第30話 何を今更
スヴェさんが学校に通いだしてから、二週間が経過した。
学校にもそれなりに溶け込み、皆と仲良くしている。
制服姿も様になってきた。
スヴェさんは家に帰ると姉ちゃんのスウェットをローテーションしながら着ている。
外に出かける時も、姉ちゃんの服を着るようになった。
のは、良いとして。
姉ちゃんから、久しぶりに連絡があった。
『着る服足りないから、実家に置いてある奴送ってくれない?』
という事で、姉ちゃんに服を送る事になった。
流石に全部じゃないが、かなりの量を段ボールに詰める。
まあスヴェさんが着る服は、週末にでも買いに行こう。
荷物を詰め終えた頃、女子達とカラオケに行っていたスヴェさんが帰って来た。
「聞け、恭一郎! 遂に妾はカラオケで90点を取ったぞ!」
「へー。良かったね」
「うむ! で、恭一郎は何をしておるのじゃ?」
「あ、姉ちゃんが服送ってくれって」
「なんじゃと? じゃあ妾は何を着れば良いのじゃ?」
「取りあえず、あの魔王装束着といてよ。週末一緒に買いに行こう」
「むむ……まあ致し方無い、か」
スヴェさんは制服を脱ぎ捨てると、何やらブツブツと唱えた。
あの、人前で裸になるのはやめませんか?
スヴェさんの身体のパーツパーツが輝き、例の服が装着されていく。
しばらくして、魔王フォーム(?)が完成した。
「ふむ、この格好もしばらくぶりじゃな」
「そうだね」
まあ、最近はあまり目にする機会も無かったが、これぞスヴェさん、といった感じだ。
やっと見慣れたその姿を眺めていると……スヴェさんは何故かサッとマントで身体を隠した。
「恭一郎」
「何?」
「妾……なんでこんな格好しとるんじゃ?」
「知らねぇよ! 好きで着てんじゃないの!?」
「いや、この世界に来るまでは自然と受け入れておったが……これではまるで痴女ではないか」
「何を今更……」
「こんな胸を見せつけるような布面積、切れ上がった股上、おかしいであろう」
「うん、そうだけど!?」
どうやらこっちの世界の常識を学ぶ事で、自分の格好に疑問が湧いたようだ。
ただ、俺も気になる事はあった。
「あれは? なんかすっごい防御力が高い、とか」
「はっはっは、恭一郎。こんな急所も肌も丸出しの服に、防御力などあるわけ無かろう、皆無じゃ」
見たまんまだった!
じゃあマジで、なんでそんな格好してんすか!?
スヴェさんは少し顔を赤らめながら、そっとマントの中を覗き込み――俺に聞いてきた。
「恭一郎」
「何?」
「恭一郎は、その、妾のこの格好……どう思う?」
「えっと……スヴェさんって感じがするし、その、俺も男だから、まあ、色々見えて嬉しいと言うか」
「ふふ、そうか」
俺の返事に、満更でも無さそうな表情を浮かべたスヴェさんは、マントをガバっと開きながら言った。
「ならば、今後は恭一郎の前でだけ、この格好をしようかの。ちと恥ずかしいが」
うっ……。
少し恥じらいながらも、俺の為にエロい格好してくれる女の子……。
悔しいけど、100点です。
◇◆◇◆◇◆◇
そして週末。
俺が考えなしに姉ちゃんへと服を送ってしまったせいで。
スヴェさんの服を買いに行くための服が無い。
灘さんに相談すると、着ていない服を持って来てくれた。
「サイズ合うと良いんだけどね」
灘さんに渡された服を着るスヴェさん。
姉ちゃんの服より、ちょっと大人びた格好になった。
正直、かなり似合っている。
スヴェさんは服を着てから、ふふんと鼻を鳴らすと、感心したように言った。
「鏡子」
「何?」
「コヤツの姉の服と違い、胸が苦しくない。お主、中々やるな?」
「ふふん? どうも」
……いや、何の勝負だ。
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