第12話 王都でデート
「デートがしたい!」
「えっ?そんなので良いの?」
「我儘を一つ聞いて」と言われて、レインがデートをしたいと言い出した。
可愛すぎるでしょ。
「二人で出かけることはあったけど、デートってした事無かったよね?」
そう言われればそうかも。
両想いになったのは最近の事だったし。
今までは姉弟として仲良く街へ繰り出すことはあったとしても。
「何処か行きたいところとかあったりするの?」
「逆にローレライはどこかあったりする?」
ん~。
異世界って映画館とか、動物園とか無いんだよね。
「見て楽しめる物がいいかな」
「じゃあ、最近流行っているっていう演劇とかがいいのかな?何でも恋愛ものを題材にした劇らしいよ」
「へえ~そうなんだ」
レインと一緒に出掛けられればどこでも良いけどね。
翌日に出かけることにした。
*
「私、あんまり洋服って持っていなかったっけ…」
クローゼットを見てもいつも来ている服ばかり。
特別な日に来ていく服が無い。
「いつもの洋服でも十分可愛いですよ」
メイドのヒセラさんにそう言われたけど…。
「では、お化粧を少ししてみますか?」
「私、化粧品なんて持っていないわ」
「丁度、持っていますのでやってみましょう。あとアクセサリーもこの首飾りとかどうですか?」
ほんの少し、顔にパウダーを塗り目元と頬と口元に化粧する。
少し手を加えただけで印象が変わった。
顔が少し明るくなった感じがする。
「すっごく美しくなりましたね。元々お嬢様はお綺麗な方ですが」
「まったく、褒めても何も出ないわよ」
ピンク色の宝石が付いたネックレス。
以前可愛いと思って買った物だった。
首に付けると華やいで見えた。
*
コンコンコン。
「ローレライ、そろそろ行こうか」
レインがドアを開ける。
「レイン?どうしたの。固まって」
ぼーっとしているようだった。
「え…えっと。あの…。ローレライがキレイでびっくりしちゃって…」
頬を赤く染めてもじもじしている。
そんな反応されるとこっちまで恥ずかしくなってくるんだけど。
「うん。ありがと」
「初々しくて尊い…」
ヒセラさんが、祈るように両手を組んでキラキラした目で私たちを見ていた。
*
あ、あれ?
二人で出かけるのはいつもの事なのに。
学校へ行くのも一緒だし。
なのに何でこんなに緊張してるの?
私たちは馬車の中で緊張して座っていた。
「……」
「……」
お互い無言で気まずい。
何か話さないと。
「「あのっ」」
二人同時に話しかける。
「ローレライから先に」「レインから…」
ぷっ!レインが笑い出した。
つられて、私も笑う。
「まったく、いつも一緒なのに何でこんなに緊張してるんだろうね?」
「本当そうよね」
「ローレライってばいつもと雰囲気全然違うんだもん」
「それを言ったら、レインだって同じよ」
「そうかな?」
「そうよ。だって、カッコいいんだもん」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
「うん」
レインの髪型がいつもと少し違う気がしたのだ。
後で聞いたら、ラルスさんに言われて髪をセットしたとか。
*
「はー始めて見たけど、中々迫力あったわね」
「そうだねー」
演劇は勇者とお姫様の恋物語だった。
前半は魔物と戦う勇者。
後半は魔王を討伐した勇者が凱旋して、お姫様に求婚される。
あまりハラハラしない内容だったけど、面白かったから良いかな。
私たちは一息つくため、近くの喫茶店に入っていた。
まだ時間があるからお店をまわってもいいかな。
「ケーキ食べたい」
「レインって甘いの好きなんだっけ?」
「うん。大好きだよ」
「知らなかったー。そういえば一緒に食べていたわね。普通に」
男子は甘いのが苦手とかって先入観なのかもしれない。
メニュー表を見て、レインが言った。
「このベリーのケーキなんて良いんじゃない?甘酸っぱそうで美味しそうだし」
「それはいいかな。こっちのチーズケーキが良いわ」
レインが指さしたケーキは、王子の所で食べたものと同じに見えた。
さすがに嫌な思い出があるので避けたいわ。
「そう?じゃあ、紅茶と一緒に頼もうか」
「「すみませーん」」
レインは手を上げて店員さんを呼んで注文した。
ケーキを口に運びながら、会話する。
「ふふっ。何か変な感じ。この前まで僕のお姉ちゃんだったのに」
「今だって、お姉ちゃんでしょ?」
「僕の彼女だよね」
「私の彼氏ね」
「彼氏くんは、この後何処へ連れて行ってくれるのかな?」
「お姫様の好きな所へ」
「キザね」
「カッコつけともいう」
お店を出て、私たちは洋服店へ行った。
着る服を見ていて、新しい服が欲しくなったからだ。
元々あまり物を買う方じゃなかったんだけど。
私たちを見て、安い服を勧めてくる店員。
あえて高い服を買う気も無かったのだけど。
「今、人気のある女性物の服ってどれですか?」
何故かレインが少し怒っている口調で店員に訊いていた。
何でだろう?
貧乏?扱いされたのが気に食わなかったらしい。
店員さんなりに気を使ったのだと思うのだけど。
「少々値段が張りますけど…」
銀貨20枚程度の金額。
二万円位のようだ。
「ローレライ、これどうかな?」
白い厚手の生地で胸元が開いたセクシーなワンピースだった。
うーん。
可愛いけど、趣味じゃないわね。
「気に入ったのを探すからそれはいいわ」
プライドとかどうでもいいわ。
値段よりも、本人が気に入った服を着れば良いんじゃないかな?
「レイン様~」
店を出て、街を歩いていると聞きなれた声が飛び込んできた。
エリサに、丁度出くわしてしまったみたいだった。
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