第34話 ドサ回り④
「ここか」
「ここだな」
ボシュ!
煙・・・!?いやこれは、水蒸気・・・?
うお、てか・・・この水蒸気、あったけ~~!!
一瞬でミストサウナのようになってしまったこの部屋に、2柱の神の姿があった。
「「我は・・・」」
「おい、我が先だ」
「何を言う。我が先だ」
「「貴様ぁ・・・」」
べ、別にどちらでも良い・・・
だが、目の前の2柱の神から発せられるオーラというか熱気に
神は双方共に人の姿をしているものの、その肌の色と髪に大きな特徴があった。
赤い肌と、バーナーで火を焚いているかのような・・・燃える髪を持つ神。青い肌と、止まって見えるかのような水流が髪となっている神。
これはもう、何の神だか分かっちゃったかもな・・・
「失礼ながら発言をさせて頂きます」
「「許す」」
「火の神様と、水の神様であられますでしょうか?」
「「その通り」」
「おい、被せるな」
「こっちの台詞だ」
「埒が明かん。我が火の神、レッドカーなり」
「卑怯な」
「黙れ。そしてこれが水の神・・・」
「何故我に言わせん」
「では早く言え」
「黙れ。我が水の神、タインディアなり」
仲が良いのか悪いのかマジで分からん・・・
てかちょっと漫才めいているな。なんだこれ・・・笑
「どちらが先にお前の元に参るか、議論の末こうなった」
「忌々しい事に我らは双子ゆえ、同時に参ったということよ」
「な、なるほど・・・」
「格の高い2柱の神様方に、同時に謁見できること。これはこの上ない喜びです」
「「そうであろう」」
はい・・・でもちょっと、やりにくいっす・・・
「ム、貴様のせいでニンゲンが話辛そうだ」
「フン、我ではない。貴様のせいだ。確実にな」
「何故、確実などと言い切れる」
「貴様の炎のせいだ。馬鹿者め。熱がっているのだろう」
「貴様の水のせいでジトジトしているのが分からんか?」
「さらに馬鹿を晒したな。ニンゲンは肌を保湿するものだ」
「「なんだ?貴様ぁ・・・」」
駄目だ。俺がなんとかしないと・・・
「それでは神様、私に対する依頼のほうはお考えでしょうか?」
「「まだだ」」
「では、その依頼の方はお早くお考え頂いた方からということで・・・」
「「ムムゥン!?」」
「我は用事ができた。先に帰らせてもらう。また会おう、ニンゲン」
「相変わらず卑劣な。我も依頼を考えさせてもらう。ではな、ニンゲン」
「は、はい・・・」
行ってしまった・・・
きっとかなり格の高い神様だったハズなのだが・・・このノリのせいでオモシロ双子の印象が付いてしまった・・・笑
なんか光神様の影響で位の高そうな神様にはビビッてしまっていたのだが・・・神様によるんだな、結局・・・
・・・
「ルートンだ。知識の神と呼ばれている」
紫色の品の良いローブを着こなした、頭がフクロウの鳥人の姿をした神。あれだ、中でもメンフクロウに似てらっしゃるな。知識の神と言うだけあって頭が良さそうな印象で・・・何かこちらの様子を伺ってらっしゃる。
「・・・よし。整った。では君にクイズを出題する」
「ええ?あ、分かりました・・・」
「唯一人の上にあり、人を見つめ、人の身体の一部でもあるものは、何だ?」
人の上にある・・・太陽とか、空?見つめていて・・・一部・・・?
でもあるもの、と前半は切り離して考えて大丈夫だろ・・・言い換え・・・同音異義語?
あ、これか・・・?いやでも、これ日本語だよな・・・
「はい、神様」
「どうぞ、ニンゲン君」
「正解は神です。人の一部というのはその・・・髪のことですか・・・?」
「ホロゥ、正解!君はやはり、ニホンジンだったか!」
「ええ!?はい、そうですが・・・私の人種まで当てられるとは・・・」
「ホロロゥ。私はね、君たち異世界人が大好きなのだよ」
「この世界に無い知識の宝庫だ。それが例え、くだらないことだって良い」
「私が知らない、ということが素晴らしいのだよ。分かるかね?」
「で、ではやはり・・・私が日本人であり、日本語では神様と毛髪の髪が同音異義語だということまで知っていて・・・あの問題を出されたと・・・?」
「無論、その通りさ」
なんという知識量。これには流石に
神は意識レベルでの会話を行う・・・なので言葉遊びは伝わらないはずだ。英語で神と髪の発音が違うように、意味情報を使って会話を理解している神とはダジャレの言い合いというものができない。
それを補ってシャレをかますのには語学の知識が必要となる。
さらには、俺の風貌から日本人ということまで看破する推察力。だから最初に様子を伺われている感覚があったのか。
「君には時々、私から質問をさせてもらおうと思っている。何、質問と言っても雑談のようなものさ。君の世界の事を教えて欲しいんだ」
「今までも地球人とは何度も話をしたよ。でも地上に降りてしまうとニンゲンはすぐに死んだり、信仰を忘れてしまったりする。だから継続的に仲を深められる存在は少なかったのさ」
「その点、君には悪神様というパートナーもいる。すぐには死なず、目標があり、信仰心も厚そうだ」
「だから私の依頼はこれさ。私の知識欲を満たして欲しい」
「理解いたしました。ルートン様。私にとっても、神様とお話するだけで依頼が達成できるというのは喜ばしいことです。ありがとうございます」
「いいのさ。本当に私には、この欲しかないものでね」
ではまた。と言い残してルートン様は去っていった。
また一つ、依頼を言い渡されたな。しかも簡単かつ、俺にとっても楽しみなイベントができてしまった・・・という感触だ。
知識の神様と時々会話ができるというのは、まさに
今の時点で・・・11柱か。結構な数になってきたな。
そろそろか・・・?と思っていたところで、悪神様の気配がした。
シュン
「どうだあ、調子はよお」
「あっす。悪神様のおかげ様で、めっちゃ神様と知り合えたっす」
「オウ。ここまでは思惑通りってなカンジだあな・・・」
「ホントはよお、まだ神界に起きてる神はいるんだが・・・残りはどうも、クセが強くてよお。オメ~とは会いたがらねえ」
「そもそも、オメーの星との戦争が始まっちまえばいいと思ってるヤツが・・・まあまあいるんだわな。コレが」
「うーわ、マジすか・・・超好戦的っていうか・・・暇潰し感覚なんすかね・・・」
「そのどちらでもある・・・ってカンジだな。まあ実際、オレ様も竜神にコケにされてなきゃあ・・・戦争推進派だったかもなあ・・・クホホ・・・」
「うわあ・・・悪神様がコッチ側で、良かったっすわ・・・絶対面倒くさいもん・・・」
「ケケ・・・まあオメーみたいなガキはシカトして、イベントを楽しんでただろうなあ・・・」
そう言いながら悪神様は俺にアームロックを仕掛けてくる。
「タップタップ、降参です。あとダル絡みウザいっす」
「・・・オメーはホント、敬意に欠けるっつうか・・・ハア、まあいいわ」
一拍置いてから、悪神様が俺に向き直った。いやに真剣な眼差しで俺を見る・・・一つしかないその単眼が、俺を捉えて離さない。
「オウ、ニンゲン。喜べ」
「準備は整ったと言っていい。つまりお前は・・・」
「もう転生しちまえ」
「え?」
俺、ついに行くんか・・・?
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