支配欲
城崎瞬清
全て
あの人は血と愛に飢えていた
唐沢春生は桜木組の舎弟頭だ。まだ25と若いが組長が推薦するほど腕には長けていた
そして組長の夜の相手でもあった。
簡潔に言うと組長の秘密を知ってしまったのだ、そして舎弟や自分の命と引換えにその身を捧げたのだ
結果的に死んだようなものだった。口答えをすれば消される。そんなことくらい25の青年でもわかった。
だからこそその身を捧げたのだ。
「唐沢来てくれ」
その言葉が合図だった。
唐沢は言われるがまま組長の部屋に行く
応接間であり寝室でもあるその場所は構成員の寝室の二倍ほどの広さがある。
組長が着物の帯を触る、それが服を脱ぐときの合図だった。
唐沢はジャケットを脱いでネクタイを解く、全裸になると組長の前で膝をつく、これが唐沢の準備の合図だった。
組長は帯を解くとまだ起き上がっていないアレを唐沢の前に出す。
唐沢はそれを口の中いっぱいで愛でる、少しずつ大きくなるソレを唐沢は自分の口いっぱいでむかえいれた。唐沢は喉の奥までソレを迎え入れた。しかし組長は満足できず乱暴に髪を掴み奥の奥まで突いた。
どのくらい経ったか唐沢も限界だった。何度も嗚咽し涙もよだれも垂らした
しかしこれは余興に過ぎない。本番はこれからだった
組長は唐沢の腕をネクタイで縛り上げ仰向けに寝かせた。
別に慣らす必要はないあくまでも組長の快楽のための道具だった
唐沢は痛みに耐えていた。痛い、やめてほしい。そんな言葉は組長の地雷を踏みかねない
黙って耐えることが一番だった。
気がつくと朝になっていた唐沢は組長の部屋で一晩を明かしていた
組長はそこにいなかった。唐沢は支度を済ませ朝食を食べた。「唐沢さん」声をかけてきたのは一番弟子の新道だった。「松田さんの見舞いに行くんですけど」唐沢はただ頷いた。疲労感で声も出なかった
松田陣は桜木組の若頭で数日前の抗争で怪我を負って今は入院している。
病院についたのは昼ごろだった
唐沢は新道と共に見舞い品を持っていく。
病室につくと中には看護師と松田がいた。おそらく健康調査をしていたのだろう。看護師は唐沢たちを見ると会釈して部屋を出た。「松田さん調子はいかがですか」先に口を開いたのは新道だった。「まあぼちぼちだよ、看護師もそろそろ退院できると言ってたからな」
新道はほっと胸を撫で下ろした。今こそ元気な様子だが運ばれたときは一刻を争う状況だった。
「新道、飯の予約をしてきてくれ」松田と二人きりの空間を作る口実だった。新道は返事をすると病室を出た。
唐沢は松田に向き直した「直近一週間で7人です」松田は困ったような顔をした「なにか伝えたか」「まだです、今晩呼ばれたら伝えます」7人というのは組長の手によって消されたカタギの人数だ。「早く手を打たないとお前も持たないからな。」唐沢の心には少しの葛藤があった。
唐沢は15年前組長に助けられた。組長がいなければ生きていたとは思えない。「あの頃の組長はもういない」松田の声色が変わった。たしかにそうだ組に正式に入って7年ほど経ったがあの頃の組長が重なったことは一度もない。「今日一度舎弟たちの扱いを改めてほしいと伝えます」「何かあれば頼みます。」松田は頷いた。すべてを受け入れたわけではなさそうだが唐沢の覚悟に圧倒されていた。「本当にすまない。」唐沢と組長の関係も知っていた。「俺の手で必ず開放する」そう言って目を逸らした。唐沢と松田は正直言ってそこまで仲が良いとはいえない。よく対立していたが、組長に対する憎悪は同じくらい感じていた。唐沢は会釈をして病室を出た。松田はその背中をただ見つめていた。車に戻ると新道が電話をかけていた。いつもそうだが新道は飯を選ぶのが遅い。それを狙ってかけさせたのもあるが。車に乗り込み新道の選んだ店に行く。店内は昔ながらの定食屋だった。席について新道が店員を呼ぶ。すぐに料理が運ばれてきた
