第33話 ドサ回り③


「こちらだ、ニンゲンよ」



不意に声をかけられ戸惑っていると、さらに声は続いた。



「窓の外をご覧」



う、うおおおお。これ・・・神様か?


デカい!!説明不要なほどにでっかい・・・!!

これはあれだ、ウォリック様よりも大きいぞ。そして恐らく同系統の神様であろう。体が岩石や土・・・そして木々でできている。ウォリックのパパです、と言われたら速攻で信じる自信がある。




「私は大地の神、バーランド」




「お前はウォリックと仲が良いようだ。あれは私の子供のようなもの」



「私共々、あれのことも・・・よろしく頼む」



「はい・・・こちらこそ、喜んで・・・!」




良く響く、落ち着きのある声だ。

品があるというかなんというか・・・流石は大地の神といったところか。てかやっぱりウォリック様の関係者だったし。今の時点で既に、俺の心象はめちゃくちゃ良い。




「あの、石板で読みました。バーランド様のお名前を冠した鉱石があり・・・それが地上で最も硬い石なのだとか」




「ああ、お前は中々よく知っている・・・だがまあ、まだ人の知らない石もあろうがな」




「まだ見ぬ石・・・ですか」



「うむ。お前も地上へ降りたら探してみるといい」



「はい・・・。私はゴレムスとして転生し、土石術も扱うつもりでおります。何やら石というものに縁を感じますゆえ、心に留めておきます」



「そうすると良い。私とウォリックの恩寵が、それを助けるだろう」



「頼み事だが、まだ無い。後に知らせるということで・・・良いか?」



「もちろんです。いつでも歓迎いたします」



あい分かった」



「ではまた会おう、ニンゲン」




そうやってバーランド様とお別れした。

うん、素敵な方だった。土石術に関わる神様は全体的に穏やかでナイスな神様なんじゃなかろうか。どれ程いらっしゃるのか知らんけども。


それにしても、地上の鉱物学者が叫びそうなネタバレをサラっと言ってた気がするな・・・。


あの口ぶり、「お前らが最強だと思ってるバーランダイト以上に硬い鉱石、まだあるよ~?」と言ってるようなものじゃないか・・・。俺の気のせいかもしれんが、俺にはそう聞こえたね。



恩寵によって鉱石探しが容易になる、的なことも仰ってたしな・・・鉱山とか見付けたらマジでワンチャン掘ってみるべ。そんで新種の鉱石見付けちゃって、名前付けちゃって・・・なんてね。





・・・






人間の少女の姿・・・だと思っていた。


部屋の中央に突然現れたその神は、俺を見るなりドロリと姿を変えたのだ。

顏が溶けた。血を連想させる赤黒いドロドロに変わり果てた少女の顏は、そのまま耳障りな声を上げる。



「イヒ、イヒヒ・・・ばぁ~~~・・・!!」



狐につままれたような、言葉を失っている俺にさらに神は言った。




「ハイ~~~~!!ケイオ~~~~ス!!!!!」




「はいナイスケイオス~~~~!こ・ん・とん!混・沌!ハイ~~~!!」




「というワケでアチシ~~~~、混沌の神!!」




「ヨーグちゃんで~~~~~~~~す!!ワーーーーーーーオ!!!」




顏が元に戻った。顔は超かわいいが、テンションがバカ高い。どうしよう。




ハッとした。ここはノらなきゃ駄目だ。

ここで働く弱者の知恵・・・!

三下の構え、三の型・・・”宴会ノリ”・・・・!!




「いよっしゃ来たヨーグちゃんキタキタ~~~~!!」


「フォオオオ~~~~~ウ!!!こっち見て~~!!最高~~~!!!」




「ワオ!!オーディエンスが一瞬で沸いちまったのは誰のせいダ~~??」




「ヨーグちゃん!!それヨーグちゃん!!アホイ!!」



「ダハハ~~~~!!おま!ヒィ~~!!ノリ良すぎぃ~~~!!」




「ダチこうじゃ~ん!!えいダ・チ・公!ダ・チ・公!」



「恐縮で~~~す!!ダ・チ・公!ういダ・チ・公!」




ゲラゲラゲラ・・・神様、もといヨーグちゃんは汚めな声で爆笑している・・・

やべ~、ノリ合わせたはいいものの、これ会話になんねーぞ・・・




「はい、スン!」



ピタァ!急に動きを止め、真顔で遠くを見つめる体勢になったヨーグちゃん。


沈黙が流れる。


俺ももちろん黙る。っていうかこれは喋れない空気だ。





「神界は、ちゅまらんの。そんな時ヨーグちゃんは、ポエム打つんだゆ」



ポエム・・・?



「今日も、明日も、5年後も、ノットケイオス。ビチグソだゆ」




「ビチグソの悪口言うな!!オイ!!!!!」



「喧噪、争いが生まれるゆ・・・」



「う~~~ん、最高!!!争い最高!!!!」



「ドドスコ混沌☆ドドスコ混沌♪」






ダメだ・・・・これは・・・ノリきれん・・・・・

ワイの負けや・・・・どうしろってんだ・・・




「・・・お前のケイオス・パワーはそこまでのようね」



バン!!

ポーズを決めたヨーグちゃんに蔑みの目で見られる俺。




「オッケ、オッケ~イ。パワーを下げてあげまぁす?」




下げまぁす?下げまぁす?そう言いながらゆっくりとしゃがんでいくヨーグちゃん。



「ハイ、え~アチシからのお題は追って後から伝えまぁす」



「サイコーにケイオスなお題にするので、おっ楽しみ~!!」


「バイバ~~~イ!!!チュ!!ンチュ!!?オエ~~~~!!!」









嵐が去った・・・

マジでこの言葉が似合う。嵐のようなお方だった。

あれにテンション合わせられる人いんのかな。いや、いないね。絶対・・・



あんな神様もいるんやね。なんか疲れたけど、ちょっと笑ったわ。ありがとう、ヨーグちゃん。てか敬称じゃなくていいのかよ、ヨーグちゃん・・・

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