第21話 悩み

「レインともっと一緒に居たいな~」

「はぁ?もうすでに一緒に暮らしているでしょうに」


ジョディーが呆れた声で返す。

教室では同じ空間だけど、だいぶ離れているのよね。

一緒に暮らしているっていっても部屋は別々だし。


今日は、屋敷に帰ったら回復魔法の練習しないと。

あと、他に出来ること無いかしら。


「ジョディー、冒険に役に立つ魔法知ってる?」

「役に立つ…ってどういう意味なのかしら。ローレライは回復系が得意の様ですから、補助的な魔法を憶えたらいいのでは?でも、きっと一緒に行かれる方が、準備をしているので心配いらないかもしれませんわね」


「きっと、そうかもしれないわね」


私はフィリアさんを思い浮かべた。

準備は万端だろう。

でも折角思い立ったので、出来ることはしておきたい。





   *




パラリ。

学校から家に帰った私は、分厚い本をめくった。

魔法って言うと、攻撃魔法のイメージが強かったけど別にそれだけじゃないんだわ。

私は補助の魔法が使えればいい。

防御の魔法とか。


「補助魔法ね」


補助の魔法は沢山ある。

守備力を上げる魔法とか。

防壁魔法はだいぶ魔力を使うみたい。

途中で果てたら意味ないわね。


そう思うとやる事は沢山ある。

日数が無いので、今の回復魔法を練習して一個新たに魔法を憶えるとか。


コンコンコン。

ドアがノックされた。


「ローレライ、いいかな」


ドアを開けて入ってくるレイン。

え?まさか今日も?

今日こそは魔法の練習をしないと。

ローレライ、誘惑に負けちゃ駄目よ。


頭では理解しているのだけど、心が言う事を聞かない。

そう、私はレインが大好きなのだから。


「あれからずっと忘れられなくて…今日も来ちゃった」


ベッドにちょこんと座るレイン。

くう~可愛い。

可愛すぎる。

こんなの断れるわけないわよ。


帰りの馬車の中で、レインがソワソワしていると思ってたのよね。

こういう事だったのね。


「もう、しょうがないわね」


私はレインの傍に座った。





   *





「はぁ~」


私はため息をついていた。

このままだといけない。

別にいけなくはないんだけど。


「しばらくレインと離れようかな…」

「喧嘩でもしたんですの??」


昨日も魔法の練習が出来なかった。

私が断ればいいのだけど。

意思が弱すぎるのもどうかと思う。

でもジョディーには言いづらい。


「そうじゃなくて…今日、ジョディーのお家に泊めてくれない?」

「いきなりですのね。良いですけど本当に何があったんですの?」





「「あははは…」」


「笑い事じゃないわよ、ジョディー。私はお勉強したいのに…」

「だって、真剣な表情で言うから喧嘩でもしたのかと思って…キスされるからって…仲良くて良いじゃないですか」


お腹を抱えて笑い出すジョディー。

そんなにおかしかっただろうか?


「笑い過ぎて、涙が出てきちゃいましたー。わかりましたわ。一日くらい泊めてもいいですわよ」

「出来れば、学校が休みの日まで泊まりたいんだけど…」


「それは流石に無理ですわね。後は自分で何とかしなさいな」




***レイン視点




昨日と今日、流石にローレライの部屋に行きすぎかな?

僕は屋敷の廊下を歩きながら、考えていた。

部屋に行ってみて、断られたらそれまでだ。


ドアをノックして、部屋に入る。

彼女はまた分厚い本を読んでいたみたいで…邪魔しちゃったけど。

でも嬉しそうにしていたし、大丈夫だよね?


幸せな気持ちで満たされていく。

こんな日が来るなんて思いもしなかった。

ずっとこんな日が続くと良いな。




   *




「え?今日はジョディーのお家にお泊りするの?」


翌日の学校帰り、ローレライが目を反らして言った。


「ちょっと、彼女と話したいことがあるから…」



僕、嫌われた―――?


今日は一人で馬車に乗っていた。

隣がぽつんと空いていて変な感じ。


「このまま家に帰って来なかったらどうしよう…」


思ってもみなかったよ。

王様の申し出を断った時から、ずっと一緒に居られると思っていたのに。



「レイン様、大丈夫ですか?」


相当落ち込んでいたのだろう。

屋敷に帰るとラルスに気遣われる。


「あ、うん。何でもないよ。今日ローレライはお友達の家に泊まるんだって」


「承知いたしました」


広い屋敷がもっと広く寒々しく思える。


「はぁ~。僕、ちょっと調子に乗り過ぎた?それともやり過ぎた?」


「わたくしで良ければ相談に乗りますぞ」


ラルスが声をかけてきた。

うーん。

この屋敷で相談できる男性は、ラルスくらいしかいないけど。


「ちょっと、カーベルの家に行ってくる」

「ご夕飯はどうしますか?」


「用意しなくていいよ」


僕は隣のカーベルの家に行く事にした。




   *




「えー大丈夫じゃね?ローレライに嫌われたとか、考えすぎだって」


僕はカーベルの家に来ていた。

彼の部屋の椅子に腰かけ、カーベルはベッドで寛いでいる。


「でもまあ、あまりしつこくしないほうが良いとは思うけど」

「うん」


「そういうカーベルは順調なの?」

「まあ、オレんとこは手を繋ぐので精いっぱいだよ」


意外と純情らしい。


「貴族相手だと大変だよな」

「まあ、何とかなるさ」


身分差は結構大きい問題だ。

聞くところによると、彼女は全然気にしていないようだけど。

結婚するにしても大変そうだ。

僕は幼馴染のカーベルの恋を応援してやりたいと思った。

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