ソニーとマックス 〜僕らの忙しい毎日〜
のの
第1話 朝2時のお祈り
「おはよう。ソニー。」
高齢のブラザーが、礼拝堂に続く渡り廊下にあるベンチに腰掛け挨拶をしてきた。
「おはようございます。ブラザーヨハンソン。」
ソニーは、10歳の見習い修道士だ。
まだ、見習いなのでブラザーとは呼ばれない。
修道院では、10歳から午前2時のお祈りに参加するのを義務付けられていて、足早に1日の始まりのお祈りに向かっていたが、足を止め丁寧に頭を下げた。
「礼拝堂まで、お供しますか?ブラザーヨハンソン。」
「いや、今日は、神と共にここにいることにするよ。」
ソニーは、頭を下げ礼拝堂に急いだ。
ブラザーヨハンソンは、高齢のため、お祈りに参加するのは任意だ。
「ブラザーデレク、おはよう。今日は参加するのかね?」
ソニーの後ろで、ブラザーヨハンソンが、また声をかけているのが聞こえる。
「なんで、分かるんだろう……。」
ソニーは、急ぎ足で進みながら呟いた。
ブラザーヨハンソンは、病気で目が見えなかった。
ソニーは、欠伸を噛み殺しながら礼拝堂に入ると、自分と同じ見習い仲間の中に割り込んだ。
縦長で広く、高い天井の大きな礼拝堂は、凄く寒くてソニーは身震いした。
右と左に分かれて、60人いるブラザーの賛歌が始まる。
礼拝堂の正面にあるステンドグラスもまだ外の光を受けずロウソクの光だけに照らされていて、院長やお偉いさん達の出番を待っている。
詩篇の唱和が始まる。
「寝るな。」小さな声で、アーロンの声が聞こえる。
ソニーは、立ったまま頭を左右にゆっくり揺らしながら、微睡んでいると、隣りのアーロンに腕を突付かれる。
慌てて、周りに合わせて唱和する。
アーロンは、ソニーのひとつ上で、しっかり者のお兄さん的存在だ。
季節は寒くなり、午前2時のお祈りの時間は、さらに辛いものとなった。
暗い夜空に、詩篇の唱和が響く。
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