第5話 住居

 朝日が…まだ昇ってはいないな、はぁ…


 外を覗けばツノウサギが歩いている、昨日のアレは夢じゃなかったみたいだ。夢であってほしかったなぁ……


 俺はまだ大学生だったって言うのに、どうしてくれるんだ、と物申したい…ゲームクリアで元に戻るらしいけど、それが本当なのか…不安でいっぱいだ。


「おはよ楓ちゃん、今日もいい天気だなぁふぁああ」


 楓ちゃんに、朝の挨拶をしていると欠伸がでた普段はもう少し遅く起きるんだけど昨日の疲れかいつもより早く寝たせいで早く起きてしまったのかもな。


【おはようございます、本日は何をするご予定ですか?】


「今日は、ガチャの続きをするつもりだよ。俺もまだわからない事だらけだからねぇそれと、召喚魔法については今日するか分からないね。もう少しいい魔石を使って召喚したいからさ」


 やっぱ、いい魔石を手に入れてそれを贄に強くてカッコイイ奴を召喚したいな。それに話し相手が楓ちゃんだけだと俺も少し寂しいからな。他に話し相手が欲しかったりする。ゲームマスターは例外だ、あいつは俺を一人取り残して勝手に俺の事をβテスターにしやがったからな。


「電気とかって、いつまで持つんだろうな人がいない今どう頑張っても電気を発電するのは素人の俺では手回しでする物、以外にわからない」


「それなんだけどね、僕にも電力とか水道を維持するのは難しいから新しいスキルを君に付与するつもりだよ。早ければ今日の夜頃には準備ができるから楽しみにしていてね」


 それだけ言い残して光の粒となって消えていった。なんで振り返るとゲームマスターがいたのだろうか…寝起きでボーッとしていたが冷静に考えると怖いな。それに【メッセージ】でいいだろうに、寂しがり屋なのか昨日含めてもゲームマスターって言うのに出現し過ぎだと思う。普通に考えて毎日、物語のキャラクターに会いにいくゲームマスターなんて普通はいないんだよなぁ。まぁ、いっか。


 朝食をパンで済ませた俺は昨日のツノウサギの森へ向かった。


 ☆☆☆


「いや、多くねぇか?昨日よりもツノウサギがいるじゃねぇかよ」


 ツノウサギの森公園にやって来た俺は辺りを見渡すと昨日よりも多くのツノウサギがいるのを目撃した。


 俺は昨日と同じ戦法をとるべくツノウサギを連れて滑り台へ登った。


「オラオラオラァ!!!」


 俺は剣を構えてツノウサギを昨日のように刺して抜いてを繰り返した。


 刺して抜いてを繰り返していると、昨日のような嫌悪感や罪悪感は無くなっていった。慣れたって事でも完全に無くなった訳でもない、ただ少し昨日よりもそれを感じにくくなっていた。いつか感じなくなるのか…と考えると少し怖い。



『ストレージβ版』

 アヒル隊長×1

 魔石(極小)×40


 たしか、狩り終える前が十四だったから二十六匹のツノウサギを討伐した事になるのか…思ったよりも倒していて自分の事ながらびっくりしている。それにしても、ストレージβ版は便利だ、自分の討伐したツノウサギの魔石を自動で回収してくれるのはだいぶありがたい。ストレージβ版の特権なのだろうか?




「今日は、こんなもんかなぁ」

 俺は、公園を去りアパートへと帰った。


 ☆☆☆


「あ、お邪魔してまーす。それでね、召喚魔法なんだけど、意思疎通が可能な生物を召喚するには魔石の量とか大きさが沢山いることが分かったけど、今の君じゃ無理な量ね。だから、どうしようかなぁ?あ、それと朝に言ってたスキルが完成したから付与するね」


 いきなり現れた、というか居座っているゲームマスターに驚きつつも言われるがままにステータスを開いた。




【ステータス】

 レベル『32』


 名前

『伊藤龍司』


 スキル

『ワールドメニューβ版(楓)』

『ストレージβ版』

『ガチャβ版』

『住居β版』


 称号

『βテスター』



 レベルも前にステータスを開いた時よりも上がっていて、それと本題のスキルなのだが、住居と記されていた。


「これは、その言葉通り異空間に住める空間を作り出すスキルだね。出入りは君の望むようにできるよ、扉を開けて入るのも、念じれば入れる、とかね。まぁ、自由度の高いスキルだと思うよ」


なんともシンプルなスキルだが、それ故に分かりやすくて助かる。新しいスキル『住居β版』の中でガチャを引くことにしよう。


俺は住居に入ることを目を瞑り念じると、一瞬ふわっと体が浮かび上がるような感覚に襲われた後、気がつくとアパートでは無い部屋に来ていた。


「ここが、住居の中かぁ…俺の住んでるアパートよりも広くて綺麗だな……」

これからここに住めるのか、嬉しいな。意外といいスキルかもしれない。こうして、考えている事も読まれているのだろう、結構怖いな。


アパートにゲームマスターを置いているのを思い出し俺は、アパートに戻った。


「おかえり龍司、君にいい知らせを教えてあげるよ、あの住居の中では僕に考えている事がバレることはないからね」

それだけ言い残して光の粒となって消えるゲームマスター。



僕にとっては嬉しい報告ではあるが、βテスター認定された俺の考えを読めないとなると、更に俺に会いに来そうで少し嫌になってくる。


再び俺は住居に戻り、ガチャをするため楓と作戦会議を始めた。


【十連ガチャ、できますね】


「あ、あぁ」


なんか、俺よりもガチャを楽しみにしているように感じた。


そして、俺はガチャを引くため魔石(極小)を取り出した。

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