基本外食はあらかじめ注文しておいてすぐに食えるようにする。
新道は運ばれてきた飯を美味しそうに頬張る。まだ19の少年には飯の時間がかけがえのないものなのだろう。一方唐沢は運ばれてきた定食を眺めていた。ミックスフライ定食の油っこさが胃に残る。少しずつ食べ進めた。「夕方からトレーニングお願いしていいですか。」新道にトレーニングを頼まれることは多かった。唐沢のことを慕っているのだろう。相談事の大半は唐沢にしていた。
食事が終わると屋敷に戻った。母屋の隣に唐沢や新道の住む離れがあり、そこにはトレーニングルームがある。中には大抵10人前後いて自分の腕に磨きをかけている。唐沢自身も新人の頃は朝から晩まで居た。松田は一生懸命トレーニングしていた唐沢の相手をしてくれていた。新道と別れ唐沢は組長の待つ母屋にで向いた。母屋では調理担当や掃除担当が絶えず動いている。組長の待つ応接間は長い廊下の突き当りだ
ノックをしてから部屋に入る。「陣はどうだ」開口一番はそれだった
「医者からももう少しで退院と聞かされました」やはり組長も心配していたようだ
「それともう一件、舎弟に対する処罰をもう少し軽いものに変えていただけませんか。中には先日の抗争で怪我を負い、思うように体の動かないものも」組長の顔つきが変わる「俺に口答えをするとは、一体誰に育てられたんだろうな。そういえばお前との契約上お前の舎弟には手を出さないが先輩には容赦なくやっていいんだよな?」組長は立ち上がると唐沢の腹に強烈な蹴りをいれた「グプッ…」唐沢は崩れ落ちると少し胃液の混じったつばを吐いた「今日はやらないつもりだったが気が変わったよ」組長は帯を触った。つまりそういうことだ。逆らうと殺される、自分自身じゃなくても新道や他の舎弟が傷つくことも望まない。自分が我慢すればいい。その一心で今日も受け止める。組長は引き出しから何かを出した。「今日はいつもよりも気持ちよくしてやるよ。」そう言って出してきたのは尿道プラグだった。組長は唐沢の腕を縛ると唐沢のソレを掴んだ少し擦ると唐沢のソレは元気になった。組長はプラグを持つと唐沢の尿道に刺した声にならない声を上げる。大声を出すと気づかれる可能性があった。奥まで押し込むと、唐沢の呼吸はかなり乱れていた。組長にそのまま組長は唐沢のケツに挿れた。頭の中がグチャグチャになるような感覚だった。それにも耐えた。途中何度もプラグを押し込まれ唐沢の尿道は待ったなしになる。「限界です」泣きながら訴えた「なにか言うことは」「イかせてください」そう言うと組長はプラグを抜いた。同時に唐沢の尿道を二種類の液体が噴射した。
とりあえず風呂に向かう誰にも見られないようにケツの中を洗う。自分で指をいれるとまた感じてしまう。「もう嫌だ…」口をついて言葉が出た。死んだ方がマシな気がした。「唐沢さん」新道の声がした。「こんな時間に風呂入るとか約束忘れてませんよね?」忘れてはいないがケツの穴が気持ち悪い。「大丈夫だ」「先に行っときますね」新道の出ていく音がした。着替え終わり新道の待つトレーニングルームに行く。中にはベンチプレスやランニングマシンといった器具はもちろん、闘技場のような囲いもあってここでは日々実践的な練習が行われていた。「準備出来たら呼んでください」新道はそう言い残すとシャドーボクシングを始めた。唐沢はスーツを脱ぐと刀を持った、唐沢は近接武器としてよく刀を使っていた。ピストルは抗争では使わない、それが暗黙の了解であり掟でもあった。唐沢はピストルの扱いはそこまでだが刀の腕は抜きん出ていた。新道はこちらを見て刀は勘弁してほしそうに見てきた。仕方なく刀をしまう。