第17話 幼馴染とジョディー
「こんにちは~」
「ジョディー、いらっしゃい」
ジョディーが家に遊びに来た。
家でたまに出されるお茶が、ハーブティーだと話したら飲みに行きたいと言い出したのだ。
何でもお店で売っている乾燥したものと、採りたては違うらしい。
庭にあるガーデンチェアに私とジョディーは腰掛けていた。
テーブルの上のティーカップには爽やかなミントティーが注がれている。
「ん~。いい香りですわ。さすがフレッシュハーブですわね」
「気に入ってもらえたようでなによりだわ」
「それにしても素敵な広いお庭ですわね。庭には噴水もあって木々も植樹されているし」
「ありがとう。あまり他の人の家に行ったことが分からないのだけど。今度、良かったらジョディーのお家にお邪魔しても良いかしら?」
「うちは何も無いけど、是非いらっしゃいな。そういえばローレライ、冒険者になったんですって?今日は出掛けなくていいの?」
「フィリアさんって言う人とパーティーを組んでいるのだけど、今日は都合が悪いらしいの。3人一緒じゃないと依頼を受けちゃ駄目って言われてるし」
ガサガサ…。
草むらから物音がした。
「「ひゃっ!」」
ジョディーが悲鳴をあげる。
「こんちは。あれ?どうしたの驚いて…」
「どうしたのじゃないわよ。カーベル、一体何処からか入ってくるのよ」
カーベルが頭に葉っぱをくっつけて現れた。
白い歯を見せる。
「こっちの方が家から近いからいつも通ってるけど?」
「ジョディーが驚いてるじゃない。全く泥棒かと思うわよ?」
「わりい、わりい…そんなつもりは毛頭なくて」
頭を掻きながらカーベルは頭を下げた。
「今日はレインに用があるのね?ちょっと待ってて、呼んでくるわ」
「すまないな、ローレライ」
私は屋敷に入りレインを呼びに行った。
レインはリビングでのんびりしていて、カーベルが来たことを伝えると直ぐに外に飛び出していった。
*
「ねえ、ローレライ先ほどの方は?」
「ああ、カーベルって言って幼馴染なの。隣の家に住んでいるのよ。昔は家族ぐるみで仲良くしてたらしいわ。今でもよく遊びに来るんだけど」
「そうなんだ…」
「それがどうかした?」
カーベルはレインと合流し、街へ行く予定だったらしい。
男の子同士、何をするんだか知らないけど。
「彼のお家は貴族じゃないけど、大きなお店をやっているらしいわ」
「そうなんだ…」
あら?何だかジョディーの様子がおかしいわね。
「カーベルは恋人が居るっていってたわ」
「えええっ!そうなの?」
「嘘よ、今は恋人募集中って言ってたわ」
「ローレライ、いじわるですわ」
ジョディーは顔を真っ赤にして頬を膨らませている。
彼女のこんな表情初めて見るわね。
それから、ジョディーはカーベルの事を色々訊いてくるので知っている限り教えてあげた。
多分、彼と話もしていないだろうに、一目ぼれってやつなのかしら?
*
「おかえりなさい。今日はどこへ行ってたの?」
私はレインに声をかけた。
彼はビクッとして身をすくめる。
「べ、べつにやましい事は何も…」
怪しい事しましたって白状しているじゃないの。
私はレインをじーっと見つめた。
「ご、ごめんて。カーベルが、彼女を作りたいからナンパしたいって言って付いて行っただけで…」
「ナンパ?」
私の顔が少し引きつった。
「え…カーベルは女の子誘えなかったんだけど、僕が逆に女の子に誘われて…断ったんだけど…カーベルがOKしちゃって…」
しどろもどろになりながらレインが説明する。
目が泳いでいて落ち着きが無い。
「へえ~女の子と遊んできたんだ?」
冷たい声でレインに返す。
「あ、遊んでなんかないよ?少しお茶飲んだだけで…」
「男の子同士、仲が良いわね。そうだ、明日でいいからうちにカーベル呼んでくれない?」
「な、何で?」
「すこーし、お話があるから…ね?もちろんレインも一緒で」
その日の夜は、レインと一切口を聞かなかった。
かなり堪えたようで謝ってきたけど。
明日も学校はお休みだ。
冒険者ギルドへは来週の休みに行くことになっていた。
レインとカーベルにお説教をしていたら、ジョディーが家に訊ねてきていた。
昨日来たばかりだけど、また家に来たいと言っていたから。
「こんにちは~」
リビングで、正座をさせられているレインとカーベルを見てジョディーはぎょっとしている。
「ローレライ??これは一体?」
「あーもう終わったからいいわ。自由にしていいわよ」
「レイン、あれ嫁さんにしたら絶対しり敷かれるぞ」
「あはははは……」
足を崩して、カーベルが言った。
「ジョディーが丁度来たから、お茶にしましょうか。あ、私レインに用があるのよね。二人でゆっくりしていてね」
メイドに二人にお茶を出すようにお願いする。
私はカーベルとジョディーを残し、レインを二階に引っ張っていった。
「え?用って?」
「二人きりにするための口実よ。レイン、私の部屋に行きましょ」
レインは首を傾げている。
レインにジョディーの事はもちろん言っていない。
ジョディー、カーベルと仲良くなれるといいけど。
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