第6章 サベルト総長

 俺はケトラーと共に、いるほど居心地が良くなっていく、ボイドの世界の旅をしていた。

途中で敵対的なクリーチャーに何度もあったが、すべて俺が倒した(ギリギリだったが)。歩いていると、やがて大きな樹海が目の前に壁のように現れた。


「ここは『死ノ森』だ。ここには敵対的なクリーチャーが数多く生息する場所だ。総会議場はこの森の真ん中の穴場にある。つまりこの森を抜けなければ、総会に出れないということだ。さあ、行くぞ。」


「はい。蹴散らしてやります!」


俺は自信を持って答えた。しかし、後々自分がこのボイド世界を舐め腐っていたという事実に気づくのだった。



 死ノ森に入ると、すぐに敵対的クリーチャーはうじゃうじゃと湧いてきた。それを魚を裁くかのように一掃していくケトラーに感心していると、


「後ろ!」


と言われて俺は振り向いた。後ろには2メートルを有に超える程のでかいクリーチャーが仁王立ちしていた。すでに奴は手を振り上げていた。瞬時に横に避けたからなんとかなったが、それがなければ、致命傷だったかもしれない。


「主!クリーチストじゃねえか。」


「クリーチストってなんですか!?」


「話はあとだ。とりあえず俺が戦うから下がってろ。」


ケトラーの言葉を無視して俺は、構わず飛びかかった。しかし、多種多様な攻撃の数々。圧倒的なスピードで繰り出される衝撃波による遠距離攻撃。


翻弄されたまま、体力が底をつきかけた時、衝撃波によって俺は飛ばされた。ケトラーがすぐさまホールを投げたが、それを軽々と手で掴み、奴はホールを投げ返してきた。ケトラーは腕を撃ち抜かれた。


腕を抱えたままのケトラーと飛ばされて痛みに苦しみ立てない俺の近くで、奴は手を限界まで振り上げた。俺達は死を覚悟した。その時だった。


光のようにホールが1本、奴の胸を射抜いた。そしてもう一本、奴は倒れ込んだ。俺は奴の死を見届けたところで、気を失った。


 気がつくと、ケトラーともう一人の男が、死ノ森の中で、火を炊いていた。男は言った。


「気がついたか。ひとまずもう安心しろ。クリーチャーは光には寄ってこないから。」


誰だかわからず、困惑していると、


「サベルト総長だよ。あの時俺達を助けてくれた。」


「ありがとうございます。」


「いいんだ。あれはクリーチャーの中でも一段と強い『クリーチスト』の中の一種だからね。」


「はあ。」


ケトラーが言ってた意味がやっとわかった。


「まあいい。お前はゆっくりしてろ。あれとあそこまで戦えたことは、すごいことだ。戦い方はめちゃくちゃだがな。」


ケトラーは笑いながら言った。気がつくと俺は寝ていた。朝だ。起きるともう二人は焚火の火を消す準備をしていた。


「起きたか。総会議場までもう少しだ。行くぞ。お前は戦わなくていい。総長の戦い方をよくみて勉強しろ。」


「はい」


サベルト総長の、戦い方は凄まじいものだった。ナイフの回転だけでクリーチャーを倒していく。そして動きも、滑らかなものだった。気付けば大きな壁。そこにある扉の前に立っていた。扉を開けると、広場が広がっていた。


「ここが、総会議場だ。」


ケトラーは言った。思っていた以上に広かった。


「改めて!僕の名前はサベルト。闇騎士総会議の総長をやっているんだ。まあ、今は闇騎士の中で一番偉い人ってことになるのかな。まあ、あんまり固くならずに、これからよろしく!」


「あっはい。僕は千葉快斗です。よろしくお願いします。」


すると、サベルト総長は微笑んだ。


「快斗。名字は言わないでいいのだぞ。闇騎士はほとんどの人が、名字を持っていない。持っていても話さないのが常識だ。闇騎士のな。」


ケトラーは笑いながら言った。俺はムッとなって言い返した。


「分かんないんだから仕方ないじゃないですか。」


「まあそういうのも、後々わかってくるよ。」


サベルト総長は、俺の予想に反して、とても優しく、活気溢れる人だった。


「総会議まであと二日ある。ここには闇騎士たちにとっての娯楽がたくさんあるからな。遊んでこい。」


ケトラーは言った。総会議場の中を散歩していると本当に娯楽のようなものがたくさんあった。奥にはたくさんのナイフと、たくさんのホールがある倉庫を見つけた。きれいな武器達に見とれていると、後ろで声がした。


「みねぇ顔だな、例の新入りか?」


「は、はい」


「そうか。名は?」


「快斗です。」


「誰の弟子だ?」


「ケトラーの弟子です。」


そう言うと彼は静かに微笑んだ。


「噂は聞いてるよ。恐ろしく成長が早いんだって?ケトラーの野郎がほざいてたぜ。俺の名はヤック。闇騎士で唯一の武器鍛冶だ。ケトラーからホールとナイフ貰っただろ。」


「はい。」


「あれは俺があいつに渡したやつだ。大事に使えよ。」


「はい。ありがとうございます。」


「それから、これからよろしく。」


「はい!」


ヤックは声こそ静かだったが、マントの内側から隆々とした筋肉がはみ出ていた。ケトラーがやってきた。


「ヤック。調子はどうだ。」


「お前に心配されるほど悪くはない。」


「そりゃそうかい。」


「こいつの話は聞いたか?」


「はい」


「こいつはな、闇騎士の中でも随一の腕前を持つやつだ。こん度暇だったら喋ってみると良い。面白いぞ。」


闇騎士はみんな仲が良い。信用が全ての世界であるからなのかもしれない。

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