おそらく拳で語り合おうとしている。俺は新道に合図を送り、闘技場に入った。「手加減無しでお願いします」新道は相当自信があるようだ。軽く礼をしてお互いが同時に拳を繰り出す。優勢なのは新道の方だった。何度も拳を繰り出し唐沢はガードする。「もっと腰を落とせ」そんな中でもアドバイスをした。「ジャブをしっかり入れろ」唐沢は余裕そうだった。そりゃあ何年も鍛えられてきた体がそう簡単に悲鳴はあげない。しかし新道のパンチが唐沢の乳首をかすった「ンっ…///」声が漏れた。その瞬間新道の強烈な1発が唐沢の腹を仕留めた。「ゴボッ…」唐沢はうずくまった。「唐沢さん!」新道は焦ったように唐沢を見た。「すみません。もう少し力加減考えるべきでした…」「気にするな」唐沢は手を挙げて追い返した。乳首で感じて気が抜けたとは言えなかった。「水持ってきます」新道は水を取りに走っていく。「春生が負けるとか珍しいな」声をかけてきたのは高橋琉斗、現在は俺の舎弟ではあるが新人の頃に色々と世話になった相手だ。「少し考え事してたんで」「珍しいなお前が拳を繰り出すの忘れるくらい悩むって」高橋は座っている俺の横に腰を下ろした「松田さんとは最近どうなんだ」「どうって言われましても、変わりませんよ」高橋は唐沢の頭を軽く突く「松田さんは春生のこと1番大切にしてるじゃん」確かに昔はよく飯に行くほど仲が良かった。勝手が分からず暴走していた俺を助けてくれた。いつからだろうか、距離が空いてしまった。考えているうちに新道が帰ってきた。水を差し出されて飲む。「またお願いします」新道はそう言い残して闘技場を後にした。唐沢は高橋との時を少し過ごすと寝室のある離れに戻った。その日は直ぐに寝てしまった。色々と疲労が溜まった。夜中に目が覚める。飲み物を取りに母屋の台所に行く。コップを取り水道の水を注ぐ。腹を2発も殴られたからか胃が痛い。飲み干してコップを流しに置いた「お前タダで済むと思うなや!」声のする方に向かった。そこには組長と新道くらいの年月の男がいた。男は血を流し涙とヨダレで顔がグシャグシャだった。「組長、どうされましたか」組長は俺の方をむく「この組は舐められたもんだな」「誰のせいだ?」唐沢の顔を見る「もっと痛めつけて恐怖で支配すべきか?」そんなことは間違っている。それが唐沢の本心であり松田の本心だった。「お前を始末するのは簡単だが、俺の相手がいなくなる」「誰か1人連れてこい、俺が罰してやる」唐沢は黙り込んだ。組長は男を見る「期待させて悪かったな」組長は男にピストルを向けた男の額に穴が空くその顔は恐怖に満ちていた。「燃やしてこい」マッチを渡された。「この人は何を…」組長は足を止めた「ウチの目の前にタバコを捨てた」「そん…」そんなことでと言ってしまいそうだった。組長は唐沢の目を見る「当然のことだと…」組長は人を殺すのに躊躇いも嫌悪感も抱かない。あのころの組長は戻ってこないのか余計に悲しくなる。唐沢は男を担ぐと屋敷裏の焼却炉に入れた、火をつける。音を立てて男を火が包む。その日は部屋に戻って寝た。翌日の飯はあまり味がしなかった。支度をして病院に向かった。病室には松田1人外を見ていた「松田さん」こちらを向いた「何の用だ」急な訪問者に驚いているようだった。「ひとつお聞きしたいことがありまして」唐沢は改まったような顔をして松田を見つめた。「どうして昔のように俺と…」それだけで十分すぎるくらいだった。松田はこちらに来いと合図した。唐沢は松田のそばの椅子に腰をかけた「俺はお前を裏切った…」思いもよらない発言だった「俺と組長は昔から交友関係にあった…」「組長は家柄的に直ぐに出世できたけど俺はただのヤンキー上がりで中々だったんだよ…でも組長はどんなに位が空いても俺を友達のように接してくれてた…でもアイツは地位をつける度に周りへの態度が変わった、周りが気に入らないと舎弟に処罰させたんだよ…」「俺も最初は我慢してた。