第7話

この日から、彼女と一緒に帰るようになった。


今までも何度かは一緒に帰ったことはあったが、彼女に予定があったりして一緒に帰れない機会が多かった。


後から聞いた話だが、彼女はただ恥ずかしさで先に帰っていただけと言っていた。

意外と気弱なところもあるらしい。


「ずっと一緒だからねっ! どこにも行っちゃ嫌だよ?」


彼女と付き合い始めてから、彼女はことあるごとにおれの腕に抱きつくようになった。

それも、人のいるところでさえやって来るのだから、周りからの目がたまったものではない。


今ではクラス中からお似合い夫婦として認知され、ことあるごとにからかってくるようになっていた。


「はぁ……これならずっと目立たないままでいたほうが楽だったかもしれない……」


なんの気もなしにぽつりとこぼれ出た言葉を拾ったのはやはり彼女だった。


「またそんなこと言って! わたしと関わりたくなかった? 迷惑だった?」


覗き込んでくる彼女を可愛いと思ってしまう時点で、おれも彼女に惚れてしまっているということだろうか?


「い、いや、そういうことじゃなくて……まだみんなの視線に慣れていないだけというか……」

「あははっ何それ。もうクラス委員になって3ヶ月経つんだよ? そろそろ夏休み始まっちゃうよ」


クラス委員になって3ヶ月、彼女と付き合い始めて1ヶ月。

クラス委員としてはうまくやれていると思っている。


みんなをまとめる力はおれにはないがその代わり、些細な変化にもすぐに気づくことで、大きなトラブルが起きていないと言ってもかごんではない(みんな仲がいいだけかもしれないが)


彼女は一人一人を見るというよりかは、全体を見る能力に長けていた。

彼女のいう指示にしたがっていれば問題ないとでもいうように、引き連れていくその力はおれには到底できないものだ。


個々を見るおれと全体を見る彼女。


ただ、一つだけ問題があるとしたら、おれは彼女に対してあまり「彼氏」ということができていないことだった。


生まれてこのかた人と付き合うことをさけてきたため、こういう時にどうすればいいのかがわからないのである。


一緒に下校をする時にも、いつも主導権は彼女が持っていて、おれは彼女に身を任せるだけになっている。

そう、自主性というものがおれには全くないのだ。


告白をしたことも、一緒に帰ろうと誘うことも、全部彼女からだった。


おれからは何もできていないのである。

ただ彼女のいうことに頷いているだけのつまらない人間なのだと彼女には思われたくない。


「ねぇ志帆、今度……」


彼女との帰宅途中、遊びに行こうと誘おうとしたところ、なぜか急に彼女にタックルをかまされた。

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