第29話 悪巧み


「ヤツらをブッ殺すための勝利条件は・・・神議会しんぎかいの招集だあ・・・」



神議会しんぎかい・・・なんですのん、それは・・・




「コイツは神が行う裁判でよ、神が神を処刑できる唯一の手段がコレって訳だあ・・・」


「本来、オレ様がすぐにでもヤツらをボコしてえトコなんだが・・・」


「神同士の私闘は大昔に禁じられてんだあ・・・世界にバカ程影響が出ちまうからな。だから、この裁判を使ってヤツらを殺す」




「そんでもってココが重要なんだが・・・」


「神議会の招集には、全ての神の過半数の賛同か・・・」


「もしくは大量のチップが必要になる。神が賭けに使ってる、自分の自由を元手に買うコインのことだな・・・」




「このどちらか一方を、オレ様とお前でかき集めることができりゃあ・・・勝ちだ」





「悪神様・・・裁判を招集できた時点で勝ち・・・って程に、竜神が犯した罪って重いものなんですか?」



悪神様が滅茶苦茶ワルい顔で、ニタァと笑う。



「オメーが考えてるよりも、竜神がやったことは大罪だあ」


「別のホシから貰った魂に対してやっていいことじゃあねえんだよ。あのレベルの精神汚染はな・・・最悪これはオメーのホシの神との戦争になり得るハナシだあ・・・」




地球の神との戦争・・・!

これは予想外のスケールの話になってきたな・・・ん?



「悪神様、そんな一大事なら・・・普通に過半数の賛同って得られるんじゃあないですかい?」



「ソコなんだよな・・・」


ハア、とため息をつく悪神様。なんか、めちゃくちゃ萎えてらっしゃる。



「プリマスがよ、幽閉中だろ?」


「同じように謹慎きんしん食らってる神の数は・・・どんなもんだと思う?」



「まさか・・・」



「そのまさかだあ・・・情けねえコトに、賭けが流行りすぎちまったせいで・・・起きてる神の数は滅茶苦茶少ねえ」


「それこそ過半数の票に満たねえホドにな・・・」



おいおい、神様・・・ギャンブル好きにもほどがあるだろ・・・



「オレ様もそう思う。まあオレ様の場合は負けねえからカンケーねえんだがよ」


「流石っす」


「オウ」





「後はまあ、他人に興味がねえヤツとか、引きこもってるヤツとか・・・そんなヤツらのせいで正攻法じゃ神議会は起こらねえってのが現状だあ・・・」



「だから正味のハナシ、チップをかき集めるしかねえ」



「その方法にも2つある。シンプルにオレ様が賭けでバカ勝ちするか・・・」


「他の神に声かけて回ってチンマリじっくり募金で集めるか」





「前者であれば・・・オメーがマイナーな種族で転生して、地上で天下を取れば賭けには勝てる」



え、天下って言ったか・・・?俺が・・・?



「おっと、何もチカラで天下統一をしろって言ってるワケじゃねえ。何でもいい、何かの分野でオメーが一番を取ればいいってことだあ・・・それも、意外な種族でな」



「分かり易いように言ってやる。大穴になれって言ってんだよ、レースのよお」



「つ、つまり・・・俺が悪神様の馬になって・・・ダークホースみたいにレースを・・・神々の賭けを荒らせってことっすか?」



「その通りだあ、クサレ脳みそ」



「ただまあ・・・オメーが地上でどんだけ成り上がれるか、そいつはやってみねえと分かんねえ・・・ぶっちゃけそれ自体が賭けになっちまう。これは策とは言えねえな」



「そうっすよ、俺なんか全然無理っす。そのセンで行け!って言われるかと思って焦ったっす!」



「カスビビリがあ・・・まあ難しいってことはオレ様にも分かる。だから成り上がりパターンはサブ案として・・・」



「本命は、仕方ねえけど後者の募金。コレになっちまうわな」



「募金・・・ですか。それって俺に何かできることって、あるんすか?」



「アリアリよお・・・さっき思いついちまったんだわ。オメーの使い方」




ニコニコしながら悪神様がズイっと俺に顔を近づける。

なんすか。こええっす。




「募金、なんてもんに参加するような神は少ねえ。だからよお、商売にすんだよ」


「神界にいながらも、地上に干渉できる新しいビジネス・・・」



「その名も、転生者のクソ便利屋!!・・・転生者のカスパシリ君でも良いな・・・」



「オメーには今からできる限りのクライアントに会ってもらう。この転生前の状態でだ」


「都合のいい事にオメーは精神汚染にかかってねえ。どんだけ多くの神を信じてもいい状況にあるってコトだあ。コレがデカい!」


「今から出来るだけ多くの神の信者になれ。そんでオメーが地上に転生してからも、祈りによって神と交信が取れる準備を整えておくんだあ・・・」




「そうすっと何ができる?客の神が、オメーを通して自由に地上に干渉できるようになるってワケだ。依頼クエストってカタチでよお!クホホ!」



「そんで依頼料はもちろん、神界でオレ様が頂くっつう寸法すんぽうよ。どうだ、上手くできてると思うだろうが?コイツは神のルールにもスレスレで触れねえ、上等な策よお!クホホ・・・」



