第22話 森に来た

私たちは、王都の近くのヨーデルの森に来ていた。

今日は冒険者としてのお仕事だ。


「貴方たち少し、仲良すぎじゃない?」


森の中を歩いているのだけど、レインが私にくっついて離れない。

正直歩きづらい。

ジョディーの家に泊まった翌日から、べったりくっつくようになってしまった。

屋敷でも、学校でも。


「レインってば、もう少し離れたほうが良いわ」

「嫌だ」


「あのね、強くなるために冒険者になったんじゃないの?だったらもうやめましょ?イチャイチャは他所でやってほしいわ」


フィリアさんが腰に手を当てて、言った。


「レイン、強くなりたくて冒険者登録したのよね?私も頑張って魔法練習してたの。思い出して?」


「ローレライ、魔法の練習をしていたの?」

「うん。役に立てるように」


「そうだったんだ…。そっか。ごめん。何だか、最近僕おかしかったよね」

「ちょっとね。キスはしばらくお預けで良い?」


私はレインから離れた。


「フィリアさんお願いします」


「わかったわ。じゃあ、依頼は…」


フィリアさんがバックから依頼書を取り出した。

薬草を探し出す依頼。

紙を見てモンスター討伐とかじゃなかったのね。

とホッとした。


「今回は討伐依頼では無いけど、ここには弱いモンスターがいるから気を付けてね。あまり遠く離れない事」


私たちはかたまって、薬草を探す事にした。

一応、薬草の絵は見せてもらったけどいまいちよく分からない。

フィリアさんは前にやったことがあるらしく、分かるようだ。


私とレインだけで薬草を探す。

これは私たちが成長するための依頼だから。


「レイン、離れて探しましょ。その方が効率的だから」

「うん」


ガサガサ…。

物音がした。

小動物のようだ。


「「ローレライ離れて!」」


フィリアさんが叫ぶ。


灰色のウサギのような動物が襲い掛かってきた。

爪で引っかかれる。


「痛っ!」


白い腕に赤い血がにじんだ。


「おおおおっ!」


レインがウサギに剣をふりかざす。

ブン!

剣は虚空を切って、ウサギには当たらない。


『ファイヤーボール』


フィリアさんが詠唱する。

火の玉がウサギにあたり、火に包まれた。


「今よ!」


動かなくなったウサギにレインが剣を振りかざす。

ザクッと音がして、ウサギは倒れ込んだ。


「灰色ウサギね。モンスターじゃないけど、臆病ですばしっこいのよね。噛みつかれると痛いし…」


回復魔法ヒール


私は自分の腕に魔法をかける。

傷がみるみる消えていった。


「そういえば、貴方たち今魔力どのくらいあるのかしら?魔力使い過ぎて倒れられても面倒よね」


「確か、ヒール10回は使えると思います」

「え?わからないけど…」


「一度、魔力測定したほうがいいわね。帰ったらギルドに行って測ってもらいましょう」


しばらく薬草を探していたが、中々見つけらず時間がかかっているとフィリアさんが採ってきた。

憶えるためにやらせていたのだろうに、採って来ちゃダメじゃないかな。

フィリアさんは待つのが苦手らしい。




   *




冒険者ギルドに戻り、薬草をカウンターに提出した。

依頼達成したので換金する。


トレーに置かれたのは銀貨二枚。


「あの、この二人の鑑定お願いして良いですか?」


フィリアさんがギルド職員に言う。


「はい、ではこちらへどうぞ」


私たちは、小さい小部屋に案内される。

情報はパーティ仲間のみ知ることが出来る。

丸い水晶が目の前に置かれた。

ギルド職員の人が見てくれるようだ。


「水晶に手を乗せれば、詳しい数値が見れるのよ」


私たちは順番に水晶に手を乗せて行った。


「ローレライ・アルフレッドさんはHP100、MP200、使える魔法は回復魔法。僧侶とか聖職者が向いていますかね」


「レイン・アルフレッドさんはHP250、MP100、使える魔法は火魔法、水魔法。攻撃系の魔法使いか、魔法剣士が向いていますかね」


「HPとかMPってなんですか?」


レインが訊ねた。


「HPは生命力でMPは魔力の事を言います」


鑑定をしてもらった後、フィリアさんはお金を払っていた。

確か、ラルスも鑑定魔法が使えるって言ってたわね。

今度からラルスにやってもらうようにしよう。


「レイン君は、攻撃魔法の初級が大体5くらい使うから、20いや、15回くらい使えると思っておいた方が良いわね。魔力枯渇すると動けなくなるから残しておくのよ?マジックポーション使う手もあるけど、あれ高いからね」


「マジックポーション買っておこうかな」

「高いって言ったのに訊いてた?」


「お金ならありますから。ちなみに幾らくらい?」

「銀貨20枚くらいだけど」


「金貨で5個買っておこう」


「はぁ。まあいいわ。ローレライさんは魔力が思ってたより多いみたいね。それでも気を付けて使ってね。今日はこれでお終い。お疲れ様。また来週ね」


手を振って、私とレインはフィリアさんと別れた。


「今日はこの前よりも疲れなくて良かったわね」

「うん…」


あれ?レインが俯いている。

何で元気が無いのだろう。

もしかして、キスお預けなんて言ったから?

ま、まさかね。


「レイン手を繋いで帰ろ?」

「うん♪」


機嫌が直ったみたい。

素直というか、現金だなぁ。


レインは鎧を付けていたけど重くて外していた。

軽い物をとフィリアさんが、選んでいたけどそれでも重いらしい。

肩に背負うくらいなら、付けて家まで持って帰っても同じじゃないかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る