第27話 渾身の密告《チクり》
「悪神様!おいでくださいまし!悪神様ぁ~!?」
・・・あれ、聞こえんかったかな。
「私で~~~す!!悪神様ぁ~~~~~!?」
・・・近くにいねえのか?
「ワッサ~~~~~~~!!悪神様イズ・ど・こ~~~~~~~!?」
「ポォンポン!!カ~マンゲッチャ!!ユノンセ~~~~ン!!!」
「エビバデフォロミ~おっしゃイクぞ~~~~~~~~~~!!!!!!」
「あ・く・しん!!セイ!あ・く・しん!!」
「エビバ~~~~デ~~~~~~!!!!!!!」
「さ~~~~わ~~~~~~げ~~~~~~~!!!!!」
・・・あれ~?全然来ねえ~
シュンッ
お、ようやく登場なすった。
「殺されてえのか!!!!バカガキ!!!!」
ゴチン☆
・・・お約束みたいに悪神様にゲンコを貰ってしまったでござる。
「お前もう、本気でフザケちゃってるじゃん。ウザすぎ。」
「前も言ったよな。もう聞かねえぞ、そんなことやってっと。な?」
「・・・はい。申し訳ねっす・・・」
「悪気がねえのは伝わってくんだわ。悪の神だから、オレ様も」
「でもな、神だから。誠意見せないと。失礼じゃねえの?こういうの」
「マジでおっしゃる通りです。すませんした・・・」
「もういいよ、バカなんだからお前は。普通に。許す。」
「はい本題行け。GO。」
「うす。ご報告の内容、固まったんで発表します。おなしゃす。」
「おう、やれ」
気持ちを切り替えて、俺はつらつらと報告を始めた。
「悪神様、まずは悪神様がおっしゃる【転生者の中でも飛びぬけて調子に乗ってるグループ】ってのが何の種族なのか?というご質問でしたよね」
「おう、分かったか?」
「竜の眷属、ドラゴンベインです。間違い無いっす」
「・・・ホントにそれでいいのかあ?」
「コレで間違ってやがったらオレ様、帰っちまうぞ?」
「間違い、無いっす」
「・・・クホホ。良いな!正解だぞ、ニンゲン!」
「じゃあ次は理由だ。なんで分かった?なんでコイツらが異常に増えてる?推測とかじゃねえ、証拠を押さえたんだろ?そのツラはよ・・・!!」
「もちろんっす」
俺はタブレットを取り出し、悪神様に画面を直接見てもらおうと・・・
「待て、やめろ。読めねえようになってやがんだよ」
「えっ」
「その石板の文字はよお、お前が死んだ世界の、お前の国の文字なんだよ」
「いくら神って言ったって別の世界の文字まで知ってるヤツはいねえんだよ。普通は」
「ただ、その石板の担当者になった神はお前の世界の神とコンタクトを取れるんだな、コレが」
「そんでもってテメーで書いた文章をお前のトコの神に翻訳させて、完成版を提出させてんだわ。パシリみてえに使ってるってワケだな」
「そんなことやってっから、担当者の神はいつの間にか読めるようになってっかもな。お前の世界の言葉を」
「え、でも神様。俺たち今会話できてますよね?文字はダメで言語はいけるんすか?」
「そう。オレ様達、神は生物の思考を読んでソイツが何を喋ろうとしてんのか理解できる。意味情報だけ流れ込んでくるってカンジだ。逆に今、オメーにも俺の思考を送り付けてるから会話が成り立ってる」
「それが神の持つ自動翻訳の力の仕組みだ。だから表層の思考なんかはモロ見えよ。お前はなかなか正直モンみたいだから、嘘は今のところついてねえみてえだな」
「だからお前が本当にオレ様のこと舐めてんだったら分かるんだよ。マジでキモいが・・・お前のそれは愛情表現みてえだから、だからオレ様もギリ許してやってんだ」
「そういう訳だから、お前がクチで喋れ」
おいおい、マジかよ。神様、心読めるっぽい。
よかった~~失礼なこと考えなくて!根っからの
「クホッ!!バ~~~カ、そうやって安心してるのも分かっちまうんだよ。ゲボカス君。クホホ・・・」
