第2話 日課
朝、5時にまた礼拝堂へ。
礼拝堂でのお祈りは、2時、5時、夕方の5時、就寝前の8時の4回、その他に食事の前のお祈りが3回。
日が出ると、小さな子供達にも日課が始まる。
「マックス、急げよ。」
ソニーは、大きな籠を抱えている。
「待って、お兄ちゃん。」
「マックス、僕はお兄ちゃんじゃないって言っているだろう。」
6歳のマックスは、ソニーより小さい籠を抱えて、危なげに歩いている。
修道院での服装は、足のくるぶしまであるチュニック型で、腰のあたりを紐で結ぶものだが、子供達の中には、裾を踏んで転ぶ者も多かった。
「でも、みんなブラザーでしょう?」
「……。もう、遅れちゃうだろう、行くぞ。」
ソニーは、歩き出した。
「お兄ちゃん、待って、ブラザーの話は?」
「マックス、しつこいぞ。そう言う話は、ブラザーにしろ。」
ソニーとマックスは、修道院に近い森を抜けた2つの家に食べ物と果実酒、薬草園で作った薬を届けに行くのが日課だ。
2軒とも、高齢の婦人が住む家だ。
1軒は、貧しく身寄りがいないので、修道院に隣接している施設に入るよう勧めているが、決めかねているようだ。
もう1軒は、古くから修道院に寄付をしている大きな家で、修道院への寄付に感謝として、修道院で出来た果実酒と薬を届けている。
行きは重かったが、帰りは軽く、ソニーとマックスは、元気に走って修道院の大きな門をくぐった。
礼拝堂の横を通り、大きな食堂に入り厨房に籠を戻す。
「ブラザーアンセム、ただいま戻りました。スミス家の奥様から、後ほどスミス家で収穫したリンゴをお届けしますと言付かりました。」
ソニーとマックスは、アップルパイを頂いていたが黙って厨房を出た。
ソニーとマックスは、スミス家で度々おやつを頂いていた。
薬草園を横切ろうとしたソニーとマックスに、薬草園のベンチに座るブラザーヨハンソンが声をかけた。
「スミス家でアップルパイを頂いたのかい、ソニー、マックス。」
げー!
耳だけじゃなくて、鼻もか!
ソニーは、慌てて周りを見た。
「なんで分かったの!」
マックスは、あっさりと認めてしまった。
「ソニー、ここだけの話しにしてあげるよ。」
ブラザーヨハンソンは、慌てるソニーが見えるかのように笑っている。
何者!
とりあえず、ソニーは安堵した。
「勉強に行ってきます。」
ソニーが、頭を下げる。修道院では、午前中、子供達に勉強を教えている。
「行ってきます。」
マックスも同じように頭を下げ、ブラザーヨハンソンから逃げるように立ち去った。
個人的な頂き物は、修道院では禁止されていた。
「マックス、スミス家でおやつを頂いているのは、誰にも言うなよ。」
ソニーは、人差し指を口に当て、マックスに釘を刺した。
「うん、分かった!」
マックスは、元気良く走って、薬草園で作業するブラザーキンブルに挨拶する。
「おはよう、今日のおやつは何だった?」
「アップルパイ!」
マックスは、ブラザーキンブルに元気良く答えていた。
……バレるのも時間の問題だ。
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