第32話 恋愛レベル1?

次の日、私はレインと手を繋いで冒険者ギルドしょくばに行った。

一人では無理だけど、レインと一緒なら…。


「ローレライさん、これは一体…」


セシアさんが私とレインを見て戸惑っている。

ここは冒険者ギルド。

今の私の精神年齢は16歳の子供で、大人相手に仕事をするのは正直怖い。

ましてや、厳つい冒険者相手なんて無理すぎる。


前の私、メンタル強すぎでしょ。

なので、しばらくレインに付いていてもらって仕事をする事にした。

お父さんに似ているからなのか、レインといると不思議と安心するから。


彼に手をしっかり握っていてもらう。

お子様って思った?だって中身まだ子供だもん!

レインには、またお仕事を休ませて迷惑をかけちゃうけど…。


「セシアさん、すみません。姉が、少し精神が不安定みたいで…」


「はぁ〜そういう事なら仕方ないわね。じゃあアタシは席を外すけど、何かあったら遠慮なく言ってね」


パタン

私たちは個室で二人きりになった。


「姉さん、魔法とか大丈夫?使える?」

「ええ、何とか問題ないと思うわ。多分」


屋敷で魔法を使ったけど問題なく発動できた。

あとは、私次第なのだろうけど…。

大人相手に回復魔法の治療を行う。

こればかりは、慣れていくしかないわね。




   *




「お仕事終わった…」


何とか今日は乗り切った。

私は椅子にへたり込む。

私の隣にレインがいるのを見て、驚いていた男性冒険者もいたけど何だったのだろう?


「お疲れ様でした。頑張ったね」


「レインには迷惑掛けて申し訳ないわ。今日も仕事を休ませてしまって…」


彼が驚いて私の顔を見てる。

私、何か変なことを言ったかしら?


「ああ、いやそれは大丈夫だけど…以前の姉さんだったら、絶対言わないセリフだったから驚いちゃった」


「私だって、悪かったら謝るわよ?前はプライドが邪魔して謝れなかったけど…」


私はぷくっと頬を膨らませる。


「ヤバ…めっちゃ可愛い」

「ん?」


あら?レインの頬が赤くなってるわね。


「レインどうした…ひゃっ」

「姉さんはねえさんだね。僕の大好きな」


私はレインに抱き寄せられていた。

何だろう…不思議と安心するわ。

お父さんと似ていたからと思っていたけど少し違うみたい。

レインの声が心地よくてずっと聞いていたい。


コンコンコン。


「時間になっても出てこないと思ったら…コホン、こんな所でいちゃつかないで早く帰って下さいね。」


ドアが開いて、セシアさんから声をかけられる。

心配になって、様子を見に来たみたいだった。


「す、すみません」


私たちは、慌ててギルドから出た。




   *




「姉さん?ちょっと重いんだけど。一体どうしたっていうのさ」


屋敷に戻り、私はソファに座るレインの膝の上に乗っていた。

お父さんに甘える子供?みたいな感じかしら。

体が大人だから、流石に無理があるかしらね。


「さっき抱きしめられたじゃない?不思議な感じしたから、何かなって思って」

「急に抱きしめちゃって悪かったよ。いつもしてたからつい…」


「確かキスもしてたわよね?」

「キスは流石に出来ないよ。姉さんだし」


「キスしていいわよ?」


私が言うと彼は眉を少し上げた。


「それ、意味わかってる?」

「解ってるわ。レインは私の事が好きなのでしょう?」

「姉さんはだって…僕の事好きじゃ……」


チュッ。

私はレインの頬にキスをした。


「姉さん?」

「バカ、私だって昔からレインの事好きだったんだからね!」


ああ、言っちゃった!

恥ずかしすぎるわ。

前の私、よくこんな事平気で言えたわね。


「姉さん。顔真っ赤だよ…耳まで赤いんだけど」


勇気を出して、キスしたのにレインは顔色一つ変えていない。


「「もう!レインのバカ。知らないんだから」」


私はレインから離れて、自室に駆け込んだ。

ドキドキして変になりそうだわ。

思わずベッドの毛布に潜り込んでいた。




***レイン視点




「何の騒ぎですかな?」

「ああ、ラルス騒がしくてゴメン。姉さんとちょっとね」


リビングで寛いでいると、ラルスがやってきた。


「レイン様も大変ですな。ローレライ様があのような感じでは…」

「うん。まあ何とかなるよ。でも見ていて飽きないでしょ」


彼女に嫌われてはいないようで良かった。

どうやら、僕の事を前から好きだったらしい。

以前の彼女は、僕に冷たい態度をとってたからてっきり嫌われているとばかり思っていたのだけど。


生まれ変わっちゃったみたいだからね。最初から付き合うしかないよ」


ついこの間、結婚式の話までしていたのに振出しに戻ってしまった。


「仕事はしばらく休むことにするよ」

「年寄りですが、何でも協力致しますぞ」

「あはは、気持ちだけ受け取っておくよ」


取り合えず、彼女が一人で仕事が出来るようにならないと。

今回ばかりは、カーベルに相談する訳にもいかないしな。

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