でもどんどん奴は非道になったよ極悪非道が良く似合う男になった」「そんな中俺も腕を認められて組長に近づいていった、上に上がれば上がるほどあいつの非道ぶりを間近で見るようになった。見習いに今お前にしているような行為を強制して周りに見せつけていた…もちろん俺にも見せつけてきた…辞めるように言いたかったけどそんなこと出来なかったアイツの非道ぶりを見ていると俺まで同じことをされるんじゃないかって…」「アイツをおかしくしたのは周りの奴らだ…周りがアイツを助けなかったから1人で全てをやらせたからおかしくなったんだ」歯をかみ締めていた「俺を裏切ったってのは…」「俺はお前の指導係を持った時に絶対に守ろうって決めたんだ…今まで多くの舎弟を育ててきてほとんど組長に殺された…」「それなのに心がズタズタになるまでやられてるのに俺は見て見ぬふりをしてきたんだ…」松田は泣いていた。「組長を停められるのは松田さんだけです、松田さんのこと組長はいつも心配していますよ。親友だと思ってくれてるから松田さんには絶対に手を出さないんです…だから松田さんの手で組長を解放してください」松田は頷いた「ただ今すぐ実行には移せない…親父さんもご存命だから今下手に手を打ったら全滅も避けきれない、チャンスは組長が親父さんの跡を継いで会長になるタイミングだ」「しかしいつになるのか」唐沢は首を傾げた「目星は着いている」唐沢は松田を見た「チャンスは来月の大会合の日だ」「俺の読みが正しければ来月の大会合で指名され、今年のうちに継承する」「それまでに俺の体が治れば俺が殺る」「でももしもそれに間に合わなかった時はお前の手でアイツを地獄に落とせ」少し唇を噛んでいた。苦楽を共にした仲間を殺すなんて簡単には言えない。松田はそれだけ苦しんきたのだろう。「お前にはそれまで無理をさせるかもしれない…」「何かあれば俺のところに来てくれ…」松田は唐沢を見つめるそれから1ヶ月が経つ、松田は退院していた、全快ではなかったがそれなりに動けていた。組長は相変わらず唐沢を強姦し続けていた。全ては計画のために耐えてきた。ボロボロになった唐沢を松田が介護する「お前、歩けるか…」唐沢は首を横に振った。足がガタガタで自分の力では到底歩けない。松田は唐沢を抱き上げ、風呂場に連れていく。「そこに手をつけ」唐沢は手すりを持つ「少し気持ち悪いだろうけど我慢してくれ」松田は唐沢のケツに指を入れた「ンっ...///」まだまだ敏感だった数分かき出してなんとか収まる「はぁはぁ」唐沢の息が上がる。「松田さん、唐沢さん」新道の声だった。「組長がお呼びです」とりあえず風呂をあがった。スーツを着て部屋に入る「失礼します」組長は2人の目を見た「普段なら陣に手を出すつもりは無いんだが」「どうしてもお前のイク顔が見たくなった」体が固まる。「唐沢、今から陣を犯す。自分の大切な先輩が犯されているところを見ていなさい。」組長は帯を触る。松田もそれが何のサインか知っていた。スーツを脱ぐ。組長は松田を掴むと腕を縛った。そして体の線をなぞる。少し感じているのか時折痙攣したような動きが見える。組長は棚から何かを出した。コンドームだった既に大きくなったソレにコンドームを付けた。そしてうつ伏せにした松田の足を掴む。指を入れた。「ンっ...///」松田は唸り声を上げた「組長…やめてください…」「昔のように呼んでくれよ」組長は松田を見つめていた。松田は固く閉じた口を開こうとは思わなかったようだった。その行為は10分以上続いた。唐沢にするような快楽のための行為ではなく本当に愛する人を抱くような愛に溢れた顔をしていた。