第15話 狂裂

 ラベルには、『鯡(ニシン)』、


とある。賞味期限は二〇二八・二・二八。



 缶(かん)截(き)りの刃によって、ZA(ざ)K(く)ZA(ざ)K(く)と截(き)り裂き牽(ひ)き剥(は)がされた蓋面(ふた)ふちの、ZU(ず)DA(だ)ZU(ず)DA(だ)にあざやかな截り口(くち)がぎらぎら捲(まく)れ上(あが)って、あたかも、頸(くび)を刎(き)られ、顚(さか)さ磔(はりつけ)にされた骸のように、叛(そむ)き仰(の)け反(ぞ)り逸(そ)れ皈(かへ)りたる屰(さか)剥(は)ぎのさま。


 からっぽ。


 孑(ぽつ)と存(あり)。


 存在が炸裂であった。在という狂裂。静止であるほど激烈な爆破裂。空をすらも絶する狂った自在無礙、自由奔裂をも牽き裂く自由狂奔裂。

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狂裂 しゔや りふかふ @sylv

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