第4話 一日目終了

 アパートに帰ってきた俺は早速、『ガチャβ版』の使用を始めることにした。


「なぁ、楓ちゃんこれって何をすればいいんだ?」


 スキルの使用を念じると目の前にガチャガチャの箱が現れたが、どうやって使用するのか分からなかった。


【魔石(極小)を取りだしてください】



 俺は魔石(極小)を楓の言う通り『ストレージ』から取りだした。すると、ガチャガチャの目の前に文字が現れて【魔石ガチャ(極小)】と書かれていた。


【魔石を感知して、その魔石によりガチャが変化するようです】


 楓の説明通りなら他の大きさの魔石で試してみたくなる。


 さて、ガチャを回してみるか!



 ガチャガチャ…ガチャガチャ……


 コロン


 取り出してみると、よく見るカプセルが出てきた。カプセルの色は赤色で、透明な方から中を覗いても何が入っているのか見えなかった。


「あけるか」


 カプセルを開けると少し光が漏れ出た。その光は形を変えていき少しづつ整ってきた。


「これは、剣だな…」


 光が収まると手には鉄剣があった。


【ちなみに、十連ガチャもできるみたいです】


 それは、早く知りたかったかも。まぁあと十匹討伐すれば手に入るだろう。



 ガチャ検証を一通り終えた俺は実家に帰るか迷っていた。


「魔石で武器が出に入ったしとりあえずもう一度、外に出て狩りをするとしようか」



 俺は、アパートを出ると先ほどの公園へ再度向かった。あの辺に他にもツノウサギがいるのが見えたからもう一度見て周ろうと思っている。


 ゴブリンを討伐するために商店街へ行くのもありだが、今日はとりあえずツノウサギを狩って『ガチャβ版』の検証がしたい。


 ☆☆☆


 はい、という訳でやって来ました。先程も来た公園を見渡すとツノウサギがまばらに散っている所が見えた。


 うーん、この公園の名前って…あ、書いてある。


「ツノウサギの森……いや、絶対にこんな名前の公園じゃなかった」


【メッセージ】

 公園の名称とかほとんど変えてるから、でも国とか地域の名前は変えていないよ。引き続きβ版新世界をよろしく頼むよ。


 ゲームマスターより



 はぁ、他にも同じような名前の場所があるって事を思うとゲームマスターのネーミングセンスが……いや、いいと思う。とても素晴らしいと思う。


【メッセージ】

 そこまで褒めてくれるとは嬉しいな。 ステータスに君が好きそうなスキルを付与した。確認してみてくれ。


 ゲームマスターより



【ステータス】

 レベル『3』


 名前

『伊藤龍司』


 スキル

『ワールドメニューβ版(楓)』

『ストレージβ版』

『ガチャβ版』

『召喚魔法β版』


 称号

『βテスター』



 褒めただけでスキルを与えるのは、ゲームマスターとしてどうかと思うぞ?いや、β版だから色々と試さないといけないって事だろう、うん、きっとそうだ。


「とうとう、魔法までスキルとして手に入った……マジかよ」


【召喚魔法β版は魔石を捧げることによって意思疎通が可能な生物を召喚できます。】



 ガチャスキルを試したいから今日は、召喚魔法β版を使用する事はないだろう。



 ☆☆☆


 俺は再びステータスを確認したあと、先程のガチャで手に入れた鉄剣を構えていた。


 そっとツノウサギに近ずこうとすると、ツノウサギは逃げるどころか俺の方に向かってきた。


「おいおい、マジかよ!?」


 十数匹のツノウサギに追われ、さすがにこの数を一度で討伐することが不可能な為、公園の滑り台に登った。


「ふははははは!滑り台の階段は狭いからツノウサギ共は一匹づつしか登れない、おれはそこを突けば簡単に討伐できるという訳だ!!」


 鉄剣を刺しては引いて刺しては引いてを繰り返していく内にツノウサギの襲撃は終わった。ツノウサギは集団でいるとこちらへ向かって来るのだろうか?



【ツノウサギは単体でいると逃げますが、集団になると逆に襲いかかって来るので注意してください】


「うん、だろうね」


 あと、遅いですよ楓ちゃん。普通にあの角がお腹とかに刺さると多分だけど死ねるよ?


 さすがに即死では無いと思うが、それが余計に辛そうだ。


【ストレージ】

 アヒル隊長×1

 魔石(極小)×14



 うーん、お腹も空いたしそろそろ帰るかぁ。今日は忙しくてお昼ご飯が食べられなかったからとりあえずアパートに帰ろうと思う…



「スーパー行きたい……金ってどうやって払うんだ?」



「盗っても問題ないさ、クリア出来れば新世界になる前に一度戻るんだから」


 いや、なんでいるんだよ。


「犯罪歴に残らないのか?防犯カメラとかあるってのに…」


「うーん、簡単に言うとこの会話もなかった事になるから問題ないよ、僕らの記憶からこの事が無くなるかは知らないけどね」


 納得する事は結局できず、スーパーには行ったもののセルフレジでお会計をした。


 セルフレジがあるの忘れてた……全然、人いないけど買い物できるじゃん。


 ☆☆☆


「おじゃましまーす」


「あのなぁ、ゲームマスター人の家まで着いてくるし、なんなら隣に座ってくるのやめてくれ?」


 よくよく考えなくても、ゲームマスターってこの世界の人を拉致してる状態なのでは?てことは誘拐犯…?なんにせよ、ヤバいやつなんだよなぁ。


 俺とゲームマスターは、スーパーで買ったお弁当を食べながら今後のことについて話し合った。



「やっぱ、俺の体を改造しすぎだよ!?考え方が明らかにおかしいんだが?さっきまでゲームマスターってなんだよって呟いていたの覚えてるぞ?」


「改造はしたけど、多分それは元々の考え方かもしれない…」


 ゲームマスター、お前の方が深刻そうな顔をするんじゃない…まるで俺が元々おかしい奴みたいじゃないか。


「まぁいいやβテスター龍司よ、ゲームクリア条件を教えよう」


「急すぎだな?たしかに気になるけれども」


「それはこの国の何処にいる魔物達の王―――魔王―――の討伐だ」


 そう言って、弁当を食べ終わったゲームマスターは光の粒となって消えていった。




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