多分だか組長は本当に松田が好きなのだろう。だから自分のものにしたくて仕方がなかった。だから邪魔者を消して自分が会長になって永遠の愛を誓おうとしているのではないか。悲しい人間だった。素直になれないそんな哀れな人間だった。組長はソレを抜くとコンドームを外しその場で射精した。唐沢には平気で中に出すが松田には出さなかった。それもきっと唐沢を単なる道具としか思っていない証拠なのだろう。組長は服を持つと風呂に向かった。松田はその場で倒れ込んでいる。「松田さん…」声をかけても反応はなかった。起きてはいるからおそらくショックで口も聞けないのだろう。「なぁ、俺どんな顔してた…」松田は唐沢の目を見つめた。「怖そうにしてました…何も言えず涙を流しながら組長からのソレに耐えてました」少し安堵したような顔をしていた。「もしも俺がそれを望んでいるような顔をしていたのなら諦めようと思っていた。」松田はスーツを着直すと少しふらつく足で部屋に戻っていった。翌朝。なんだが組内が騒がしい、唐沢は部屋を出て新道に聞いた「何があった」「西島組長が亡くなったと…」西島組長は会長の側近で1番時期会長の座に近かった人物だ。その人が居なくなった以上次に会長と接点のある組長が指名されてもいよいよおかしくなくなった。「松田さんと組長は西島組長の屋敷に行かれました」「俺たちは何を」新道は焦っている様子だ「とりあえず警備を強化するぞ」「俺は別の組の舎弟頭と今後について話し合う」新道にその場を任せ唐沢は会長の屋敷に向かう。会長の屋敷には既に多くの組の舎弟頭が居た。「桜木組の唐沢春生です」顔見知りが多かったが新しく見る舎弟頭もいた。近頃重役が亡くなる事が多い。「忙しい時に集まってくれてありがとう」口を開いたのは西島組の舎弟頭だった。唐沢もよく世話になった人だ。「今朝、西島組長が亡くなっていたところを発見した。検死をかけれないからなんとも言えないが西島組長に持病もなかったことや、状況からおそらく毒殺だと言われている。」
毒殺、外部とは到底思えない。「おそらく、犯人はこのグループの中の誰かだ。」「食事に関しては最大限の注意を払っていたし、我々が毒味をしてから提供していた。」「毒の中には即効性がなく時間が経ってから効くものもあります。ここ数日間で西島組長と会った人は…」医者上がりの中尾が聞いた。「そうだな、直近1週間だと、桜木組長と飲んでいたが…」確実に黒だ。「あの二人は仲がいいから到底…」2人が仲良しなのは嘘だった。よく言い合いをしているところを見てきた。それにあの組長なら西島を殺害して自分がなりあがるくらい考える。「一応、唐沢は桜木組長に真偽の確認をとって連絡してくれ」「はい」その後は警備の強化や派遣の話をして終わった。屋敷に戻ると既に組長と松田が居た。「組長、よろしいでしょうか」応接間に入る。組長は俺の方をむくとスーツのベルトを触った。いつもと違う服装だが望むものは変わらない。「しかし今は」組長は唐沢の襟を掴む「俺に口答えすると陣を目の前で犯す」唐沢は服を脱いだ。「先に要件を話させてもらっても」組長は関係なしに自分のソレを唐沢に押し込む。「この状態で喋れ」何度も突かれて声を出すことが出来ない。「西島組長の…」更にピストン運動が早くなる。「屋敷に…入っ…」声が少しづつ出なくなる。「組長だけで…」「本当の…こ…」「つまり西島を殺したのは俺なんじゃないかって?」「真偽の確…」「俺がやったと言ったらどうする?」「それは直ぐに知らせ…」「そうするとお前の可愛い舎弟たち諸共殺すさ」組長の目は悪に染っている。襖が空いた「えっ…」その声の先には新道が居た。「な、何を…」組長は抜くと新道を掴み強烈な膝蹴りを入れた。