。ケトラーもまた、下を向いてひたすらに考え込んでいた。



 次の日の会議では、一応の形としての信任投票と、これからについての話が行われた。しかし、ケトラー曰く、伝説に則るための儀式に過ぎないという。そのようなものが終わり、会議は終わりを迎えた。


「今回の会議はこれにて終了だ。これから、臨時の会議が増えてくるだろう。皆の協力をお願いする。1日余ったな、明日は快斗に色々と教える日としよう。快斗、覚悟しとけ。以上だ。ありがとう。」


俺たちも居場所に戻った。ケトラーは流れるように言った。


「腹が減ったな。」


「肉が食べたいです。」


「人肉でも食ってろ。」


闇石の常識を知らない俺にとって、その言葉が冗談だとは気付かなかった。

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