「・・・了解っす。まあ俺が結構、悪神様のこと好きなのも伝わってるみたいで安心っす」
「おいおい、きめえからよ・・・やめろや・・・笑。オレ様が
「うす」
神はタブレットの中身を読めないという事実、これを知ってから頭の中でピースがはまっていくような感覚を覚えた。
もしかして悪神様は以前からタブレットを深く読み込み、分析できる者を探していたのではないだろうか。既に当たりを付けていたんじゃなかろうか。自分の疑問を解消する鍵は、タブレットの中にあると。
だからこそ、俺なんかに期待してくれた。不安症の、検証オタク君に。
口には出さないが、俺と初めて喋った時に「こいつだ!」と思ったに違いない。
歯痒かっただろう。神ともあろう者が、読めない証拠を眼前にちらつかされて。待っていたんだ。俺みたいなヤツを。
きっと、俺以外の人間にも悪神様はクエストを出したことがあったんじゃないか?そして、今までそれは失敗していた・・・普通はここまで読み込むヤツなんていないだろうから・・・
この期待に応えてやりたい。
俺はここで心を決めた。
「汚染」のことを含め、俺が知り得た情報の全てをこの神に喋る。
改悪の元凶は恐らく竜の陣営であるし、悪神様はそこに
そして何より、
この神の執念深さ、気に入らないことは全力で潰してやるっていう、問題解決への姿勢。静かな、悪賢さ。この神にカマす
お互いが利用し合う間柄ではある。しかし、それが悪の神との付き合い方なんじゃないのか。それこそが、この神へのリスペクトに繋がるような気さえした。
「神様、出過ぎたことを言っちゃいますが。俺この転生の儀式が気に入らねえっす」
「罠みたいな作りになってるんです。ドラゴンベインの種族詳細には・・・」
俺は洗いざらい全てを悪神様に伝えた。
まずは精神汚染(極大)~(小)が存在すること。ドラゴンベインは妙な半額キャンペーンを行っていること。この極悪コンボのおかげで恐らく、ドラゴンベインの個体数が増えてるということ。
そもそも転生を拒否できる機能が削除されていることから、操作方法のヒントが無くて時間をかけてそれを暴いたこと。2ページ目の存在のこと。
このキャラクリにおける「仮決め」のシステムと「汚染」の相性の悪さについて。
俺がこれらに怒っていること。この改悪の元凶が、許せないということ・・・
・・・
黙って俺の報告を聞いていた悪神様だが、次第に顔を歪めていった。
口が、今まで見えなかった悪神様の口が大きく広げられ・・・笑っている。
「やってくれたじゃねえか・・・サーロック・・・」
キレてる。
付き合いの短い俺でも分かる。周囲に舞う黒い霧状のオーラがゆっくりと渦を巻き、ピリピリとした空気が部屋の中を包み込んだ。
「サーロックってのは・・・竜神の名前だぁ・・・」
「オレ様よりも全ッ然コーハイの・・・ガキだぁ・・・」
「ソイツにナメた真似されてたんだって・・・陰でベロ出して笑われてたんだってことがよ・・・オメーのおかげで良~く分かったわ」
「よくやった。ちっぽけなクズニンゲンの中でも、お前は最高級のクズだぁ・・・」
「ありがとうございます。それで悪神様、これってやっぱ神々のルール的には・・・」
「ビチグソカスの大集会よぉ。ルール違反のオンパレードだこりゃ」
「・・・オレ様はもう決めちまった。アイツは殺す・・・神殺しってのはそりゃまあ面倒なことだが、関係ねぇ・・・殺す・・・」
「お前、協力しろっつったら・・・どうする」
「え?」
「いやあの」
「やるっす」
殺ることになっちまった。
し、承諾しちまったよ・・・反射で・・・・!!!!!
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