「お前には申し訳ねぇがコイツは」唐沢は力の入らない足で必死に新道を引き離そうとした。「貴様ぶっ殺すぞ!」初めて組長にそんな口を聞いた「直ぐに西島組長のこと伝えてお前を!」組長は新道の首を掴むと一瞬で折った。新道は倒れ込むと口から泡を出して絶命した「俺を裏切るとそうなるんだよ、お前はいい感じに俺に飼われればいい」唐沢は新道の目の前に座り込む。「俺の体を使う代わりに舎弟に手を出すなって…」「お前が先に俺に向かって反逆を誓ったよな?」「お前の一言がなければ命は助けてやろうって思ってたのに」自分のせいで一番弟子が死んだ「ハハッ…」何故か笑えてしまう。「組長、アンタのことは許さないからな…」唐沢は新道の亡骸を抱えて部屋を出た。焼却炉に入れて火をつけた。新道の服を燃やそうとポケットの中身を出す。ペンダントと紙切れが入っていた。紙切れには何か殴り書きをしていた。「唐沢さん、西島組長を殺害したのは桜木組長です。証拠は私の引き出しの中に」そう書かれていた。おそらく新道は自分の死が迫ったことに気づき唐沢にそのような手紙を残した。不甲斐なさに涙が出る。ペンダントには写真が入っていた。唐沢と新道が2人並んでいる。確か新道が組に入ってすぐの頃だったと思う。あの日はやけに寒かった。「春生、新道はどこに消えた」当時、新道は組に入りたての16の少年だった。喧嘩でボロボロの所を唐沢が拾ってきた。性格はかなり荒く全然言うことを聞かない野郎だった。16歳の割には体つきもしっかりしていて身長も唐沢より高かった。「とりあえず俺が探してきます」「気をつけろよ」そう松田は言って唐沢を送り出した。唐沢は凍えるような街を歩きながら新道を探した。自分も入りたての頃は抜け出して周りに迷惑をかけてきた。そんな時は必ず組長と松田が2人で探しに来てくれた。少しの感傷に浸って街を歩いた。「きゃー」路地の方から悲鳴が聞こえた。向かうとそこには血まみれの新道と男がいた。男はこちらに気がつくと立ち上がり拳を構えている。唐沢も拳を構えて戦闘態勢に入った。男は唐沢に飛び掛ると隙なく拳を繰り出される。唐沢にとってガードするだけで精一杯な勝負の行方は最初から決まっていたようなものだ。ここで負けると新道の命が危ない。頭をフル回転させた。「拳相手なら1発食らったところでなんともない」「一撃を耐えて相手のバランスさえ崩せばお前の力ならどうとでもなる」松田が唐沢に言った言葉だった。
少し怖いが腹に力を込めた。次の1発は怖くても受ける、心の中で繰り返した。チャンスだ。腹に貰う。そこまでダメージはなく素早く拳を繰り出す。形勢逆転だ。何度も殴り続けた。数分すると男は動かなくなった。唐沢は新道に駆け寄る「しっかりしろ」「唐沢さん…」新道は恐怖に満ちた目をしていた。「大丈夫、俺が守ってやる」新道は頷いた。「記念に1枚撮ってやるよ」
声の先には松田が立っていた。新道を見るとピースしている。さっきまで血だらけで倒れていた者には見えないくらい清々しい笑顔だった。唐沢も作れるだけの笑顔を作った。
あの笑顔を守ってやれなかった。結局自分は無力な存在なんだ。唐沢は心の中でそう繰り返した。新道の部屋に行き引き出しを開けた。中にはレシートと二通の手紙が入っていた。この組では普段外部とのやり取りがバレないようにかなりの確率で手紙を用いたやり取りをしていた。レシートを見ると組長の好む酒が並んでいる。それもこれも度数の高い酒ばかりだった。そして最後に洗剤が書かれている。おそらくその場で飲んでも簡単には死なない。組長は酒に洗剤を混ぜて西島組長に酒を渡したのだろう。証拠としては薄いが自分の中ではかなり確信に迫っていた。次に手紙を開く。誰と誰のやり取りかわからないが字の癖的に組長だった。「早いうちに全てを手に入れる。」「今はまだ邪魔者が多いが少しずつ排除するつもりだ。」「あの馬鹿どもはまだ俺らが交友関係を築いていると勘違いしているがアイツも俺にとっては邪魔な存在だ」「計画が全て上手くいったら約束を果たそう」アイツは西島組長のことに違いない。もう一通を開けた。誰の字かわからなかった。「計画は全て了承しました。」「そうなった以上アイツも邪魔な存在になりかねません。」「早いうちに処分することが望ましいかと」
