第15話 王族かそれとも

リリーは、クラスの生徒たちに受け入れられたようだった。

最初にレインが、あれこれ世話を焼いたのが良かったのだろう。

私はホッとしていた。

教室で、近くの女子たちと仲良く話をしている。


「良かったですわね。誰かさんに取られなくて」

「もう~そんな事は…」


言いかけて、リリーが走ってくるのが見えた。

笑顔でレインに近づいてきている。


「レインさん是非、わたしとお友達になってもらえませんか?」


「友達?まあ、いいけど」


「良かったですわ。ではこれからも仲良くしてくださいね」


リリーはレインの後ろから抱きついた。


「え?ちょ、ちょっと…リリーさん??」


「お姉さまとはベタベタしているって訊きましたわ。わたしとでも別に良いのではなくて?」


「まぁ、確かにそうかもだけど、それとこれとは…そもそもローレライとは…」


「とは?」


「「恋人同士だから!」」


レインは耳まで赤くなって叫んでいた。



「あら、まあ」

「言っちゃったわね」


「なあんだ。やっぱりそうですの。カッコいいから、少し良いなって思っていましたのに。それともう周囲にはバレバレですわよ?」


あはは。

バレていたんだ。

まあ、姉弟にしちゃ仲良すぎだもんね。

距離感も近すぎるし。


「まあ、とにかく仲良くしてくださいね?」


リリーはきびすを返して去って行った。




   *




「とっくにバレていたんだね」

「あははは…そうみたいね」


最初は仲のいい姉弟として見られていたようだが、あまりにも仲が良すぎるのでこっそりジョディーに訊ねる人がいたみたいで。

ジョディーはちゃんと「二人は義理の姉弟で恋人」と話していたようだった。


「訊かれたから話しただけですわ。隠すほどでもないでしょうし」


知らなかったのは当人同士だけだったという訳である。


「これで堂々とイチャイチャできるね」

「流石に恥ずかしいから止めてほしいわ」


「もう既にイチャイチャしてると思うのだけど」


「「何か言った?」」


「何でもありませんわ」




   *




授業でロレッタ先生が、黒板にチョークで書き込んだ。


「将来何の仕事に就きたいですか?まだ一年だからと言って、何も考えていないと三年になった時に慌てますからね」


・冒険者

・城勤めの騎士、兵士

・家の仕事を継ぐ

・農家

・魔法の研究者


「まだまだ沢山あると思いますが、考えておいて下さいね。それによって勉強するものも変わってくると思いますので」


「異世界に来ても、仕事の事で悩むとは思わなかったわね」

「イセカイって何ですの?」


ジョディーに訊かれる。

彼女には私が転生者という事は話していない。

特に言う必要も無いだろうから。

あと私が王女っていうのも内緒だ。


「えっと、良い世界って事よ。ジョディーは何か決めているの?」

「わたくしは誰かのお嫁さんになる事でしょうか。まだお相手はいませんけどね」


貴族令嬢は、結婚することで仕事につかなくても良いらしい。

そういう所では中世ヨーロッパと似通っているのかもしれない。

社交界とか正直苦手なんだけどなぁ。

私みたいに転生した人は意識が違うのかもしれないけど。


「そういう、ローレライは決まってますの?」

「考え中かな…あ、レインのお嫁さんにはなりたいかも」


「もう、それで良いんじゃありませんの?」

「そうねえ…」


元々何したいっていう目標みたいなものも無いのよね。





屋敷で将来の事をレインに話していると。


「ローレライは、そもそも働かなくても良いんじゃないの?王女様だし」


すっかり忘れていたわ。

「落ち着いたらまた城へ来てくれ」と王様に言われていたのよね。


「忘れてた…お城行かないとかだわ。緊張するわ」

「そっちの問題があったんだよね。僕もすっかり忘れていたよ。良かったら一緒に行く?」

「是非お願いするわ」




   *




私とレインが馬車でお城に着くと、部屋に通された。

以前の客間では無くて、執務室のようだった。


コンコンコン。


「失礼いたします。ローレライ様とご家族を案内致しました」


中に入ると、王様は机の書類に目を通して何か書き込んでいる。

隣で、ケリー王子が事務仕事をしているようだった。

丁度、忙しい時に来てしまったようだ。


「手が離せなくてすまんな。もう少ししたら片付くから。そこで座って待っていてくれ」


私たちは接客用のソファに腰かけた。

王様の服装はラフなシャツとズボン、王冠は被っていない。

王様って威張って座ってるだけだと思っていたけど意外と忙しいのね。





王様は、私たちのソファの前に座り尋ねる。


「わざわざ来てくれてすまないな。改めてなのだが、ローレライは今後どうしたいのだろうか?」


「どうしたいとはどういう事でしょうか」


「今のままアルフレッドの家に住むか、もしくはそなたを王女として受け入れよう。ケリーと結婚するという未来もあったようだが…」


「父上、それは無かったことにしてください。今の俺にはシルダがいますので」


ケリーが後ろから口をはさんだ。

彼は仕事用のチェアに座ったままだ。


「む?それは聞いていないぞ?」

「まだ話していませんから。時期を見て言うつもりでしたので」


ケリーの後ろに立っているシルダは、頬を染めていた。


「まあ、それは後で良い。それでローレライはどうしたい?」


「私は……」

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