第3話 この世界の謎
「えっと、それにしても探索者なんてすごいですね。こんな危険なところでお仕事するなんて僕じゃ絶対にできませんよ」
「ありがとうございます」
「「「………」」」
き、気まずい。この人あんまり会話とかしないタイプなのか? 俺たちだけで話すのも悪いし。居心地悪いな。とりあえず優弥にアイコンタクトを送る。
(おい、どうする? めっちゃ気まずいんだけど。お前、なんか良い案あるか?)
(そんなのないよ。お前こそなんかないのか?)
結果的にお互いこの空気を変えられるだけの話題はないと分かった。なら一体どうすれば良いんだ? あとどれくらいで着くんだろうか? 俺はそんなことばかり考えていた。
「っ!! 2人とも飛ばしますよ!」
「「え? っ!?」」
急に車が早くなった。一体何事だ? なんかあったのか? なんか後ろから音がするな。俺は後ろを振り向いた。
「…まじか?」
後ろには大量の化物がいた。目が1つしかない四足歩行の化け物。足が6本ある毛むくじゃらの怪物。どいつもこいつも人間とはかけ離れた異形。化け物ばっかりだ。それを見た感想は1つだけだった。
「「うわぁ」」
優弥と声が重なった。優弥も気持ち悪い物を見る目であいつらを見てる。たぶん、俺も同じ顔をしているはずだ。
「「「っ!?」」」
俺たちの進行先に突然化け物が地面から現れた。女の人の運転が良かったからかなんとか直撃は避けられたがそれでももう車は動かせない。いや、動かせる状況にないっていう方が正しいか。もうすでに囲まれてるし。
「仕方がありません。殲滅します! お二人はここでじっとしていてください!」
「「あ、はい」」
探索者の人は車から飛び出すと同時にあの人の足元から何やらゴリラが出て来た。え、ゴリラ? まじで? 自分の目がおかしい訳じゃないよな? 一応優弥に聞いてみるか。
「なぁ、あれってゴリラだよな?」
「そうだな、ゴリラだな」
「だよなぁ」
本当にゴリラだった。そして俺たちがそんな会話をしているとすでに戦闘が始まっていた。
「すごいなぁ。あのゴリラ、あの化け物どもをボールみたいに投げてるぞ?」
「あぁ、すごいな。俺も練習したらあんな風に投げれるかな?」
俺はその言葉を聞いて優弥の肩に手を置いた。そして首を横に振る。あんなゴリラみたいな優弥は見たくないです。
「でも、ゴリラもすごいけどあの人もすごいよな。あの銃で的確に急所を狙ってる」
ド派手なゴリラに目が行きがちだが、あの人の動きも中々の物だ。腰に武装してた銃でしっかりとゴリラたちのサポートが出来ている。これなら危なげなく勝てそうだな。
「っ!!」
「あーあ。こりゃまたすっごいのが出て来たな」
現実はそう甘くないらしい。地面の中からとてつもなくでかい化け物が現れた。
「っ、これは、まずいですね」
その化け物は今までの化け物よりずっと大きい。10メートル? いや、もっとありそうだな。あんなにでかいならあのゴリラもあの人が持っている銃も大して役に立たないはずだ。
「!? 2人とも逃げてください!」
あの人が俺たちに向かって叫ぶ。あの化け物はおもむろに手を振り上げている。このまま行くと俺たちは全員仲良く潰れるだろう。
流石に動かない訳には行かないよな。俺は腕に力を込めて化け物に手を向ける。だが、そんな必要はなかった。なぜならすぐにあの化け物の頭が吹っ飛んだからだ。俺は手を下ろして優弥を見る。すると優弥の手には1つの弓が握られていた。
「それ、久々に見たな」
「まぁね。使う機会なんかなかったし」
優弥があいつの頭を吹き飛ばした。周りの奴らは全部あの人がやってくれたし。どうやらこれで危機は去ったようだ。俺たちは再び座席に座る。
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