更に多くの犠牲者が出る。それがいつになるのか誰のことを指しているのか唐沢にはわからなかった。ただ1つ明白なのは、この組の中に組長とグルになっている人がいることだ。新道を殺された以上、組長は平気で舎弟を殺してもおかしくない。一刻も早く組長を殺さなければ。「何してる」振り返ると松田がいた。「新道は」唐沢にとって重たい質問だった。「…」その言葉を聞いて松田は下を向いた。「アイツはいつから変わったんだ…」「俺の知ってるアイツは…」松田は過去の記憶を思い出した。その日は凍てつくような冬の日だった。当時高校生だった松田の心は誰が見ても綺麗だった。周りにはいつも人がいた。松田はそんな彼らの笑顔を守りたかった。ただ本当は皆1人になって虐められるのが怖くて松田のそばに居た。そんな時嫌気がさした。気づくと何度も拳を振っていた。正直周りは弱いものしかいなかった。拳を振っていれば勝てるくらい奴らは弱くて醜かった。「君強いね」初めてあったソイツは名を桜木冬彦と言った。なにせヤクザの組長の息子で跡取りらしい。歳も近く直ぐに仲良くなれた。初めて仲良くなれた唯一の友達だった。「陣、高校なんてやめてさ直ぐに来てくれよ」「本当はそうしたいさ…でもやっぱり」松田の心の中には葛藤があった。自分を守るためにこの道に進むか。誰かが傷つくことは望んでいない。自分が傷ついたように周りが傷つくことは望んでいなかった。しかしアイツは違った。「冬彦、ダメなんじゃないか…やめてやれよ…」組長は少しでもヘマした構成員に拷問を繰り返した。「陣もやってみろよみんな陣のこと怖がって口出ししなくなるぞ」昔から組長はそんな奴だった。それから3年がたった。松田は高校を卒業し大学に進学した。そんな時に組長に呼び出された。部屋に入る、「冬彦どうし…」そこには組長と裸の男がいた。組長の下半身は露出していてそれは反りたっていた。「陣、見ててくれよ」組長は男のケツに自分のソレをいれて何度も何度も突いた。その姿を松田はただ立ち尽くして見ることしか出来なかった。「やめてください!」そんな声が響く「お前使えねぇなぁ」そう言って組長は男を撃った。「冬彦…」「なぁ陣、お前にはこうなって欲しくないんだよ、共犯だろ?」「だから大学なんてやめて俺と一緒にいてくれないか」「はい、組長…」「堅いな、名前呼んでくれよ」「…」それから、周りが傷つかないように必死に組長のそばに居た。アイツは松田を犯さなかった。少なからず好意があったのではないか。何度も何度もその瞬間を見せられた。快楽のための行為が見ている側をどれだけ恐怖に陥れ操れるのか奴はよく知っていた。「陣、このゲームやろうぜ」「陣、父さんが連れてってくれるんだって!」あの分け隔てなく接してくれた組長は既にいなかった。「松田さん?」唐沢の声が響く、「少し組長との思い出に浸ってた…」「辛いことが多いんじゃ」「昔はよく遊んだんだよ」松田は悲しそうな声で唐沢に語りかけた。「新道のことは残念だ…」「また守れなかったんだな…」「春生、俺は組長を殺して自分も死ぬ」「その後のことは頼んだ…」松田は唐沢を真っ直ぐ見つめた。「なんで」「アイツを1人になんて出来ないよ…」なんとも言えない自責の念なのだろう。唐沢は声をかけられなかった。松田の覚悟は既に決まっていた。唐沢は松田に証拠を渡して見せた。