第4話 イレギュラーな存在
「あ、あなた。何者なんですか?」
目の前に女性はありえない物を見る目で優弥を見る。だが、それもそのはずだ。それほどまでに優弥はイレギュラーな存在だ。
さっき、この女性がやったようにゴリラを召喚したりすること。そして優弥が持っている弓。これは本来女性にしかできないことだ。
この超常的な力はなぜか女性にしか発現しない。だからこそ、女性と男性の格差は広がっていき、女性優位の世界へとなったのだ。
しかし、どうだろうか? 今、目の前にいる男は男の身でありながら女性と同じ力を持っている。そんな男がいるなんて聞いたことないはずだ。
「俺は普通の人だよ。あんたらと同じ力を持った普通の人さ」
「……そうですか」
女の人はしばらく考える素振りを見せる。そして何か自分の中で答えが出たのか、優弥を見る。
「……あなたはこれからどういった道を進もうと思ってますか?」
「え、とりあえずは就職が決まってるのでそこで働こうと思ってます」
「そこで絶対に働きたいのですか?」
「いえ、そういう訳ではないですね」
あー、これはなんて言うか大体わかったわ。俺はこの人が次に言う言葉を予想する。
「でしたら、よろしければ探索者になりませんか?」
「え?」
「だよなぁ」
は? 嘘だろ? みたいな顔をしてる優弥の隣で俺はやっぱりかと思った。そりゃ、こんな強力な力を持っている、しかも男なら手元に置いておきたいよな。
「貴方の力は強力です。その力を埋もれたままにしておくのは損でしかないです」
「うーん、でもなぁ」
まぁ、探索者になる方が良いんじゃないか? こいつなら今決まってる職場より断然そっちの方が向いてると俺は思う。それにこいつの実力なら危険もないだろう。俺は優弥の肩に手を置いて、親指を立てる。
「良かったな! お前にぴったりの就職先だな!」
「………」
いやー、良かったなぁ。さて、優弥も良い就職先を見つけたことだし、俺も明日から本格的にニートするかぁ。
「……わかりました。なら俺が入るに連れて1つお願いがあります」
「お願い、ですか?」
「はい。ここにいるこいつも入れてください」
優弥が俺に指を差す。は? おいこいつ何言ってるの? 俺はまだ働く気はないんですけど?
「ちょ、ちょっと今の話は聞かなかったことに! おい、ちょっとこっちこい!」
俺は優弥を連れて少し離れた所に移動する。
「なんで俺を巻き込むんだよ! 俺はニートしたいって言っただろ!?」
「良いじゃん。働き口も見つかったことだし。探索者って給料良いらしいぞ?」
うっ、それは確かに魅力的だけど。いや、でもなぁ。
「はい、じゃあ決まりだな。こいつも入りたいらしいです!」
「おい!」
「……分かりました。では、後日連絡致します」
女の人はどこかへ電話をかけている。おそらく俺たちについての電話だろうな。まぁ、良いか、しんどかったらやめたら良いだけだし。
それでもやっぱり腹が立ったので優弥の頬をつねってやった。
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