第5話 悲しい人
ソニーとマックスは、いつも通り日課の2軒の家に届け物をする。
今日は、ブラザーキンブルも一緒だ。
スミス家の奥様から、用事を言い使ったのと、まだ危ないからと一緒に行くことになった。
悪い人達はトーマス・リープ達が倒してくれたし、町の警備兵が見回っているから安心なはず。と言われたが、ソニーとマックスは、本当はちょっぴり怖かったので、ブラザーキンブルが一緒でほっとしていた。
しかし修道院も人が足りないので、明日からまたマックスとふたりなのかもしれなかった。
修道院の敷地内には、旅の人や、巡礼者が泊まる施設、町の高齢者や病気の人の為の施設、そして修道院の敷地以外にある疫病にかかる患者の為の施設。
その他、畑や薬草園、牧場や養鶏場や養蜂場、果実園、蒸留所など日々仕事に追われている。
それなので、小さな子供達にも頑張ってもらわなければならなかった。
「いいなぁー。」
ソニーが見る先には、子供達が親が働く畑の横で遊んでいる。
「ブラザーキンブルのご両親は?」
ソニーは、思い切って聞いてみた。修道院では、詮索は禁止されていた。
「生きてる?」
マックスの頭を、ソニーは軽く叩いた。
「失礼な言い方するな。」
ふたりを見てブラザーキンブルが、静かに笑った。
「もう、亡くなっているよ。疫病でね。妻も娘も、町の多くの人が亡くなった。」
「ごめんなさい。辛いことを聞いて……。」
ソニーの言葉を追うように、マックスもごめんなさいと呟いた。
ブラザーキンブルは、ふたりの頭を撫でた。
ブラザーキンブルは、元兵士だ。
俗世に生きた者が、途中から修道院の門を叩くのは珍しく、厳しいものだった。
修道院では、個人的な物を持つ事を禁じられていて家族の形見すら取り上げられた。
生活はまったく違う。
集団生活には慣れていたが、生まれて間もない頃から修道院にいる俗世を知らぬ者達との生活は、とても息苦しかった。
苛立ちは次第に収まったが、俗世を知る者として、今だに奇異な存在扱いが続いている。
女や数々の娯楽、興味はあるが周りの目や、知る事の恐怖が邪魔をしているのだろう。
まっ、聞かれても迷惑だが。
ブラザーキンブルは、先を急いだ。
スミス家の奥様は、修道院の事では無く、昨今の不穏な状況で話しがあるのだろう。
厄介な事にならないと良いが……。
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