「チップがある程度溜まったら、プリマスを解放してやってもいいんだぜ・・・オメーの理想にも近づくだろ~が!」




「悪神様ぁ・・・でもそれって結構・・・いや滅茶苦茶俺の負荷がエグくないっすかあ・・・」



「オイオ~~~イ!!オメ~~また口答えかよ!!」


「オレ様はオレ様で、賭けでチマチマ勝っとくしよ~~、なんなら地上のオメーをアシストしてやってもいいんだぜ?」






「アシストって何だ?ってツラしてんなあ、アレだよアレ!カンが悪りいな・・・」






「悪神の恩寵、特大で付けてやってもいいんだぜ・・・?クソガキィ・・・」









「やるっす」



「クホハ!!現金なガキだぜ~~全くよお!!」




特大、恩寵・・・。悪神様の恩寵だから犯罪めいた才能を発揮しそうで若干怖いが、神からの特大の恩寵が・・・弱いワケが無い。


俺が第二の人生を歩むうえで、これはかなりのチカラになってくれるんじゃなかろうか?これってチートみたいなもんか?チートなのか?来ちゃったのかあ!?はわ、はわわ・・・悪神様、しゅき・・・




「オ、オイ・・・帰ってこい・・・考えてることキメ~ぞ・・・」




「あ、サセン・・・戻りました」


「ちなみに悪神様の恩寵・・・どんな効力があるんすか?」





「オウ。そりゃお前、サイコーよ」


「犯罪!!犯罪の成功率がバカ高くなる!!コレよお~!!」


「オメーが悪事を働く時、オレ様の恩寵が発動する。盗みなら五感がバカ高くなって、バレずにコトを収められる・・・」


「殺しなら、相手の動きがよく見えるようになるなあ。精神の負担も軽くなって、ヤりやすくなるだろうしな!クホホ!」


「あとは悪運!コレに尽きるよなあ。悪事にも運ってのは必要だあ。このオレ様の悪運をオメーにも分けてやるっつってんだあ、喜びやがれ!ウイ!」






あ、あんまり素直に喜べねえ~~・・・


俺、自分で言うのも何だけどあんまり悪党ってカンジじゃないんだよなあ。転生した後も、普通に現代人の倫理観が抜け無さそうだし・・・いやきっと生きてりゃ止むを得ずに誰かを殺すことも・・・あるだろうしな・・・異世界、野蛮だろうからな・・・





「・・・あんま喜んでねえのバレてっぞ。チンカスコラ」



「いえ!あの、ぶっちゃけあんま適正は無さそうではあるっすけど・・・ありがたく頂戴したいっす・・・これはマジで」



「ああ・・・そうだわ、オメー悪の適正がねえんだったわ。そしたら特大は無理かもしんねえな・・・体に馴染まねえかもしんねえ」




「あ、そういうのあるんすか」



「オウ・・・ッカ~~!!もったいねえなあオメーバカがよ~~~・・・」


「よくて中くらいの恩寵だなあ、オメーには。こればっかりはしょうがねえ・・・」



特大から中か・・・なんかションボリしてしまった。いや、元から上手く使える自信無かったからいいんだけどさ・・・




「まあ、他にも何か考えておいてやっからよお。とりあえずオメーがやることは・・・」



「神への顔見せの前に、スキルと種族を決めておくこった。テメーが何が出来て、何が出来ないんだっつうことを明確にしとかねえといけねえ・・・」


「商品ってのは、そういうもんだあ・・・」




確かに。俺は便利屋になるんだ・・・どんな依頼が来るにしたって、俺自身の情報がキチンとまとまってないと依頼なんて出し辛いだろう。



「了解っす。じゃあ・・・もうこの場で決めちまいますね」


「お、もうイケんのかよ?」








「はい・・・散々読み込んだんで・・・もうほとんど心は決まってるんです」



「俺が選ぶのは・・・」





俺は、悪神様にキャラクリの完成図を説明し始めた・・・・


















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