「後は任せました」「何かあれば俺の事頼ってください」松田は頷くと部屋を出た。数日後。会長が亡くなった。翌日会長の就任式が行われることになった。会長の葬儀に参列した「唐沢」別室で待機していると組長が入ってきた。ベルトを触った。「するなら別の場所でどうですか…」機嫌を損ねたら大変なことになる。しかたなくスーツを脱いだ。松田にはゴムをしたがもちろん唐沢の時はそのまま挿れた。突かれる度に意識が飛びそうなくらいの快楽が全身を襲う。「やめてっ…」「それよりもこの前新道の部屋で何をしていた」「新道の遺品をッ…」「なんで陣がいた」「俺が新道の部屋に入っていくのを見て来たらしいです「ふーん」組長は更に奥まで突いた「お前、陣に手を出したんじゃねぇよな?」「俺の陣に手を出したら皆殺しにする」組長の動きがさらに激しくなった。「組長は…」「松田さんが好きなんですか…」「…」
違う、桜木にとって松田は自分を照らすような光のような人だった。元々自分は悲しい人間だった。兄たちは自分が跡取りになろうと醜い争いばかりしてきていた。どうでもいい争いで馬鹿みたいに死んでいった。生き残ったのは桜木冬彦ただ1人だった。「君強いね」そう声が出たのは咄嗟の事だった。目の前にいた少年の目は優しさと悲しみに溢れていた。哀れに見えた。自分よりも弱く見えた。それなのに松田は自分よりも豊かな心があった。支配できそうなくらい優しくて愚かな心の持ち主だった。そんな松田に友情以上の感覚を持ったのは出会ってすぐの事だった。アイツは人が傷つくのを嫌った。誰かが傷ついているところを見る時の目は悲しさに溢れていた。その目に桜木は発情していた。桜木は松田の全てを支配したかった。そして全てを手に入れたかった。だから会長の座につき松田の恐怖に怯える顔を見たかった。そのためには邪魔な存在を消してきた。西島も会長も桜木が殺した。みんな邪魔だった。「お前も邪魔だ…」唐沢の首を押えて何度も突く。「殺す…」「邪魔だ…」「うぅぅ…」唐沢は必死に抵抗するが力が入らない「陣さん助けて(泣)」「俺の陣だ!」意識が朦朧とした。すると「組長…」松田がいた。そして「グフッ」組長の胸から刃先が突き出る組長は手を離して倒れ込む「組長、あなたの事はずっと親友だって思ってた」「こんな哀れな俺と仲良くしてくれた大切な友人だった」「けど俺の親友はとっくの前にいなくなってた」「冬彦…お前に会いに行くわ」松田は自分の腹に刀を刺した。「陣…お前は生きろ…」傷を押えている「俺はお前を守れば…お前を手に入れれば幸せにできるって思ってた…」「だけど結果的にお前を…苦しめてただけだった…」「許してくれ…」組長は血を吐いた「唐沢…陣を助けてやれ…」そのまま倒れ込む。救急車を呼んだ。「高橋を呼べ…」唐沢は高橋を呼ぶ「組長…」「計画は白紙に戻す…お前はお前の正しく思った道を生きろ…」「陣、本当に好きだった」組長はそう言うと絶命した。その後松田は病院に搬送され治療をしている。高橋と話す「何があったんですか…」「本当に申し訳なかった…」「組長に脅されてた…もしも計画に反したら家族諸共地獄に送るって…」「妹を犯すって言われて仕方なく…」「大丈夫です…結局それ以上の犠牲は出なかったので…」そしてその後松田は回復し正式に桜木組の組長となった。数ヶ月後「新道…」新道の墓参りに行った。「お前のおかげで俺ら組長を止めたよ」「春生、次は冬彦の墓参り行くぞ」そう言って新道の墓場を後にした。組長は愛する気持ちを伝えて命を終えた。その瞬間は組長ではなく冬彦に戻れたのだろうか。
支配欲 城崎瞬清 @shunse-novelist
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます