第14話 新たなクラスメート

魔法学校での生活も慣れてきた。

ケリー王子はあれから接触してくることもなくなった。

時々、エリサがレインに絡んでくることはあったけど平和そのものだった。


「平和よね~」

「今までがおかしかったのですわ」


私は教室でジョディーとまったりしていた。

確かに今までバタバタし過ぎてた感じよね。


「平和が一番だよ~」


レインが傍に来て私の背中に寄りかかってきた。


「レイン、ここ教室!」

「何を今更」


レインのファンの鋭い視線を感じる。

表向きは姉なので、不思議には思われないだろうけども。

多分。


「付き合っているのは内緒なんだからね」

「え~?」


「まあ、ローレライのファンに対する牽制けんせいの意味もあるんだけどね」


ボソッとレインが呟く。


「何か言った?」

「ううん。何でもない」


「貴方たち、毎日甘々ですわね。はぁ~わたくしも甘い恋をしてみたいものですわ」


キーンコーン。

始業のチャイムが鳴った。


ガラガラ・・・。


教室前方のドアが開くと、担任のロレッタ先生と初めて見る人が一緒に入ってきた。


「中途半端な時期ですが、今日から一緒に勉強をする事になったリリー・ダインさんです。仲良くしてくださいね」


「わたし、リリー・ダインですわ。どうぞよろしく」


スカートを摘まみ、少し広げてお辞儀をするリリー。

金髪の青い瞳の女子だ。


「わぁ。お嬢様みたいね」

「ローレライ、貴方もお嬢様でしょう?」


「私は普段あんな挨拶なんてしないもの」

「確かにそうですわね」


ゴージャスなドレス、羽の付いた扇子。

まさに貴族令嬢と言った感じ。

そういえば制服を着ていないわね。

間に合わなかったのかしら?


「席は…一番後ろのレイン君の隣でいいかしらね」


えっ?

レインの隣?

リリーはスタスタと席に向かって歩く。

彼女はレインの机の前で止まる。


「エスコートして頂けないかしら?」


レインを見てリリーは言った。


「エスコート?」


「椅子を引いてほしいって事ですわ。言わないと解らないのかしら?」


「ダインさん、ここでは自分で椅子を引いてください」


ロレッタ先生が困った様子で注意する。


「ここではそういうサービスはしていない。自分で座ってくれ」


レインはリリーを一瞥いちべつして言い放つ。


「わたしは子爵ですのよ?貴方の事は存じませんけど、従っておいた方が良いのではなくて?」


「位とか学校に来るのに意味あるの?ここは魔法の勉強をするところなんじゃないの?」


レインと新入生が険悪なムードになっている。


「あの人めっちゃプライド高そうですわね」


絶対、関わりたくない人だわ。




   *




周りの生徒もそんな状況を見ていたからなのか、誰もリリーに関わろうとはしなかった。


「ちょっと、そこの貴方!わたし喉が渇いたの。水を持ってきてくださらない?」


声をかけられた女子生徒は、驚いて逃げ出してしまった。


「君さー。家でもそんな感じなの?学校じゃ自分でやって当たり前なんだけど」


レインがリリーに声をかけている。


「命令して何が悪いっていうのよ」


「ここは家じゃないし、みんな君のメイドとかじゃないんだ。自分でするのが普通なんだよ」


「だって、今まで自分でした事ないんだもの…」


「仕方ないな。ほら、教えてあげるから一緒においで」


レインがリリーを案内する為に共に教室を出る。

親切なのは分かるけど、他の女子と仲良くして欲しくないわ。


「ローレライ、眉間にしわが寄ってますわよ?」

「あはは…」


それから二人は仲良さそうに談笑をしていた。

話の内容は分からないけれど、私はもやもやしていた。



   *



「ねえ、ジョディー。私って心狭いのかな?」

「普通じゃありません?」


レインは親切でリリーに話しかけているのだろうけど、リリーもレインに心を許しているようだった。

多分教科書とかを見せていたりしているのだろうけど。


「同じ教室で良かったのかしらね?」

「イライラして授業に集中できない」


「今だけじゃないかしら」

「そうだといいのだけど」



   *



嫌な予感は的中するものである。

お昼休み、食堂でレインはリリーと一緒に食べると言い出した。


「じゃあ、彼女もいっしょに」

「席が空いてないし、友達と食べてなよ」




「私、近いうちに死ぬかも…」

「大げさなんだから。きっと大丈夫ですわよ」


何だかこの間までのレインの気持ちが分かった気がする。

これは辛い辛すぎる。

私はテーブルに突っ伏していた。


「レインが居なくて死んじゃう…」

「僕がいないと何だって?」


「レイン!」

「リリーを女子に引き合わせてきたんだ。流石に僕と二人きりじゃ気まずいからね。ってどうしたの?ローレライ」


私はぎゅっとレインを抱きしめた。


「ローレライ?流石に…ここじゃみんな見てるし、恥ずかしいんだけど」


レインの顔が真っ赤になっている。

あれ?どうしてかしら?

ふと、我に返る。


「あ、ごめんなさい。私ちょっと今おかしくなってて…」

「本当ですわよ。レイン居ないと死ぬーって言ってましたし」

「ほ、本当にどうにかなっちゃいそうだったんだもん!」


「もしかして嫉妬してた?」


今度は私の頬が赤くなる。


「してたら悪い?」

「そっかー。ごめん悪かったよ」


レインに頭を撫でられる。

やっとレインが戻ってきてくれた。

私は、安堵感でいっぱいになっていた。


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